双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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番外編3

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3

「リジー?こんな所へ来るなんてどうしたんだ?」
 薬学研究所の所員宿舎の入口に立つエリザベスの元へアランが小走りで駆け寄る。
「アラン、私…」
 エリザベスはアランを見ながら言う。
「リジー?」
「私、新作考えたの」
「新作?ああ、小説の?」
「ええ。ね、アランの部屋へ行っても良いかしら?」
「え?いや…」
 一応ここ男性宿舎だし、そりゃあ特に女人禁制とかではないけど、公爵家の令嬢を独身男性の部屋に入れるのは…
「いけないかしら?」
 首を傾げるエリザベス。
 くっ。かわいい…
 しかしリジーは何を考えてるんだ?
「…今、荷造りしてるから、散らかってるぞ?」

 アランの部屋に入ると、エリザベスは部屋をぐるりと見回した。
「意外と広いわね」
「そうかな?座れる場所がベッドしかないが…」
「構わないわ」
 ポスンとベッドに座るエリザベス。アランはエリザベスから離れた位置の荷造りした箱の上に腰掛けた。
「新作と言うか、続編なんだけど」
「続編?」
「そう。双子の姉のお話は完結したから、他の人を主人公にしてみようと思って」
「誰を主人公に据えるんだ?」
「アランよ」
「俺?」
「つまり、双子の妹」
「双子の妹は…誰と…恋をするんだ?」
 アランが言うと、エリザベスは微笑んだ。

「双子の妹はね、遠い国へ留学するのよ。王女だから語学や外交などを学んで見聞を広げるために」
「ああ」
「その遠い国で、その国の王子や貴族などと知り合うの。他国の王女なのを隠して街中で宝石商と知り合っても面白いかしらね?」
「……」
 楽しそうに話すエリザベスを見つめ、アランは自分の気持ちが沈んで行くのを感じていた。
 …俺が西国で新しい女性と出会って、恋に落ちる様子をリジーが書く、と言うのか。
「ねえ、アランは主人公がどんな人と結ばれると良いと思う?」
 ニコニコと笑うエリザベスからアランは眼を逸らす。
「さあ…」
 わざわざ宿舎まで来てこの話をすると言う事は、リジーは俺に「西国の様子を知らせて欲しい」と頼むつもりなんだろうか?
 それとも「西国でどんな女性ひとと知り合ったか」か?「どんな女性ひとを好きになったか」知らせろと言うつもりなのか?
 深い海に沈むような感覚。
 確かに俺の方からリジーの結婚相手を降りるとは言ったが…流石にそれは酷だろう。
「何て。本当はね、主人公が結ばれる相手はもう決まってるのよ」
「……え?」
 その言葉に、床に落としていた視線をエリザベスに戻す。

 エリザベスはとても、とても美しい笑顔でアランを見ていた。
「…リジー?」
「主人公はね、双子の姉の元婚約者の公爵令息と、結ばれるの」
 双子の姉の元婚約者、とは…
「それは…」
 それはリジーの事だ。
「そうよ。アランと結ばれるのは、私よ」
 エリザベスは微笑んで、アランの方へと手を差し出す。
「…え?それはどういう…」
 困惑しながらも、アランは立ち上がってエリザベスの前に立った。
「どういうって。私がアランを好きって事よ?」
 首を傾げて言うエリザベス。
「!」
 アランはエリザベスの差し出した手をぎゅっと握ると、ぐいっと引いて、エリザベスを抱きしめた。
「…本当に?」
 ぎゅうっとエリザベスを抱きしめながらアランが言うと、エリザベスはクスッと笑ってアランの背中に手を回す。
「本当よ。私、アランが好きなの。だから西国に着いて行くわ」
「え!?」
 アランは腕を緩めてエリザベスの顔を覗き込んだ。
「アラン?」
「西国へ?着いて?」
「…駄目?」
 少し不安そうな眼差し。
 かわいい。でも本当に?
 リジーが俺を好きで、西国へ着いて来てくれるなんて俄かに信じられない。
「駄目じゃない。けど…」
 エリザベスはじっとアランを見上げると、背中に回した手を解き、アランの着ているシャツの襟元を両手で掴む。
 襟元を下へと引くと、背伸びをして、アランの唇へ自分のそれを押し当てた。
「…!」
「アランが嫌だと言っても、私は行きますわ!」
 若草色の眼差しが真っ直ぐにアランを射抜く。
「リジー」
 アランは両手でエリザベスの両頬を包むと、唇を重ねた。


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