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第一章 異世界に来ちゃった
捕まりました
それがどうしてこんな事になっているのだろう。早速、チラッと見えた称号『不運の申し子』が発揮されてるんだろうか。
ガラガラと音を立てながら回るのは馬の引く幌付き荷車の車輪。道が悪いのか体が揺れに合わせて浮いたり落ちたり繰り返し、そろそろ吐きそうだ。
目隠しに手枷足枷ついでに猿轡。身動きが取れない俺はガラガラガッシャンゴットンゴットンという雑音の合間にある人の声に耳を傾けた。
「こんな森にまさかこんな上玉が落ちてるとはな」
「どこかの奴隷が逃げてきたんじゃねぇのか?わざわざ黒に染めるなんてよほどの“神子”狂いなんだろうよ」
「上にバレりゃ縛り首もんだろうになぁ」
「そんなヤツを売り飛ばそうとしてる俺達もだろうが」
「違いねえ!」
ギャハハハハ、なんて下品な笑い声。
少し頭を整理しよう。
あの幻想的な泉から落ちた?俺は見知らぬ森の入り口付近にいた。
何故入り口だってわかるか?多少森の中に入ってたけど、木々の向こうに道が見えてたしな。反対を向けば先に行くほど薄暗くなっていたから、必然的に明るい方へ向かって歩き出したわけだ。
そしたら厳ついオッサン達と偶然出くわして。居場所と道を聞こうと思ったらあっという間に捕まった。
見事な早業だったぜ……。
(物理防御ペラペラとか書いてあったもんな……)
あの謎のボードを信じるならば、だ。オッサンから鳩尾に一撃食らって気絶してこの状況だから、間違ってない気もする。
オッサン達は俺が目を覚ましたと気付いていないらしく、まだケタケタと下品に笑い合っていたんだけど。
「な、なんだ!!?」
不意にガッタン!と大きな振動と共に馬車が止まる。
何だ、は俺の台詞なんですけどー!
何せ外からは
「くそ!何でここを通るのがバレたんだ!」
「大人しくしろ!抵抗するやつは斬り捨てる!!」
「うるせぇ!捕まってたまるか!」
ガシャ、ドン、ガン、キィン――
ありとあらゆる物音と怒声が響き渡っている。
ホントに何なんだよ!誰か教えてー!!
「くそがっ!!」
どこかの女芸人みたいな台詞と共にポイっ、と何かが投げ込まれた気配がした。
(何……?)
次いでパチパチと聞こえるその音と漂ってくる煙と臭い。
これって……
(えぇぇぇ――――――!!!!これ燃えてませんか――――――!!!?)
目隠しで見えないけど多分そんなに広くない荷馬車の中、体を熱が撫でていく。
嘘だろ、誰か助けて――――!!!
そんな心の声が聞こえたんだろうか。ガシャガシャと騒がしい金属音にギシリと荷車の床が軋む音。
「無事か!」
俺を抱き起こしたがっしりとした腕は固い金属で覆われているのか背中が痛い。あと熱い。
多分これあれだよね。炎で煽られて金属も熱を持ってるやつだよね。は、早く逃げないと俺もろとも蒸し焼きになっちゃう!見知らぬ誰か!俺を連れて早く逃げて!!置いていけ、なんて言わないぞ!俺もここで焼け死にたくないからな!
ギシギシガシャガシャ、と騒がしい物音の後焦げた臭いや肌を焦がす熱が遠ざかる。
あぁ、良かった……。助かった……。わけのわからないまま丸焦げなんて絶対嫌だもんな。
「おい、お前!生きているか!?」
安堵のあまり力の抜けた体はもう指一本動かない。
(どこのどなたか存じませんが、助けてくれてありがとうございます……)
でも何がどうしてこうなったのか全くわからない俺の脳みそは、意識を閉ざす事でこの現実から逃げ出したのであった。
◇
「ん……」
何だろう。体が……というか尻が痛い。ついでに上下に揺れる振動で気持ちが悪い。俺はどうしたんだっけ……??
「止まれ」
急に耳元で聞こえた声に驚いて顔をあげる。ヒヒン、と聞こえたのはどう聞いても馬の声。しかし見上げた先にあったのは全く見知らぬ男の顔だった。
え、誰このイケメン。
風にさらさら揺れる銀髪。アイスブルーの瞳は感情を出さずに俺を見下ろしている。唇の左側にある黒子が何かエロく見えるのはその整った顔のせいか。
というか俺は何故このイケメンに抱き抱えられてるんだろう。
再びヒヒン、と嘶く馬を宥めるように撫でたその動きで抱き抱えられていた俺の体も揺れてジャラリ、と耳障りな音がして――
(お、思い出した……!!!)
そうだ、俺は変なおっさん達に捕まったんだった!しかも危うく生きたまま焼き殺されるところだったんだ!
