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「ヴィクトリア、貴女も、狙われている事を自覚なさい。いざという時逃げられる確率を上げるため、馬車では扉の近くに乗りなさいな」
お母様の言葉を聞いて、私はお母様が王妃派がウォルター殿下の婚約者、つまり私を亡き者にしようとする計画にアイリスを巻き込むつもりなのだと気が付いた。
「お母様、まさか…」
私たちが馬車で出掛ける日時を暗殺者に教えるつもりでいるの?
そんなにアイリスが憎いの?
私は?
お母様は「逃げられる確率を上げるため」っていったわ。それはつまり逃げられずに私も死ぬ可能性があるという事だわ。
お母様はそれでも平気なの?
「まさか?私たちのこの会話を誰かが聞いていて、王妃派の貴族に密告するとでも言いたいのかしら?」
薄っすら笑みを浮かべて言うマティルダ。ヴィクトリアの背に悪寒が走る。
「お母様…」
…憎い女の娘を退けるためなら、実の娘がどうなっても構わないと、そう思ってるんだわ。
「アイリスが居なくなれば貴女にとっても好都合でしょう?ヴィクトリア」
悪びれもせずに薄ら笑いを浮かべたままでマティルダが言った。
「…何を」
「アイリスが居なければ、この家はヴィクトリアが継ぐしかないもの…ね?」
「!」
にっこりと笑いながら意味あり気な口調で言う。
それは、もしもアイリスが死んでしまったら、私とウォルター殿下との婚約は解消して、私にガードナー家を継がせると?
もしかして…
私と、ジェイドを…?
「アイリスには内緒よ」
マティルダは人差し指を唇の前で立てた。
そう言って廊下を歩いて行くマティルダ。
その場に立ち竦んだヴィクトリアの心臓が、ドクン。ドクン。と鳴る。
もしもそうなったからと言って、お母様がそう簡単に私の夫にジェイドを据えるとは思えない。
それでも…ジェイドがアイリスと結婚する事は絶対になくなる……
-----
「それで、その日王宮に行くのをやめる事も、妹たちを別の馬車で行くよう促す事もできないままなのね?」
王城の応接室のソファで隣に座っているヴィクトリアの親友のドリアーヌが呆れたように言った。
「……うん」
頷くヴィクトリアをドリアーヌの向かい側に座る第二王子ステファンも呆れて見ている。
「それよりも、狙われているんだろう?ヴィクトリアは。それには対処しないのか?」
ステファンが言うと、ヴィクトリアはこくんと頷いた。
ドリアーヌはステファンの婚約者候補だ。
しかしどちらも他に想う人がいる二人は、婚約するつもりはないが、すぐに婚約しないと言ってしまえば互いに次の相手をあてがわれてしまう。そのため「婚約もやぶさかではないが、そのためにはもっと相手を知りたい」と理由をつけて候補のままでいる。
二人きりにならないよう、ドリアーヌとステファンの面会交流に付き添う機会の多いヴィクトリアは、ドリアーヌやステファンの事情も知っているし、ヴィクトリアの事情も二人は知っているのだ。
「今回上手く回避したとしてもまた狙われるんでしょうから…」
「ウォルターに言って王妃派を抑えさせれば良いじゃないか」
それは、その通りだ。
でもいくら王妃様の御子であるウォルター殿下でも何も起こっていない段階で王妃派を抑えるのは難しいだろう。そうヴィクトリアは考えていた。
「…私、賭けてみたいのです」
「「賭け?」」
ドリアーヌとステファンが同時に言う。
「どんな賭け?」
ドリアーヌが聞くと、ヴィクトリアは居心地が悪そうに肩を竦めて、小声で言った。
「……ジェイドが…私の事を庇って…くれる事」
「「はあ?」」
またドリアーヌとステファンの声が重なる。
「愚かなのは承知の上です。ただ…私、一度でもジェイドに……アイリスより優先して欲しくて…」
「ヴィクトリア…」
俯いて小声で言うヴィクトリアに、ドリアーヌは同情の眼差しを送った。
「もしも、ジェイドが私を庇ってくれたら…私…ウォルター殿下に婚約の解消を申し出ようと思っていて」
小声でボソボソとヴィクトリアは言う。
「婚約解消?」
「うん…もちろんそれだけでジェイドと結ばれるなんて思ってないわ。だけど…こんな私じゃウォルター殿下にも申し訳ないし…」
「……」
ステファンはヴィクトリアを一瞥するとソファから立ち上がる。
「執務に戻る」
本気で殺しに来る暗殺者相手に考えが甘いと思うが、賭けに負ける事がウォルターとの結婚を後押しするならそれはそれで良いし、賭けに勝って婚約解消を申し出るきっかけになるならそれはそれで好きにすれば良い。まあウォルターには不本意だろうがな。
ステファンは大股で応接室の扉の方へ歩いて行き、廊下に出ながらドリアーヌとヴィクトリアには聞こえないように呟いた。
「確かに愚かだな」
「ヴィクトリア、貴女も、狙われている事を自覚なさい。いざという時逃げられる確率を上げるため、馬車では扉の近くに乗りなさいな」
お母様の言葉を聞いて、私はお母様が王妃派がウォルター殿下の婚約者、つまり私を亡き者にしようとする計画にアイリスを巻き込むつもりなのだと気が付いた。
「お母様、まさか…」
私たちが馬車で出掛ける日時を暗殺者に教えるつもりでいるの?
