双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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番外編8

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8

「ベアトリスにベールを持って来てくれた孤児院の女の子、あの子ってライネルの事好きだよね?」
 馬車の中で、思い出した様にロードが言うと、隣に座っているベアトリスは大きく頷いた。

 孤児院に泊まった翌日、誓いの言葉だけの結婚式を挙げるロードとベアトリスの元に、白いレースのベールを持った女の子がやって来た。
「ライネル先生がこれ持って行ってって…」
「貸してくれるの?」
 ベアトリスは屈んで女の子と視線を合わせる。
ベールこれしかないけど」
「嬉しいわ。ありがとう」
 ベアトリスが微笑みかけると、女の子はおずおずと言う。
「…ライネル先生が昔好きだった人って…お姉さん?」
「え?」
「昔好きだった人が結婚するんだって…先生が…」
 ちらちらとベアトリスを見る。

 うん。それは俺の事だね。
 ロードは心の中で言う。ベアトリスもそう言いたげな視線をロードに向けていた。
「でも先生の昔好きだった人、死んじゃったんだってシスターたちが話してたのにな…」
 ああ…それはビビアンの事だな…
「ライネル先生が昔好きだった人は私じゃないわ」
「そうなんだ」
 女の子はホッとした様に笑った。

「あの子、十一…二歳くらいだったかな?」
「そうですね。ライネルくんの相手としてはちょっと歳が離れてるかしら…」
「そうだなあ。あの教会の若いシスターもライネルの事気にしてそうだったし、この辺りの教会を統括する司祭もライネルの事特別視してたような…」
「でも司祭の人は男の人だし…ライネルくんがその人を好きで、幸せならそれでも良いんですけど」
 ライネルは攻略対象者だけあって見目も良いし、頭も良いし、性格も良いし、スペック高いんだよな。
 ライネルにも幸せになって欲しい。
 なんて、俺が願うのはライネルにとっては「お前が言うな」なのかも知れないけど。

 それでも、ライネルが良い人たちに囲まれて、慕われている様子が直接見られて良かった。
 誓いの言葉と、ベールアップとキスだけ、参列者も孤児院の子供たちとシスターや司祭だけの簡素な式だったけど、幸せそうな表情のベアトリス、感動して涙ぐむベアトリス、キスで照れるベアトリスを見られただけでもやって良かったな。
 
-----

「王都だわ…懐かしい…」
 ベアトリスが馬車の窓に張り付いて外の景色にため息を漏らす。
「王城の近くに家を借りたんだけど、そこへ行く前にフェアリ伯爵家に寄るね」
「え?」
「一応義理でも息子だから『結婚する』って知らせたら『相手に会わせろ』って言うから…あ、心配しなくて良いよ。フェアリ家の義父も義母もすごく良い人だから」
「…わ、私みたいなのが結婚相手で大丈夫なんですか?」
「何でそんな悲壮な顔するの?」
「だって…婚約者が居るのに他の男性と浮気して、婚約破棄されて、家族に修道院へ厄介払いされるような」
「ベアトリス」
「…そんな、女ですよ?私」
 泣きそうな顔のベアトリス。
 うん。これはこれでかわいいんだけどさ。
 でも、わかるよ。不安なんだよね?
 ロードは手を伸ばしてベアトリスを抱き寄せた。
「大丈夫。婚約者が居るのに浮気したのは相手が俺だったから。修道院から出て結婚するのも相手が俺だったから。でしよ?」
「……うん」
 俺の服をぎゅうっと握るベアトリス。ホントかわいいな。

「そうだ。フェアリ家には俺の弟がいるよ。俺もたまにしか会わないけどかわいいんだよ」
「弟さん?」
「俺が禁固になってる間に生まれたんだ。今七歳かな?八歳になったのかな?」
 そう話しながらベアトリスの頭を子供にするように撫でた。

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「あにうえ~」
 馬車から降りると、小さな男の子がロードに駆け寄って足にしがみついた。
「ルース。大きくなったなあ。それに前会った時は『にいさま』だったのに『兄上』と来たか!」
 ロードは嬉しそうに義弟ルースの頭を撫でる。
「あにうえのお嫁さん?」
 ロードの義理の弟であるルースがロードの足にしがみついたままベアトリスを見上げる。
「ベアトリスだよ」
「ルースくん、はじめまして」
 にこっと笑い掛けるベアトリス。
「はじめまして!」
 勢い良く言うルースを微笑ましく眺めた。

「ベアトリスさん、そんなに固くならないで」
 ロードの義母がニコニコとしながら言う。
「は、はい」
 向かい合うベアトリスもぎこちない笑顔を浮かべる。
「緊張するなと言っても難しいだろうが…私たちはベアトリスさんに感謝しているんですよ」
 義父も微笑みながら言う。
「感謝…?」
「ええ。ロードには前科があり爵位は継げない。貴族の特権などない医師という世界で生きているのに、貴族的なしがらみだけはあるような男と、こんなに綺麗で可愛らしい女性が結婚してくれるだなんて、本当に感謝しかない」
 そう言い切る義父の隣で、義母もうんうんと頷いている。
「お義父様…お義母様…」
 ああ、良かった。義父上と義母上に本気で歓迎されて、ベアトリスも安心したみたいだ。

「ところで、ルースは何で俺たちの間に座ってるんだ?」
 ロードとベアトリスの間に座ったルースは、ベアトリスの方を向いて言った。
「ぼくもベアトリスお姉さまをお嫁さんにしたい!」
 …どうやら俺と弟は血が繋がってないのに女性の好みは似ているらしい。


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