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第一章 勇者の聖剣が呪われてた
前門のスケルトン後門のマミー
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死の神アドロスの真っ黒な眼球がこちらを見ている。同時に包帯ぐるぐる巻きの死者の群れが絵画の中でゆらゆら揺れている。
「王子様……、これ……」
「ギミックだ!!」
走れ!と言うなり走り出すアズラルトに必死でついて行く。いつの間にか壁画は大量のマミー軍団に代わっていた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁお化けぇぇぇぇぇ!!!!!」
「バッカお前壁画の死者平気だっつっただろ!掴むなしがみつくな!!!」
「壁画は襲ってきませんもん!!!きゃぁぁぁぁぁ!!!前からもぉぉぉぉぉ!!!!」
後ろにマミー、前にスケルトン。
「王子様!!この間の光魔法は!?」
「こんなに囲まれてちゃ無理だ!それともお前この数一人で相手出来るか!?」
「無理ですよぉ!!」
もちろん聖剣を使って戦う事は出来る。でもこの間は相手も単体だったからアズラルトの邪魔をさせないように出来たけど、この団体様相手に一人でアズラルトを守りながら戦うのは不可能だ。
魔法は詠唱途中で攻撃されると詠唱キャンセルになって最初からやり直しなのである。詠唱の短いレベル1魔法や、詠唱なく発動できる得意属性の魔法ならキャンセルの危険もないが、アズラルトもミズイロも光魔法は苦手の部類なのだ。
聖剣なんて抜けるから光の勇者で光魔法得意、とかそんな事は全然ないのである。
「仕方ねぇ……、とりあえずスケルトンを崩すぞ!!」
スケルトンはその骨骨しい体をカタカタいわせながら迫ってきている。彼らは動きも遅く決して強くはない。強くはないのだけれど、倒しても倒してもまた骨を組み立てて復活してしまうのである。
しかし復活するまで数分のタイムラグがあるので、唯一完全消滅させられる光魔法を使えない場合は物理で叩いて崩れている内に逃げる、それしかない。
「この間みたいに剣に光魔法付加出来ないんですか!?」
「あれにも詠唱がいるんだよ!!」
この間はアズラルト固有スキル【魔法待機】で先に光魔法の詠唱を、次に剣に付加する為の詠唱を行っていたようだ。
得意属性なら一瞬の硬直状態程度で付加可能だが、得意属性以外はそうもいかない。ただ詠唱時間は倍になるが、詠唱を唱え終えていれば待機のまま剣への付加詠唱も、次の魔法も使えるので、詠唱なしの得意魔法で怯ませつつ相手の弱点属性でトドメを刺すことも可能なのである。詠唱さえ出来れば、だが。そして待機させられる魔法も一つのみ。待機させられる時間もそこまで長くはないというデメリットもある。あとMPが通常の2倍減るという最大のデメリットも。
ひとまずお互い剣を抜き、まずは前方のスケルトンに狙いを定め突っ走る。カランコロン、と間の抜けた音を立てながら簡単に骨の山になっていくスケルトンをくぐり抜けて奥へ走ってーーそして足を止めた。止めざるを得なかった。
カラン、と落ちていく小石は奈落の底へ飲み込まれていく。
「えぇぇぇぇ……!?行き止まり!!?」
聖剣はしきりに背後の敵へ向かおうとするが必死で抗いつつ、ミズイロは下を覗いた。
何も見えない、闇が広がっている。
「外から見た感じじゃもっと奥がありそうだったじゃねぇか!!」
マミーは動きが遅い。しかし力は強く、どうなっているのかあのヒラヒラした包帯が繰り出す打撃はLV10のアズラルトですら脅威である。
奥で詠唱を完成させてから戻る作戦は失敗である。そして完全に退路を断たれた今絶体絶命だ。
「ポーションってあったか?」
「2本だけなら……。薬草は10束。でも僕のスキルで効果は倍ですぅ……!」
ミズイロの固有スキル【薬師】で効果が倍になりHP半分回復するポーションと、HP50回復する薬草。
もう一度今度は復活したスケルトンとマミーの混合軍団の合間を縫って出口側に走る事はなんとか出来るかもしれない。無傷とはいかないと思うが。聖剣は早く先に進みたい犬のごとくグイグイとミズイロの腕を引っ張っている。手を離したら聖剣だけ敵に突っ込んでいきそうな勢いである。
「よし……、行く」
ぞ、と言いかけたその瞬間。
ドォォォォォォン、と地響きのような音と共に混合軍団の最後尾がぶっ飛んで、さらにカッ、と閃光がさし塵と化す。
また、ドゴォォォン、カッ、ズドォォォン、カッ、を繰り返し、やがて土煙の中に薄っすら人影が見え始める。
カツ、コツ、カツ、コツ、とヒールの音が無音になった遺跡に反響し、アズラルトの顔が険しくなっていく。ミズイロは聖剣が大人しくなった事で混合軍の全滅を知り、目の前の相手が味方だと安堵しすでに半泣きである。
コツ、と最後の一歩を踏み出しもうもうとしていた煙が晴れた目の前にいたのはーー金髪碧眼の巨乳美女。
ゆさゆさと揺れる扇情的なお胸様をぎゅ、と白銀の胸当てで包み、きゅっと引き締まったウエストにムッチリした尻とスラリと長い脚。ピッタリしたパンツに膝丈のロングブーツは黒の革素材。短剣を腰に装備している物の、手にはメリケンサックがはめられている。
ミズイロは、美形怖い病が発動するより先に揺れるお胸様にポ、と顔を赤くした。童顔で美少年風であろうともおっぱいは大好きだ。
