双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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 レスターの執務机の前にアラン、アレン、パトリシアが並んで立つ。
「早い者で四十分程度、多くの者が一時間前後で目覚めて、寮へ戻りました。ライネルが手助けしてくれ、大きな混乱は起きておりません」
 アランがそう言うと、レスターは「うむ」と頷く。
「ロード・フェアリは、現在、王城の留置室へ抑留している」
「どんな様子ですか?」
 レスターが言うと、アレンは眉を顰めながら問う。
「最初は色々喚き散らしていたが、今は大人しくしているようだ。ロード・フェアリの最終目的はパトリシアだったのか?」
「…そのようです」
 アレンが嫌そうに答えると、レスターは顎に手を当てて考え込む。
「ロード・フェアリがパトリシアを連れ出したのを見ていた者は多いのか?」
「おそらくそう多くは…ただエリザベス嬢は見ていました」
 アランが言うと、パトリシアも「はい」と言う。
「倒れた時エリザベス様とお話していたので…」
「そうか…ではエリザベス嬢には改めて口止めしておこう。ロード・フェアリが講堂に催淫剤を拡散させた目的がパトリシアであった事は隠す事にする」

「…アレン」
 レスターが低い声でアレンを呼ぶ。
「はい」
 アレンが答えると、レスターは上目遣いにアレンを見た。
「…お前がアレンだよな?尻尾がないとわからん…」
 尻尾って…言い得て妙だけど。
 パトリシアは心の中で思う。
「今まではパトリシアと居る方がアランだと認識していたが、これからはパトリシアと居る方がアレンだと思えば良いのか?」
「…!」
 レスターがアレンを見据えて言い、パトリシアは息を飲む。
「はい。俺はエリザベスとの婚約解消を申し出ます」
 そうアレンはキッパリと言い切った。

-----

 アレンの私室へ連れられてきたパトリシアは、部屋に入ると、ジェイから恭しく礼をされた。
「ジェイ?」
「今日この時からパトリシア様をアレン殿下のご婚約者様として接します」
「ま、待って」
「ジェイ、俺はまだエリザベスとの婚約を解消していない。パティをそう扱ってくれるのは嬉しいが…」
「もちろん、私室ここでだけです。正式にお決まりになるまでは表向きは今まで通りで」
「ああ。それで良い」

 扉を開けたまま、ジェイが部屋の外に控える。以前と同じ様に姿は見えるが声は届かない位置だ。
 ソファに座ったパトリシアは少し俯いて呟く。
「でも…私がアレンと…なんて許されるのかしら…」
 パトリシアの向かいに座ったアレンは腕を組んで言う。
「時間はかかるだろうが…現に兄上は認めてくれただろう?」

 先程レスターの執務室で、アレンが「エリザベスとの婚約解消を申し出ます」と言った時、レスターはため息混じりに
「…第三王子は人身に関わる触法事件、第二王子は不貞行為で婚約破棄か…」
 と呟いた。
 そしてその後、
「まあアレンとパトリシアは『不貞ではなく初恋で純愛だ』と父上…国王陛下と議会にどこまで示せるか、だな」
 アレンに向けてそう言ったのだ。

「兄上は俺がずっとパティを想っていた事、気付いておられたからな」
「そうなの?」
 アレンは「ああ」と頷くとため息混じりに言う。
「…しかし、俺が婚約者がありながら弟の婚約者に手を出した不埒者と言われるのはかまわんが、パティが婚約者を裏切った多情な女の様に見られるのは心外だな」
「でもある意味本当の事だから仕方ないわ」
「それにアランの状況次第では、罪に問われた第三王子を捨てて第二王子に乗り換えたと言われるかも…」
「…私は何を言われても構わないわ。アレンと居られるなら…」
 ただ、私のせいでアレンの責任とか、王子としての自覚とか資質を問われるのは嫌だな…
「パティ…」
 アレンが眉を下げてパトリシアを見る。視線が合って、パトリシアと同じ気持ちでいるのが伝わった。
「…堂々と触れられないのはもどかしいな。婚約者ではない俺の部屋に長居させる事もできないし」
 アレンは「時間切れだな」と苦笑いをすると立ち上がった。
 パトリシアはこれから寮に戻るのだ。

「明日にはエリザベスと話をしようと思う」
 パトリシアを部屋の出口へと促しながらアレンは言う。
「…うん」
 俯いたパトリシアの腕を引いた。
「え?」
 アレンの方を見たパトリシアに顔を近付け軽く触れるだけのキスをする。
「…なっ」
 頬を少し赤くしてアレンを見るパトリシア。
 ああ、かわいいな。
「ジェイしか見ていない」
 口角を上げるアレン。パトリシアが部屋の外を見ると、ジェイがあからさまに視線を逸らしていた。
「もう!アレン!」
 胸元を拳で軽く叩くと、アレンは幸せそうに笑った。



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