【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ

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第一章 異世界に来ちゃった

始まりの泉

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 最後の記憶はグルグル回る景色と揺れる視界の向こうに見える暖かな光――だったはずなのだけど。目が覚めるとそこは。

「……どこ、ここ……?」

 透明度の高い泉のど真ん中に浮く俺。泉の中からは緑やら黄色やらキラキラ光る球体が浮かび上がっては夜空に消えていく。
 んー、と天国?え、俺死んだ?
 いや、確かにあの状況で生きてるとは思えない。朝っぱらから酒を飲んで、海に落ちて。思わず力を抜くことも忘れてバタバタもがいたけどどんどん沈んでいく体。ガボッ、と息を吐いたせいで大量に水が流れ込んだ後はぼんやりと光を見つめて――そこからの記憶はない。

「そっか……死んじゃったのか……」

 まぁいいか、なんて思うのはおかしいのだろうか。でも俺は――疲れていた。本当に疲れていた。
 残業に次ぐ残業。働き方改革?ナニソレ美味しいの?とでも言わんばかりのブラック企業。モラハラパワハラは当たり前。上は定時に帰るのに下っ端は明け方4時に帰って8時に出勤なんか当たり前。
 先に辞めていった同僚達が今はイキイキしていて羨ましかった。俺も辞めたい、って思ったのに

 ――お前みたいな高卒の無資格、どこが雇うって言うんだ?うちだから雇ってやってるんだ!

 そんな風に脅されたら辞めようにも辞められなくて。
 だから多分半分は死ぬために海へ行ったんだ。あそこで死ななかったら明日からまたおなじ日々が始まるだけで、でも本気で物凄く死にたかったわけでもないんだけど。

「死んだのかぁ……」

 そっかぁ。仕方ないなぁ。もし生まれ変わりとかあるなら、今度はゲームみたいなモフモフに囲まれたのんびりスローライフを送りたいなぁ。畑耕してモフモフ達のお世話して魚釣ってご近所さんにお裾分けしに行ったりしてさ。
 ふわふわ漂う色とりどりの球体。その1つにツン、と触れてみた時だった。

『貴方の願いはモフモフに囲まれたのんびりスローライフ、で宜しいですか?』

「……は?」

『貴方の願いはモフモフに囲まれたのんびりスローライフ、で宜しいですか?』

「え、あ、はい……」

『職業    農民(浄化の神子)
 種族    ヒト族(メム体)
 スキル   治癒術
       魔術障壁
       大魔術
 称号    双黒の者
       総受けの者
       物理防御ペラペラ
       不運の申し子 
 ステータス 生命力  B
       力    E
       物理防御 F
       魔力   SSS
       魔法防御 SSS
       素早さ  A
       運    F』

 パッと目の前に現れた透明な板に書かれた文字の羅列。これが貴方の初期能力です、という謎の声に

「ちょっと待った――――!!!」

 思わず待ったをかけるけど。

『それでは、良い旅を』

 グンっ、といきなりかかる重力に引かれるまま体はまっ逆さま。

 待ってくれ待ってくれ、今なんか不穏な称号が見えたぞ!農民の横に「浄化の神子」っていうのも見えたぞ!

「農民と神子は並べてはいけないと思いま――――す!!!」

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