シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。

ねーさん

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舞踏会当日。

ドレスや装飾品は各々が用意をするが、全員が寮で支度をして、婚約者や恋人のいる者は男性が女子寮へ迎えに来る事となっており、令嬢は自分の家の侍女やメイドを寮に呼び支度をし、侍女やメイドのいない家で学園が用意した王宮のメイドが支度を手伝っている。
舞踏会は昼間なので、寮は今日は朝から支度で大騒ぎだ。
女子寮は舞踏会の会場の講堂に近いので、迎えが来た者は歩いて向かう事になっていた。

「リネット、待たせたか?」
セドリックが寮の部屋へ顔を覗かせる。準備を終えたリリアと共に待っていたリネットはやって来たセドリックの正装にしばし見惚れてしまった。

セドリックは背が高く精悍で、貴族の正装がよく似合う。いつもは下ろしている前髪を後ろに流しており、一束額に落ちた前髪が何だか色っぽく感じる。

セドリック…カッコ良くて何かズルいわ。

「リネット?」
セドリックに顔を覗き込まれて、リネットは慌てて目を逸らす。
「その髪を結んでるリボンって…」
私があげたリボンよね。と言いかけて、恥ずかしくなって言い淀む。
「ああ」
セドリックの後ろで一つに纏めた髪にオレンジのリボンが結んであった。
リネットが10歳くらいの頃だろうか、セドリックとリリアがバーストン家を訪れていた時に、髪を結んだ紐が切れて困っていたセドリックにリネットが髪に着けていたリボンをあげたのだ。

このリボン、オレンジに少し茶色がかっていて、自分の瞳の色に似てる気がしてお気に入りだったのよね…。

ぼんやり考えて、それをセドリックが捨てずに持っていて、更に使ってくれている事実に更に恥ずかしくなる。

「リリア、紫のドレスがよく似合ってるぞ!」
セドリックがリネットの隣に座っていたリリアに満面の笑みで言う。

…だから婚約者のドレス姿を褒める前に何で妹を褒めるの?
私のドレス、色も形もシンプルで地味だったかなあ。

リネットはブルーのAラインのドレスを纏っていた。同布のリボンをウエストで結ぶシンプルなデザインで、黒いストレートヘアをハーフアップにして背中に流しており、背が高めのリネットはとても大人っぽく美しく仕上がっていた。

リリアは薄紫の生地に白いフリルがついたプリンセスラインのドレスで、スカートのレースが薄紫から下へ向かって白にグラデーションしたかわいらしいデザインだ。

リネットが自分のドレスを見下ろした時、コンコンとノックの音がした。
「はい」
部屋の主のリネットが返事をすると
「…リリア嬢はこっちにいる?」
遠慮がちなセルダの声が聞こえた。
「セルダ殿下!」
リリアがぱっと顔を輝かせ、小走りにドアへ向かった。
「殿下、どうぞ入ってください」
「リネット嬢の部屋なのに…良いの?」
リネットが言うとセルダはおずおずと部屋へ足を踏み入れる。婚約者でもない女性の部屋へ入るのを遠慮しているようだ。

そういえば、セルダ殿下はリリアの部屋へ来た事はないような…まあでもセドリックは私の幼なじみだし、リリアのお兄さんだし、比べるのもおかしいわね。

大体女子寮はそんなに簡単に男性が立ち入れる場所ではないのだ。
「リリア嬢、かわいらしいドレスだね。私の髪と瞳の色なのかな?」
セルダがリリアに微笑みかけると、リリアは赤くなりながら頷いた。「よく似合ってる」とセルダが言えば「殿下もお似合いですわ」とリリアも微笑む。
セルダは白の騎士服のような王族の正装で、帯剣こそしていないがとても凛々しい。
「リネット嬢もとても美しいね」
セルダがリネットに微笑む。
「ありがとうございます」
リネットもセルダに礼を取った。

私も一応、セドリックの瞳の色のドレスなんだけどな…。

リネットがちらりとセドリックの方を伺うと、苦虫を噛み潰したような表情でセルダを睨んでいるセドリックが目に入る。

気づいてないわね。これは。

リネットは扇で顔を隠してこっそりため息を吐いた。

-----

舞踏会ではリネットはセドリックと踊ったが、セドリックは終始セルダと踊るリリアへ意識を向けていた。
やがてセルダが生徒会長としての仕事のため舞台裏へ行くと、セドリックも学園の理事や教師に挨拶に行ってしまう。
リリアとリネットは並んで壁際の椅子で休憩することにした。

「何だか騒がしいわね」
講堂にある舞台の前に人だかりができていて、ざわざわ囁く声がして来た。
リリアの声にリネットが人だかりの方へ顔を向けると、男性の大声が聞こえて来た。

「私、パリヤ・ルーセントはアリシア・ウィルフィスとの婚約を破棄する!」

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