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本性
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一連の事件でアーネストの神経はかなりすり減っていた。どれ程聞き込みをしても、考えても、掌から砂が零れていくように犯人は指と指の間をすり抜けていってしまう。
何か重大な事を見抜けないまま、2人の捜査は完全に行き詰まった。
そして、それを嘲るようにいつもついてくる男。
「アーネスト警部。お早いお帰りで。」
「…今日もお前達の喜ぶような事は何も無いぞ。」
会ったとしても教える筋合いはないがな。
と心の中で付け加えた。
「嫌だなあ、私はこの前の答えが欲しいんですよ。私達にお恵みを下さいという。」
「何度言ったら覚える?教える事など何も無い。」
「かなり行き詰まっているようですね?」
アーネストがレックスを睨むと、まあまあと片手を振って続けた。
「私はただ、協力し合いましょうと言ってるだけですよ?あなたは新しい事が分かったら、私達に情報を流す。私達はあなたに情報を渡す。それだけ。win winの関係です。」
「あんな記事を書いてどの口が言う?」
「確かにあれは嗅ぎ回しすぎましたね。申し訳ないとは思ってます。その代わりと言ってはなんですが、こちらも情報は入手しているんです。」
「情報だと?」
「ええ、そもそも我々新聞社は、民間の人々に情報を与え、人々からの情報を発信する言わば民衆の『声』です。ですので、こちらが情報を求めれば多くの声が寄せられるわけです。」
「…ふん、そんなのに騙されるほど馬鹿じゃない。もういいだろう。失せろ。」
アーネストが車のドアを開けかけた途端、レックスはドアに手を叩きつけるように勢いよくそれを閉めた。
「まあ、聴いてくださいよ。例えば…犯人が複数か単独か…事件に使った2つの花はどこで買ったのか。とか。」
アーネストは把手に手をかけたまま、黙って レックスを見詰めた。
レックスはいつもの通り薄笑いを浮かべていたが、その目は一つも笑っていなかった。
「…俺にお前の言葉を信じろと?」
「アーネスト・バッカス警部。あなたは実に興味深い人だな。でも…この世じゃ苦労しますよ?もう少し自分の立場をわきまえた方がいい。」
「自分の立場を?」
アーネストは把手に掛けていた手を離し、レックスの胸ぐらを掴んで低い声で言った。
「お前こそ立場というものをわきまえたらどうだ?一警部にその口の利き方とは、随分なめられたものだな。躾直してやろうか?」
「っはは…それは勘弁して欲しいな。」
「もう俺を嗅ぎ回すな。」
アーネストが車で走り去るとレックスは、ポケットの携帯電話を取り出し、例の番号に掛けた。
「私です。…ええ、やはり駄目でした。…いえ、支障は無いかと。次の場所に向かいます。はい…失礼します。」
電話を切ると、既に走り去った車の方向を見て、呟いた。
「愚かな男だ。」
何か重大な事を見抜けないまま、2人の捜査は完全に行き詰まった。
そして、それを嘲るようにいつもついてくる男。
「アーネスト警部。お早いお帰りで。」
「…今日もお前達の喜ぶような事は何も無いぞ。」
会ったとしても教える筋合いはないがな。
と心の中で付け加えた。
「嫌だなあ、私はこの前の答えが欲しいんですよ。私達にお恵みを下さいという。」
「何度言ったら覚える?教える事など何も無い。」
「かなり行き詰まっているようですね?」
アーネストがレックスを睨むと、まあまあと片手を振って続けた。
「私はただ、協力し合いましょうと言ってるだけですよ?あなたは新しい事が分かったら、私達に情報を流す。私達はあなたに情報を渡す。それだけ。win winの関係です。」
「あんな記事を書いてどの口が言う?」
「確かにあれは嗅ぎ回しすぎましたね。申し訳ないとは思ってます。その代わりと言ってはなんですが、こちらも情報は入手しているんです。」
「情報だと?」
「ええ、そもそも我々新聞社は、民間の人々に情報を与え、人々からの情報を発信する言わば民衆の『声』です。ですので、こちらが情報を求めれば多くの声が寄せられるわけです。」
「…ふん、そんなのに騙されるほど馬鹿じゃない。もういいだろう。失せろ。」
アーネストが車のドアを開けかけた途端、レックスはドアに手を叩きつけるように勢いよくそれを閉めた。
「まあ、聴いてくださいよ。例えば…犯人が複数か単独か…事件に使った2つの花はどこで買ったのか。とか。」
アーネストは把手に手をかけたまま、黙って レックスを見詰めた。
レックスはいつもの通り薄笑いを浮かべていたが、その目は一つも笑っていなかった。
「…俺にお前の言葉を信じろと?」
「アーネスト・バッカス警部。あなたは実に興味深い人だな。でも…この世じゃ苦労しますよ?もう少し自分の立場をわきまえた方がいい。」
「自分の立場を?」
アーネストは把手に掛けていた手を離し、レックスの胸ぐらを掴んで低い声で言った。
「お前こそ立場というものをわきまえたらどうだ?一警部にその口の利き方とは、随分なめられたものだな。躾直してやろうか?」
「っはは…それは勘弁して欲しいな。」
「もう俺を嗅ぎ回すな。」
アーネストが車で走り去るとレックスは、ポケットの携帯電話を取り出し、例の番号に掛けた。
「私です。…ええ、やはり駄目でした。…いえ、支障は無いかと。次の場所に向かいます。はい…失礼します。」
電話を切ると、既に走り去った車の方向を見て、呟いた。
「愚かな男だ。」
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