ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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「はっ……は……」

 奈津は肩で息をしながら、体を弛緩させていった。

 成瀬が自分の中で達してくれるこの瞬間が、奈津は一番好きだった。
 自分を求めて欲情し、劣情に任せるようにその証を注ぎ込まれる。その刹那的ともいえる幸福感の絶頂で、自分も達しているように感じるのだった。

 しかし、さすがに今は、体力の限界を感じる。ようやく息が落ち着くと、明日立てるか不安になってきた。

 ──と、いまだに握られたままの右手の中のものが、にわかに苦しくなってくる。

「……あの、放して」

 体をよじって手を外そうとするが、奈津のそれはしっかりと握り込まれたままだ。ごそごそと揺すってみるが、ピクリとも動かない。

「ねぇ、い、痛いから。放して、成瀬さん、なる……」

 まさかと思い首をひねって振り返ると、スースーと寝息が聞こえてきた。……嘘だろ。

「ちょっとっ、放して……い、いたたたっ、痛いっ」

 両手で何とか外そうとするが、なかなか外れない。寝ているのに、何でこんなに力が入ったままなんだ? 地味に恐怖を感じて必死にもがく。

「お、起きてっ、成瀬さん、痛いからっ」
「うー……ん……」

 ようやく眠そうな返事と共に、圧迫されていた部分がふっと楽になった。そのまま、またスースーと寝息が戻る。奈津は、安堵のため息をついた。

 ──と、いまだに入れられたままの後孔の中のものが、違和感を訴えてくる。

(寝るんなら、抜いてくれないと……)

 成瀬のものは、普段の状態でもかなりの大きさと長さを誇っており、奈津のそれとはあまりにも違っていた。……羨ましい限りだが、それ故、縮んだからといって勝手に抜け出てくれるような代物ではなかった。それに今は、後ろから密着されている。

 かといって、入れられたまま眠るなんてできない。

 奈津は再びもがいた。寝ている人間は、どうしてこうも重いんだろう。

「なっ、成瀬さんっ、抜いてっ。抜いてくださいってば」
「んー……」

 離れるどころか、更に体重が寄り掛かる。

「……栓、しとけ。明日……洗って……やる……」
「なっ!」

 冗談じゃない。というか、今は直後で緩んでいるかもしれないが、じきにきつくなって苦しくなるのは成瀬の方ではないのか。

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