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第一章 勇者の聖剣が呪われてた
武闘派は何でも出来る
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ジャイアントタランチュラは警戒したようで天井付近から降りてこない。しかし生きのいい獲物を早々に諦めるとも思えない。こちらが疲れた隙をついて襲ってくるつもりだろう。
「……こういう時遠距離攻撃使える奴がいると助かるんだけどな」
魔法は中距離攻撃が精々だ。それを超える物となると高位魔法になり、しかもピンポイントで魔物だけに当てる事は出来ない広範囲魔法になるので遺跡が崩れかねない。
「俺、銃使えるよ」
無いものねだりしても仕方ないわよ、と言おうとしたアナスタシアンの口から
「ーー何て?」
と驚くくらい低い声が出た。ミズイロが、え、誰の声!?と飛び上がったくらいの声である。
「えー?俺銃使えるよって言った」
ほら、と背中から取り出した長距離銃に
「「そういう事は早く言え!!」」
と王族姉弟の声は見事に重なった。
というかどうやってバレずに背中に隠していた。どう頑張っても何かしら出っ張るだろう。だがたった今言われるまで誰もその存在に気付かなかった。背中にマジックパックでもついてんのか。アズラルトは心の中で怒涛の突っ込みをしている。
しかし先程の戦闘でこれを使われなくて良かった。この世界では馴染みのない銃は扱うのに少々コツがいる為、扱える者がほとんどいない。故に銃に対する対処法がまだないのである。一か八か魔力で肉体強化して防御力を上げて突っ込むか、避けるか、使用者に気付かれる前に倒すか。その程度の対策しか取れないのが実情である。だが味方が銃を使えるのならばこれ程心強いことはない。
「届きそうか?」
スコープを覗くリンハルクに訊くが、
「う~ん」
と何とも言えない返答があったのみだ。スコープを右へ左へしているが、ジャイアントタランチュラを追っているのかまだ見つけきれず捜しているのかがわからない。
「おい、どうなんだ」
しかしリンハルクが返事をするよりも早くミズイロが
「ひぇ……ッ」
と短い叫びと共に消えた。否、聖剣に引っ張られ跳躍した。同時に『キシャァァァァァ!!!!』と上がるジャイアントタランチュラの声。どさ、と落ちた足がまだビクビクと動いている。
「暗くて良く見えないんだよねぇ」
「そういうの早く言ってくれる!?」
いつの間にか背後を取られていた事に気付いた時にはもう遅いのだ。聖剣が勝手に敵に向かっていかなければ危うくあの糸につかまる所だった。
再びスルスルと天井に戻って行ってしまったジャイアントタランチュラの姿は見えない。
「光があればいいのね?どの程度必要なの?」
「10秒は欲しいかなぁ」
「わかったわ」
手の平に光を灯したアナスタシアンがリンハルクを見る。
「準備はいいかしら」
「いいよー」
バッ、と天井に向けて放った光は明るすぎず暗すぎず辺りを照らす。リンハルクの言った10秒に満たない僅かな時間で再び悲鳴を上げたジャイアントタランチュラが天井から落ちてくる。バランスを崩しただけだ。地上につく前に体勢を立て直し直ぐ様糸を伝って戻ってしまえる状態である。
だがそうなる前にアズラルトの炎が無防備になった腹を目掛けて放たれた。
『グルギャシャァァァァァァァァーーーーーーッ!!!!!!!』
ビリビリと大気を震わす声が響いた。地面で仰向けになり足をバタつかせていたジャイアントタランチュラが素早く体勢を立て直す。その瞳は先ほどより禍々しくより赤く光っている。
「ブッ殺スイッチ入ったわよ。気を付けて!!」
先程までは暗闇に乗じて襲ってくる戦い方だったジャイアントタランチュラはその巨大な足をブォン、ブォンと振り回しこちらへ迫ってくる。当たれば吹き飛ばされるのは必至だ。吹き飛ばされて壁にでもぶち当てられた日には骨折程度では済まない。
「炎で外殻を弱らせる!突っ込めメガネ!!」
「僕……ッ!?」
この状態のジャイアントタランチュラは外殻が硬化し刃が通らない。しかも魔法では体が切断出来なくなる上に外殻だけのダメージはすぐ回復してしまうから厄介なのだ。魔法で弱らせると同時に刃で斬る、という方法以外では倒せない為単独で倒すのは難しい敵である。
みんな強いからもう後ろにいていいかなぁ、なんてジリジリと後ろに下がっていたミズイロはアズラルトに名指しされてビクリ、と飛び上がった。
「一番レベル低いんだからここで経験値稼いどけ!!」
嫌です!!と言う前にすでに聖剣はやる気満々で最前線に飛び込んでいる。もちろんミズイロを連れて。
ミズイロは内心叫んだ。意志があるんだから聖剣が勝手に行って、と。舌を噛みそうになるから声には出せないけれど。レベルなんか上がらなくてもいい。ただ可愛いお嫁さんをもらって天寿を全うする、それだけでいいのに。
「レベルの高い男はモテるぞ!!」
その一言でミズイロのちっぽけなやる気がマックスになったのは言うまでもない。段々ミズイロの扱いに慣れてきたアズラルトである。
アズラルトの炎で溶けた外殻にミズイロの刃が振り下ろされるがそれより早く回復してしまいガキン、と跳ね返された。バランスを崩すミズイロを受け止めたリンハルクに礼を言うよりも早くアズラルトの雷が落ちた。魔法ではない。言葉の雷である。
