ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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「もうっ」

 奈津は自身の背中を押して、何とか成瀬の体を離そうと揺さぶった。何度目かの揺さぶりにようやく成瀬の体が離れてごろりと仰向けになり、その弾みでずるりと中のものが引き抜かれた。

「んっ」

 異物が抜け出た感覚に、瞬間、眉間に皺が寄る。ほっと安堵のため息をつくと、奈津は自分の下着ごとパジャマを引き上げ、体を起こして隣を見た。

 気持ち良さそうに、眠っている。
 成瀬のスウェットは下着ごと太もものあたりまでずり下がり、局部が丸見えになっていた。

(何て格好してんだ……)

 事後のあからさまなその姿に羞恥を覚えながら、何とか下着とスウェットを戻そうとするが、成瀬の体が重くて上手くいかない。結局、局部を隠したところで諦め、スウェットの上衣を引っぱり下げてごまかした。お尻が半分出ているが、仕方がない。

 ふと、成瀬の右手が濡れていることに気付き、体をよじって枕元のティッシュをざくざくと取った。

「あっ……」

 体をひねったせいで、体内にあった成瀬の放った精が、とろりと零れてきた。

「………」

 奈津は、隣の成瀬をじっと見た。

(……寝てる、よな)

 ごそごそとベッドの上に膝立ちになって、下着とパジャマを下ろす。重力に従って更にとろとろと零れてきたものを、手にしたティッシュで拭い取った。

 もう一度、隣を見下ろす。……寝てる。
 こんな姿を見られたら、恥ずかしすぎて、死ぬ。

 思い切って蕾を指で押し広げると、またとろとろと流れ出した。

 褒められたことではないが、成瀬はあまりコンドームをつけない。行為のあと、自分の放ったものが奈津の中から流れ出るところを見るのが好きという、やっかいな癖を持っていた。

 奈津はそれが恥ずかしくて身をよじって隠そうとするのだが、それが成瀬を余計あおる結果になっていることに、奈津自身気付いていない。

 今日は何とか見られることなく始末を終え、成瀬の右手も拭ってから、奈津はようやく横になった。足下に丸まっていた柔らかい羽布団を、肩まで掛ける。

 自然と背を向ける体勢になり、ほっとひと息つくと、寝返りを打ちながら成瀬が後ろから抱きついてきた。また無意識に腕が回される。……と。

「──おやすみ」
「っ、……おやすみなさい……」

 奈津は一瞬にして、血の気が引いた。

(……起きてたのか? まさか、今の……見てた、のか……?)

 知らず強張った奈津の体を、成瀬が後ろから優しく抱きしめたのだった。

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