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◇
「──おい。電話がなってる。起きろって」
「ん……何?」
何度も体を揺さぶられて、奈津はようやく眠い目を開けた。十分に明るい窓の外に、もう朝なのかと気付く。
「さっきから何回も電話が掛かってるぞ。急用じゃないのか?」
「え?」
ごそごそと顔を上げると、サイドテーブルに置いてある奈津のスマートフォンが今も振動を続けている。
奈津は体を起こして、スマートフォンを手に取った。……体の節々が、痛い。
「……はい。もしも、」
『遅いっ!! いつまで寝てんよっ! いくら休みだからって、もう10時よ、10時!!』
起き抜けの頭に大声で怒鳴られ、思わず耳を遠ざけてしまった。有り余る元気の持ち主は、奈津の事務所、代表の櫻井だ。……何故か、寝ていたことがバレている。
「あの、社長、すみま」
『もういいわよ。それより相川、すごいじゃないの! あんたに、ブルームーンのレギュラーの話が来てんのよっ!』
「えっ、何でそれを……」
奈津は一気に目が覚めた。
昨日、自分は高嶺に、はっきりした返事はしていない。櫻井に相談した上で、断ろうかと思っていたのだ。……成瀬も、良くは思っていないような気がする。
『さっき、高嶺支配人から電話があったの。オーディションは? って聞いたら、もう済んだって言うじゃない。あんたねぇ、勝手にオーディション受けてんじゃないわよ!』
「ええっ? オーディションなんて、受けてな、」
『ああ、もういいって! 昨日、支配人の前で1曲弾いたんだって? で、何弾いたの』
オーディションを受けたつもりは全くないのだが、弁明する隙もない。
「ええと……『ラプソディー・イン・ヘヴン』を、」
『あんた、バッカじゃないの!? オーディションにはねぇ、王道の曲ってのがあんのよっ。何でわざわざ、そんな分かりにくい曲弾いたの』
「あの、それは支配人、」
『まぁ、受かったからいいんだけどね!』
櫻井の、弾丸のような一方的な話は続く。
隣で成瀬も体を起こし、大きく伸びをしていた。
「──おい。電話がなってる。起きろって」
「ん……何?」
何度も体を揺さぶられて、奈津はようやく眠い目を開けた。十分に明るい窓の外に、もう朝なのかと気付く。
「さっきから何回も電話が掛かってるぞ。急用じゃないのか?」
「え?」
ごそごそと顔を上げると、サイドテーブルに置いてある奈津のスマートフォンが今も振動を続けている。
奈津は体を起こして、スマートフォンを手に取った。……体の節々が、痛い。
「……はい。もしも、」
『遅いっ!! いつまで寝てんよっ! いくら休みだからって、もう10時よ、10時!!』
起き抜けの頭に大声で怒鳴られ、思わず耳を遠ざけてしまった。有り余る元気の持ち主は、奈津の事務所、代表の櫻井だ。……何故か、寝ていたことがバレている。
「あの、社長、すみま」
『もういいわよ。それより相川、すごいじゃないの! あんたに、ブルームーンのレギュラーの話が来てんのよっ!』
「えっ、何でそれを……」
奈津は一気に目が覚めた。
昨日、自分は高嶺に、はっきりした返事はしていない。櫻井に相談した上で、断ろうかと思っていたのだ。……成瀬も、良くは思っていないような気がする。
『さっき、高嶺支配人から電話があったの。オーディションは? って聞いたら、もう済んだって言うじゃない。あんたねぇ、勝手にオーディション受けてんじゃないわよ!』
「ええっ? オーディションなんて、受けてな、」
『ああ、もういいって! 昨日、支配人の前で1曲弾いたんだって? で、何弾いたの』
オーディションを受けたつもりは全くないのだが、弁明する隙もない。
「ええと……『ラプソディー・イン・ヘヴン』を、」
『あんた、バッカじゃないの!? オーディションにはねぇ、王道の曲ってのがあんのよっ。何でわざわざ、そんな分かりにくい曲弾いたの』
「あの、それは支配人、」
『まぁ、受かったからいいんだけどね!』
櫻井の、弾丸のような一方的な話は続く。
隣で成瀬も体を起こし、大きく伸びをしていた。
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