そんなにアイリスが憎いの?
私は?
お母様は「逃げられる確率を上げるため」っていったわ。それはつまり逃げられずに私も死ぬ可能性があるという事だわ。
お母様はそれでも平気なの?
「まさか?私たちのこの会話を誰かが聞いていて、王妃派の貴族に密告するとでも言いたいのかしら?」
薄っすら笑みを浮かべて言うマティルダ。ヴィクトリアの背に悪寒が走る。
「お母様…」
…憎い女の娘を退けるためなら、実の娘がどうなっても構わないと、そう思ってるんだわ。
「アイリスが居なくなれば貴女にとっても好都合でしょう?ヴィクトリア」
悪びれもせずに薄ら笑いを浮かべたままでマティルダが言った。
「…何を」
「アイリスが居なければ、この家はヴィクトリアが継ぐしかないもの…ね?」
「!」
にっこりと笑いながら意味あり気な口調で言う。
それは、もしもアイリスが死んでしまったら、私とウォルター殿下との婚約は解消して、私にガードナー家を継がせると?
もしかして…
私と、ジェイドを…?
「アイリスには内緒よ」
マティルダは人差し指を唇の前で立てた。
そう言って廊下を歩いて行くマティルダ。
その場に立ち竦んだヴィクトリアの心臓が、ドクン。ドクン。と鳴る。
もしもそうなったからと言って、お母様がそう簡単に私の夫にジェイドを据えるとは思えない。
それでも…ジェイドがアイリスと結婚する事は絶対になくなる……
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「それで、その日王宮に行くのをやめる事も、妹たちを別の馬車で行くよう促す事もできないままなのね?」
王城の応接室のソファで隣に座っているヴィクトリアの親友のドリアーヌが呆れたように言った。
「……うん」
頷くヴィクトリアをドリアーヌの向かい側に座る第二王子ステファンも呆れて見ている。
「それよりも、狙われているんだろう?ヴィクトリアは。それには対処しないのか?」
ステファンが言うと、ヴィクトリアはこくんと頷いた。
ドリアーヌはステファンの婚約者候補だ。
しかしどちらも他に想う人がいる二人は、婚約するつもりはないが、すぐに婚約しないと言ってしまえば互いに次の相手をあてがわれてしまう。そのため「婚約もやぶさかではないが、そのためにはもっと相手を知りたい」と理由をつけて候補のままでいる。
二人きりにならないよう、ドリアーヌとステファンの面会交流に付き添う機会の多いヴィクトリアは、ドリアーヌやステファンの事情も知っているし、ヴィクトリアの事情も二人は知っているのだ。
「今回上手く回避したとしてもまた狙われるんでしょうから…」
「ウォルターに言って王妃派を抑えさせれば良いじゃないか」
それは、その通りだ。
でもいくら王妃様の御子であるウォルター殿下でも何も起こっていない段階で王妃派を抑えるのは難しいだろう。そうヴィクトリアは考えていた。
「…私、賭けてみたいのです」
「「賭け?」」
ドリアーヌとステファンが同時に言う。
「どんな賭け?」
ドリアーヌが聞くと、ヴィクトリアは居心地が悪そうに肩を竦めて、小声で言った。
「……ジェイドが…私の事を庇って…くれる事」
「「はあ?」」
またドリアーヌとステファンの声が重なる。
「愚かなのは承知の上です。ただ…私、一度でもジェイドに……アイリスより優先して欲しくて…」
「ヴィクトリア…」
俯いて小声で言うヴィクトリアに、ドリアーヌは同情の眼差しを送った。
「もしも、ジェイドが私を庇ってくれたら…私…ウォルター殿下に婚約の解消を申し出ようと思っていて」
小声でボソボソとヴィクトリアは言う。
「婚約解消?」
「うん…もちろんそれだけでジェイドと結ばれるなんて思ってないわ。だけど…こんな私じゃウォルター殿下にも申し訳ないし…」
「……」
ステファンはヴィクトリアを一瞥するとソファから立ち上がる。
「執務に戻る」
本気で殺しに来る暗殺者相手に考えが甘いと思うが、賭けに負ける事がウォルターとの結婚を後押しするならそれはそれで良いし、賭けに勝って婚約解消を申し出るきっかけになるならそれはそれで好きにすれば良い。まあウォルターには不本意だろうがな。
ステファンは大股で応接室の扉の方へ歩いて行き、廊下に出ながらドリアーヌとヴィクトリアには聞こえないように呟いた。
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