ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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 昨日はメルマリーで披露宴があったので、奈津はそのツリーを見ていた。

 フロントの横に飾られていたそれは決して大きくはなかったが、昔からあるような、温かみのあるツリーだった。金、銀、赤の光沢のあるボールがきらきらと散らばり、小さな靴下やトナカイ、赤いベルベットのリボンがついた小さなベルがところどころにぶら下がっている。

 そして、真っ白な雪のコートをふわりと纏った樅の木は、その頭上にキリストの降誕を讃えるように金色の大きな星を戴いていた。不思議と懐かしいような気持ちになるのは、昔、絵本が何かで見たのかもしれない。

 ツリーの足元には、子供たちに配られることを想像させるような大小さまざまな箱が、きれいな包み紙にリボンを掛けて、幾つも積み上げられていた。

 中身は空のディスプレイなのだろうけど、見ていると楽しい気分になってくる。クリスマスプレゼントは、やっぱり幾つになってもわくわくしてしまうものだ。

『──何言ってる。中身も入ってるに決まってるだろう』

 奈津が率直な感想を口にすると、成瀬から意外な反応が返ってきた。

『え! あれ、中身も入ってるんですか?』
『当たり前だ。空っぽのプレゼントを渡すサンタがどこにいる』
『でも……それじゃ不用心なんじゃ』
『もともとプレゼントなんだ。持って行ってもらって構わないんだが……やっぱり、単なるディスプレイだと思うんだろうな。去年も、1つもなくならなかった』
『何が入っているんですか?』
『……そうだな、お前にも1つやるよ、25日に。楽しみにしとけ』

 メルマリーは2階が披露宴会場で1階がレストランになっており、レストランは通常、平日のみ営業している。クリスマスのある週はクリスマスディナーを提供していて、今年は25日の土曜日も営業する予定らしい。

 そして、23、24、25日の3日間はクリスマスイベントとして、奈津は前々からの成瀬との約束で、ピアノの生演奏をすることになっている。プレゼントは、ラストの25日にサプライズでお客様に配るのだという。

(本当に何が入っているんだろう?)

 不思議に思いながらも、奈津は楽しみが1つできたのだった。

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