双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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 もう二週間経つから、パトリシアちゃんの王子妃教育は終わっちゃったな。
 まあでも、休暇が明けたら学園で会えるから、今はフレデリックとの接点を濃くしとく方が良いか。
 初めて会って一週間。なかなか打ち解けることはできていないが少なくとも顔見知りにはなれた。とにかくどうにか継続して接触する機会を作りたい。そうすればフレデリック経由で休み中でもパトリシアちゃんに会える機会もあるかも知れないし。
「フレデリック殿、俺、伯爵家の養子なんで、家の経営…?運営?ってよくわからないんですけど」
 ソファに寝そべり本を読むフレデリックに声を掛ける。フレデリックは視線だけをロードに向けた。
 フレデリックはロードが嫌い。これは前提条件だから仕方ないもんな。
「ああ…」
「避暑に来てる時に仕事の話で申し訳ないんですけど、周りに貴族の家を継ぐ人がいないんで…王都に戻ってからも相談させていただけませんか?」
 なるべく頼りな気に、かわいく見えるように気を使いながら首を少し傾ける。我ながらあざとい。
「…俺もまだ爵位を継いでる訳じゃないからなあ。まあでも話を聞くくらいなら…」
「ありがとうございます!連絡します!」
 間髪入れずに言った。

「ロードはフレデリックと親しくなりたいのか?」
 夜、自分の部屋を訪れたロードを、ベッドに座って、上目遣いに見上げながらレスターは言う。
「そうですね」
「ふむ。…何となくこの辺りが騒めくのは何故だろうな?」
 レスターは自分の胸に手を当てる。
「嫉妬、ですかね?」
 ロードはそう言ってレスターの前に跪く。
「成程な」
 レスターはロードの顔に手を伸ばすと、顎に手を掛けて唇を重ねた。
「レスター…」
「お前が私を呼び捨てにする、この瞬間が好きだ」
 紫の瞳がロードを見る。
「そう言いながら、レスターはキス以上の事はさせてくれない…」
 ロードが少し唇を尖らせると、レスターは苦笑いしてまたその唇にチュッと短くキスをした。

-----

「ん?これ何だ?」
 学園の薬草畑の世話に来ていたアランは、見慣れない葉を見掛けて手を止めた。
 ここにはロードとライネルがそれぞれ選んで植えている薬草ものもある。どちらかが植えた物だろうが…
「初めて見る葉の形だな。それに三日前にはもっと小さかったような…随分と生育が早いな」
 作業用の手袋をした手で葉に触れる。
 学園の畑に植えるくらいだから、葉に触るくらいでどうにかなるような物ではないだろうが、どんな薬草かわからない内には素手では触れないからな。
「やっぱり見た事ないな。今日は画帳を持って来ていないから明日にでも描いて、調べてみるか」

 翌日。
 アランが学園の薬草畑に行くと、ロードが水やりをしていた。
「ロード」
「アラン殿下…当番は昨日じゃ…」
 ロードは眉を寄せて言った。
「兄上の避暑に招かれていたんだろう?」
「はい。二週間滞在させていただきました」
 とは言えロードが王都に戻ってもう二週間経つ。レスターもそろそろ休暇を終えて戻る頃だ。

 学園が夏季休暇に入ってから初めてロードと顔を合わせたアランは、アレンが言っていた事を思い出す。
 そういえば、今度ロードに会ったら、尊大に「先日はパティが世話になったな」と言えと言ってたな。随分時間が経った気がするが、まだ有効だよな?

「先日はパティが世話になったな」
 アランは顎を上げて言う。するとロードの顔が強張る。
 …やっぱり、あの時パトリシアちゃんを探しに来たのはアランだったのか。
 ロードは小さく息を飲み込んだ。

「パ…パトリシアちゃんは…元気ですか?」
「ああ」
「……」
「……」
 舞踏会の時の事を咎められると思いロードは押し黙る。
 アランは「尊大に。何か聞かれても煙に巻け」とアレンに言われたのを忘れないように心の中で呟く。

 暫く二人とも黙ったままで畑の中で立っていたが、アランはふと今日ここに来た目的の薬草の事を思い出した。
「あの薬草はロードが植えたのか?」
「え?」
 ズンズンと歩いて昨日見た薬草の側でしゃがみ込む。
「これだ。初めて見た」
「あ、ああ…いや、俺じゃないです」
「ではライネルか。書き写して調べてみても良いかな?」
 薬草に興味が移り、アランは楽し気に画帳を開く。
 ロードはほっと息を吐くと
「大丈夫でしょう」
 と言った。

 熱心に薬草をスケッチするアランを少し離れて眺めるロード。
 あの薬草は、俺が種をライネルに頼んで取り寄せてもらった物だって、バレなくて良かった。
 もう十分育ってるし、明日にでも刈り取っておこう。

 
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