「斬り込むのが遅い!!!」
「聖剣に言ってくださいー!!!」
「……こういう時遠距離攻撃使える奴がいると助かるんだけどな」
魔法は中距離攻撃が精々だ。それを超える物となると高位魔法になり、しかもピンポイントで魔物だけに当てる事は出来ない広範囲魔法になるので遺跡が崩れかねない。
「俺、銃使えるよ」
無いものねだりしても仕方ないわよ、と言おうとしたアナスタシアンの口から
「ーー何て?」
と驚くくらい低い声が出た。ミズイロが、え、誰の声!?と飛び上がったくらいの声である。
「えー?俺銃使えるよって言った」
ほら、と背中から取り出した長距離銃に
「「そういう事は早く言え!!」」
と王族姉弟の声は見事に重なった。
というかどうやってバレずに背中に隠していた。どう頑張っても何かしら出っ張るだろう。だがたった今言われるまで誰もその存在に気付かなかった。背中にマジックパックでもついてんのか。アズラルトは心の中で怒涛の突っ込みをしている。
しかし先程の戦闘でこれを使われなくて良かった。この世界では馴染みのない銃は扱うのに少々コツがいる為、扱える者がほとんどいない。故に銃に対する対処法がまだないのである。一か八か魔力で肉体強化して防御力を上げて突っ込むか、避けるか、使用者に気付かれる前に倒すか。その程度の対策しか取れないのが実情である。だが味方が銃を使えるのならばこれ程心強いことはない。
「届きそうか?」
スコープを覗くリンハルクに訊くが、
「う~ん」
と何とも言えない返答があったのみだ。スコープを右へ左へしているが、ジャイアントタランチュラを追っているのかまだ見つけきれず捜しているのかがわからない。
「おい、どうなんだ」
しかしリンハルクが返事をするよりも早くミズイロが
「ひぇ……ッ」
と短い叫びと共に消えた。否、聖剣に引っ張られ跳躍した。同時に『キシャァァァァァ!!!!』と上がるジャイアントタランチュラの声。どさ、と落ちた足がまだビクビクと動いている。
「暗くて良く見えないんだよねぇ」
「そういうの早く言ってくれる!?」
いつの間にか背後を取られていた事に気付いた時にはもう遅いのだ。聖剣が勝手に敵に向かっていかなければ危うくあの糸につかまる所だった。
再びスルスルと天井に戻って行ってしまったジャイアントタランチュラの姿は見えない。
「光があればいいのね?どの程度必要なの?」
「10秒は欲しいかなぁ」
「わかったわ」
手の平に光を灯したアナスタシアンがリンハルクを見る。
「準備はいいかしら」
「いいよー」
バッ、と天井に向けて放った光は明るすぎず暗すぎず辺りを照らす。リンハルクの言った10秒に満たない僅かな時間で再び悲鳴を上げたジャイアントタランチュラが天井から落ちてくる。バランスを崩しただけだ。地上につく前に体勢を立て直し直ぐ様糸を伝って戻ってしまえる状態である。
だがそうなる前にアズラルトの炎が無防備になった腹を目掛けて放たれた。
『グルギャシャァァァァァァァァーーーーーーッ!!!!!!!』
ビリビリと大気を震わす声が響いた。地面で仰向けになり足をバタつかせていたジャイアントタランチュラが素早く体勢を立て直す。その瞳は先ほどより禍々しくより赤く光っている。
「ブッ殺スイッチ入ったわよ。気を付けて!!」
先程までは暗闇に乗じて襲ってくる戦い方だったジャイアントタランチュラはその巨大な足をブォン、ブォンと振り回しこちらへ迫ってくる。当たれば吹き飛ばされるのは必至だ。吹き飛ばされて壁にでもぶち当てられた日には骨折程度では済まない。
「炎で外殻を弱らせる!突っ込めメガネ!!」
「僕……ッ!?」
この状態のジャイアントタランチュラは外殻が硬化し刃が通らない。しかも魔法では体が切断出来なくなる上に外殻だけのダメージはすぐ回復してしまうから厄介なのだ。魔法で弱らせると同時に刃で斬る、という方法以外では倒せない為単独で倒すのは難しい敵である。
みんな強いからもう後ろにいていいかなぁ、なんてジリジリと後ろに下がっていたミズイロはアズラルトに名指しされてビクリ、と飛び上がった。
「一番レベル低いんだからここで経験値稼いどけ!!」
嫌です!!と言う前にすでに聖剣はやる気満々で最前線に飛び込んでいる。もちろんミズイロを連れて。
ミズイロは内心叫んだ。意志があるんだから聖剣が勝手に行って、と。舌を噛みそうになるから声には出せないけれど。レベルなんか上がらなくてもいい。ただ可愛いお嫁さんをもらって天寿を全うする、それだけでいいのに。
「レベルの高い男はモテるぞ!!」
その一言でミズイロのちっぽけなやる気がマックスになったのは言うまでもない。段々ミズイロの扱いに慣れてきたアズラルトである。
アズラルトの炎で溶けた外殻にミズイロの刃が振り下ろされるがそれより早く回復してしまいガキン、と跳ね返された。バランスを崩すミズイロを受け止めたリンハルクに礼を言うよりも早くアズラルトの雷が落ちた。魔法ではない。言葉の雷である。
「斬り込むのが遅い!!!」
「聖剣に言ってくださいー!!!」
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