双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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番外編2

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 王宮のアレンとパトリシアの部屋を訪れたエリザベスは、パトリシアと向かい合って座るソファでため息を吐いた。
「私もアランもう二十四歳、五年後に帰って来たとして二十九、少し伸びたら三十歳。ロードも五年後には二十八だもの、それは『待て』なんて言えないわよね」
 今でも貴族令嬢としては「き遅れ」のエリザベスだ。今はエリザベスの好きにさせてくれている父公爵も、流石に愛娘を三十歳まで独身で置いておく訳にはいかず、その間に必ず縁談は持ち上がるだろう。
「エリザベス様…」
 パトリシアは心配そうにエリザベスを見る。
「それにしても来週出発だなんて、急すぎて心の準備もお別れも碌にする時間がないわ」
 エリザベスは顔を上げて笑った。
「そうですよね。私たちも昨日聞いたばかりで…行ってしまったらなかなか直ぐに帰って来れる距離でもないし」
 パトリシアも困惑した表情だ。
「片道二か月ですものね」
「それに昨夜突然王宮に来て、皆が揃う夕食の席で突然『来週から五年間西国へ行く』って言い出したんです。もう陛下やレスター殿下も驚かれて…王妃殿下はお泣きになられるし、まったくアランったら」
 話している内に怒りが湧いて来たパトリシアにエリザベスはクスリと笑う。

「エリザベス、久しいな」
 二歳の男の子を片手に抱いてアレンが部屋に入って来た。
「アレン殿下。お久しぶりです。その子はジルベルト殿下?」
「ああ。ジルがパティと遊びたいと言うので連れて来た」
 ジルベルトはレスターとミッチェルの間に生まれた第一子の王子だ。
 アレンがジルベルトを降ろすと、ジルベルトはトコトコとパトリシアに近付いて両手を上げた。
「抱っこ?」
 パトリシアが笑いながらジルベルトを膝に乗せると、ジルベルトはじっとエリザベスを見る。
「ジルベルト殿下、はじめまして。アレン殿下とパトリシア様の友人のエリザベスと申します」
 エリザベスがにっこりと笑い掛けると、ジルベルトは照れた様に顔を背けてパトリシアの肩に顔を埋めた。
「人見知りする時期だからな」
 アレンがジルベルトの頭を撫でながらパトリシアの隣に座る。
「エリザベス様がお綺麗だから照れているのよ」
 クスクスと笑ってパトリシアが言うと
「すごくパトリシア様に懐いているのね」
 そう感心したようにエリザベスは言った。
「弟が生まれたばかりで、ミッチェル様たちがかかり切りだから淋しいんだと思うわ」
 五か月前のパトリシアとアレンの婚儀に大きなお腹で参列したミッチェルに第二子の王子が誕生したのは一か月ほど前の事だ。
 エリザベスはパトリシアに抱かれた王子の薄紫の髪の毛を見て呟いた。
「…アランが私の結婚相手候補から降りれば、パトリシア様に『男の子を産まなければ』と重圧がかかる事もなくなって…かえって良かったのかしら」
「エリザベス様…」

「いや、パティに重圧を掛けるつもりは毛頭ないが、エリザベスの結婚相手を降りたとしても、俺たち夫婦に男子が生まれなければアランが結婚できない事に変わりはない。例え、西国で誰かと出会ったとしても」
 アレンはエリザベスをじっと見ながら言う。
「アレン」
 パトリシアがアレンに何か言おうとするが、アレンは顔の前に人差し指を立ててそれを制する。
「西国で…」
 誰かと出会う。
 そうか、五年もあればそんな事もあるわよね。

「エリザベス」
 アレンはエリザベスを見ながら言う。
「はい」
「何に遠慮をしている?」
「はい?」
 目を瞬かせるエリザベス。
「ロードにか?それともアランに?」
「…はい?」
「どちらにせよ、ぞ」
 アレンは口角を上げてニヤリと笑う。

 らしくない?
 エリザベス・ボイルらしくないとアレン殿下は仰っているの?
 ……私らしく、ない?

 ああ、そうね。

「…うん」
 エリザベスは深く頷くと、パッと顔を上げた。
「確かに。私らしくありませんでしたわ」
 
 ソファから立ち上がったエリザベスは肩に掛かった赤い髪を手の甲で後ろに払うと、満面の笑顔を作る。
「失礼いたしますわ。アレン殿下、パトリシア様」
「はい!エリザベス様」
 笑顔で見送るパトリシアとアレン。エリザベスはスカートを摘むと部屋を出て行った。

「アレン…男の子が生まれなかったらどうしよう?」
 パトリシアが不安気にアレンを見る。
「そもそも裁判で課された刑以外は王家との取り決めに過ぎないし、男子が生まれなければと言うのも、アランに王位の簒奪などを考えさせないための策で強制力がある訳じゃないんだ。それに西国で既成事実を作れば、認めざるを得ないさ」
 アレンはパトリシアを抱き寄せ、こめかみにキスを落とす。
 パトリシアの腕の中で小さな王子が小さな寝息を立てていた。



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