しかし長い艶やかな髪を靡かせるお姉さまを見て……あれ?と首を傾げた。何かこの人見たことある。
「久しぶりね、アズラルト」
「……何でここにいるんですか、姉上」
「王子様……、これ……」
「ギミックだ!!」
走れ!と言うなり走り出すアズラルトに必死でついて行く。いつの間にか壁画は大量のマミー軍団に代わっていた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁお化けぇぇぇぇぇ!!!!!」
「バッカお前壁画の死者平気だっつっただろ!掴むなしがみつくな!!!」
「壁画は襲ってきませんもん!!!きゃぁぁぁぁぁ!!!前からもぉぉぉぉぉ!!!!」
後ろにマミー、前にスケルトン。
「王子様!!この間の光魔法は!?」
「こんなに囲まれてちゃ無理だ!それともお前この数一人で相手出来るか!?」
「無理ですよぉ!!」
もちろん聖剣を使って戦う事は出来る。でもこの間は相手も単体だったからアズラルトの邪魔をさせないように出来たけど、この団体様相手に一人でアズラルトを守りながら戦うのは不可能だ。
魔法は詠唱途中で攻撃されると詠唱キャンセルになって最初からやり直しなのである。詠唱の短いレベル1魔法や、詠唱なく発動できる得意属性の魔法ならキャンセルの危険もないが、アズラルトもミズイロも光魔法は苦手の部類なのだ。
聖剣なんて抜けるから光の勇者で光魔法得意、とかそんな事は全然ないのである。
「仕方ねぇ……、とりあえずスケルトンを崩すぞ!!」
スケルトンはその骨骨しい体をカタカタいわせながら迫ってきている。彼らは動きも遅く決して強くはない。強くはないのだけれど、倒しても倒してもまた骨を組み立てて復活してしまうのである。
しかし復活するまで数分のタイムラグがあるので、唯一完全消滅させられる光魔法を使えない場合は物理で叩いて崩れている内に逃げる、それしかない。
「この間みたいに剣に光魔法付加出来ないんですか!?」
「あれにも詠唱がいるんだよ!!」
この間はアズラルト固有スキル【魔法待機】で先に光魔法の詠唱を、次に剣に付加する為の詠唱を行っていたようだ。
得意属性なら一瞬の硬直状態程度で付加可能だが、得意属性以外はそうもいかない。ただ詠唱時間は倍になるが、詠唱を唱え終えていれば待機のまま剣への付加詠唱も、次の魔法も使えるので、詠唱なしの得意魔法で怯ませつつ相手の弱点属性でトドメを刺すことも可能なのである。詠唱さえ出来れば、だが。そして待機させられる魔法も一つのみ。待機させられる時間もそこまで長くはないというデメリットもある。あとMPが通常の2倍減るという最大のデメリットも。
ひとまずお互い剣を抜き、まずは前方のスケルトンに狙いを定め突っ走る。カランコロン、と間の抜けた音を立てながら簡単に骨の山になっていくスケルトンをくぐり抜けて奥へ走ってーーそして足を止めた。止めざるを得なかった。
カラン、と落ちていく小石は奈落の底へ飲み込まれていく。
「えぇぇぇぇ……!?行き止まり!!?」
聖剣はしきりに背後の敵へ向かおうとするが必死で抗いつつ、ミズイロは下を覗いた。
何も見えない、闇が広がっている。
「外から見た感じじゃもっと奥がありそうだったじゃねぇか!!」
マミーは動きが遅い。しかし力は強く、どうなっているのかあのヒラヒラした包帯が繰り出す打撃はLV10のアズラルトですら脅威である。
奥で詠唱を完成させてから戻る作戦は失敗である。そして完全に退路を断たれた今絶体絶命だ。
「ポーションってあったか?」
「2本だけなら……。薬草は10束。でも僕のスキルで効果は倍ですぅ……!」
ミズイロの固有スキル【薬師】で効果が倍になりHP半分回復するポーションと、HP50回復する薬草。
もう一度今度は復活したスケルトンとマミーの混合軍団の合間を縫って出口側に走る事はなんとか出来るかもしれない。無傷とはいかないと思うが。聖剣は早く先に進みたい犬のごとくグイグイとミズイロの腕を引っ張っている。手を離したら聖剣だけ敵に突っ込んでいきそうな勢いである。
「よし……、行く」
ぞ、と言いかけたその瞬間。
ドォォォォォォン、と地響きのような音と共に混合軍団の最後尾がぶっ飛んで、さらにカッ、と閃光がさし塵と化す。
また、ドゴォォォン、カッ、ズドォォォン、カッ、を繰り返し、やがて土煙の中に薄っすら人影が見え始める。
カツ、コツ、カツ、コツ、とヒールの音が無音になった遺跡に反響し、アズラルトの顔が険しくなっていく。ミズイロは聖剣が大人しくなった事で混合軍の全滅を知り、目の前の相手が味方だと安堵しすでに半泣きである。
コツ、と最後の一歩を踏み出しもうもうとしていた煙が晴れた目の前にいたのはーー金髪碧眼の巨乳美女。
ゆさゆさと揺れる扇情的なお胸様をぎゅ、と白銀の胸当てで包み、きゅっと引き締まったウエストにムッチリした尻とスラリと長い脚。ピッタリしたパンツに膝丈のロングブーツは黒の革素材。短剣を腰に装備している物の、手にはメリケンサックがはめられている。
ミズイロは、美形怖い病が発動するより先に揺れるお胸様にポ、と顔を赤くした。童顔で美少年風であろうともおっぱいは大好きだ。
しかし長い艶やかな髪を靡かせるお姉さまを見て……あれ?と首を傾げた。何かこの人見たことある。
「久しぶりね、アズラルト」
「……何でここにいるんですか、姉上」
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