Red And Frower

斗弧呂天

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ロンドン新聞社
『またもや惨殺死体!ロンドン市警大苦戦』
『先日7日の午前9時頃、市内のアパートにて女性の惨殺死体が発見された。女性の身元はベティーナ・マレット(28)。その凄惨で特徴的な手口から警察は、例の連続殺人犯が犯人と断定。死体は例のごとく身体の一部分のみ残され、激しく損傷していた。〈芸術家〉のようなこだわりを持つこの殺人鬼に、警察は手を煩わしている。また、当社の見解では―』
「クソッタレが。」
「まったくです。」
犯人はわかっている。
レックス・モーリー。奴だ。
アーネストは、いまいましげに新聞を指で弾いた。
ここ一週間はアーネストにとっては何ヶ月にも感じられた。
犯人の特定はおろか、被害者の共通点なども全くわからない状態だった。
ただ、進展が無いわけでもなかった。

端折って言うと、ベティーナのお得意先の中で、ふたつの現場の近くに住んでいる人物を見つけたのだ。
しかし犯人がその中にいるとは到底断定出来ない。
アーネストとクレイグは現場の半径5キロに住んでいるその人物らを尋ねることにしたのだった。

ーー1人目は、建築関係に勤めているという中年男だった。
マイルズと名乗ったその男は、自宅の前に刑事が立っていることにひどく動揺していた。
アパートの1室に住んでいる彼は、事情を聴くと目をあらゆる方向に向け、どもりながらも言った。
「た、確かにベティとはそのサイトで知り合ったけど、一緒に食事に誘ったり、ショッピングしたりしてただけで、そうゆう関係は無かったし…。ましてや殺すなんて…」
アーネストはマイルズの突き出た腹や無精髭を見ながら、早くもこの男に興味を失っていた。
美という名の狂気を秘めた犯人とこの男の像がどうやっても一致しなかったのだ。


二人目の男は、なんと大手企業のトップであった。
ダリルと名乗った彼は、歳は30代半ばほどの若い男だった。
ベティーナのことを聴くと、ダリルは少しだけ眉をひそめた。
「確かに彼女とは会っていましたが…まあ、気の迷いというやつです。この役職も楽ではないので、たまの休息も良いでしょう?」
「確かに。そうかもしれませんね。」
クレイグがいつものようにメモをとりながら答えた。
この男も違うと、アーネストは感じた。
マイルズ程ではないが、このダリルという男もどこか犯人の面影が感じられなかった。
2人は軽く挨拶をしてオフィスを出た。
ダリルは、また新商品の資料に目を通し始めた。

    賛美歌のメロディを口ずさみながら。


3人目はロバートという高校教師だった。
「ベティーナ?ああ、確かに会っていたよ。しかし肉体関係は持っていない。ただ一緒に話をしたりしただけだ。」
彼の職業ではそういう他ないのであろう。
男の首筋から汗が滴っているのが分かった。
独身男性らしい散らかった部屋。
教師というのが嘘のようだった。
しきりに両手を弄びながら、ロバートは声を一層小さくした。
「ところで、その事はここだけの話って事にしてくれないか?もし職場に漏れたら…な?」
心底呆れ果てながらアーネストは、やはりこの男でも無いと確信した。

そうして2人の捜査は万策尽きたのであった。





ここ数ヶ月間、更新が途絶えていまい、本当に申し訳ありませんでした。私生活が忙しく、なかなか執筆が出来ないまま今回に至ってしまいました。これからは、不定期になりますがなんとか更新できそうなので、お付き合い頂けると嬉しいです。
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