「大丈夫か」
思い出したら急に震えが来た。
震えに合わせて微かにチャリチャリ音をたてる鎖が否応なしに現実を突き付けてくる。
「おい、お前。大丈夫か」
大丈夫かって?大丈夫じゃねぇよ!こっちは死にかけたんだぞ!いや、もしかしたら一度死んでるのかもだけど、でも今生きてるからそこは置いといて。
俺がうんともすんとも言わないからか、イケメンは僅かに眉を寄せる。怒ったのかと思えば、器用に唇でグローブを咥えて外し俺の瞼をその大きな手の平で塞いだ。
何々!?見えなくなると余計怖いんだけど!!さっきも目隠しされて暗闇の中で焼かれかけたんだし!!
「や……っ」
小さく溢れた声は掠れてて、イケメンに届いたのかわからない。でもイケメンは一旦手の平を避けると俺の瞳を覗き込んだ。
「ここはもう安全だ。いい子だからもう少し寝ていろ」
冷たく見えた瞳を細めてふわりと笑う。その手が再び瞼に掛かり、それから口元に当てられる。いつの間にかその手の平には爽やかな甘い香りを振り撒く粉末が。その甘い香りを認識した途端、あれ、と思う間もなくまたも俺の意識はなくなった。
ガラガラと音を立てながら回るのは馬の引く幌付き荷車の車輪。道が悪いのか体が揺れに合わせて浮いたり落ちたり繰り返し、そろそろ吐きそうだ。
目隠しに手枷足枷ついでに猿轡。身動きが取れない俺はガラガラガッシャンゴットンゴットンという雑音の合間にある人の声に耳を傾けた。
「こんな森にまさかこんな上玉が落ちてるとはな」
「どこかの奴隷が逃げてきたんじゃねぇのか?わざわざ黒に染めるなんてよほどの“神子”狂いなんだろうよ」
「上にバレりゃ縛り首もんだろうになぁ」
「そんなヤツを売り飛ばそうとしてる俺達もだろうが」
「違いねえ!」
ギャハハハハ、なんて下品な笑い声。
少し頭を整理しよう。
あの幻想的な泉から落ちた?俺は見知らぬ森の入り口付近にいた。
何故入り口だってわかるか?多少森の中に入ってたけど、木々の向こうに道が見えてたしな。反対を向けば先に行くほど薄暗くなっていたから、必然的に明るい方へ向かって歩き出したわけだ。
そしたら厳ついオッサン達と偶然出くわして。居場所と道を聞こうと思ったらあっという間に捕まった。
見事な早業だったぜ……。
(物理防御ペラペラとか書いてあったもんな……)
あの謎のボードを信じるならば、だ。オッサンから鳩尾に一撃食らって気絶してこの状況だから、間違ってない気もする。
オッサン達は俺が目を覚ましたと気付いていないらしく、まだケタケタと下品に笑い合っていたんだけど。
「な、なんだ!!?」
不意にガッタン!と大きな振動と共に馬車が止まる。
何だ、は俺の台詞なんですけどー!
何せ外からは
「くそ!何でここを通るのがバレたんだ!」
「大人しくしろ!抵抗するやつは斬り捨てる!!」
「うるせぇ!捕まってたまるか!」
ガシャ、ドン、ガン、キィン――
ありとあらゆる物音と怒声が響き渡っている。
ホントに何なんだよ!誰か教えてー!!
「くそがっ!!」
どこかの女芸人みたいな台詞と共にポイっ、と何かが投げ込まれた気配がした。
(何……?)
次いでパチパチと聞こえるその音と漂ってくる煙と臭い。
これって……
(えぇぇぇ――――――!!!!これ燃えてませんか――――――!!!?)
目隠しで見えないけど多分そんなに広くない荷馬車の中、体を熱が撫でていく。
嘘だろ、誰か助けて――――!!!
そんな心の声が聞こえたんだろうか。ガシャガシャと騒がしい金属音にギシリと荷車の床が軋む音。
「無事か!」
俺を抱き起こしたがっしりとした腕は固い金属で覆われているのか背中が痛い。あと熱い。
多分これあれだよね。炎で煽られて金属も熱を持ってるやつだよね。は、早く逃げないと俺もろとも蒸し焼きになっちゃう!見知らぬ誰か!俺を連れて早く逃げて!!置いていけ、なんて言わないぞ!俺もここで焼け死にたくないからな!
ギシギシガシャガシャ、と騒がしい物音の後焦げた臭いや肌を焦がす熱が遠ざかる。
あぁ、良かった……。助かった……。わけのわからないまま丸焦げなんて絶対嫌だもんな。
「おい、お前!生きているか!?」
安堵のあまり力の抜けた体はもう指一本動かない。
(どこのどなたか存じませんが、助けてくれてありがとうございます……)
でも何がどうしてこうなったのか全くわからない俺の脳みそは、意識を閉ざす事でこの現実から逃げ出したのであった。
◇
「ん……」
何だろう。体が……というか尻が痛い。ついでに上下に揺れる振動で気持ちが悪い。俺はどうしたんだっけ……??
「止まれ」
急に耳元で聞こえた声に驚いて顔をあげる。ヒヒン、と聞こえたのはどう聞いても馬の声。しかし見上げた先にあったのは全く見知らぬ男の顔だった。
え、誰このイケメン。
風にさらさら揺れる銀髪。アイスブルーの瞳は感情を出さずに俺を見下ろしている。唇の左側にある黒子が何かエロく見えるのはその整った顔のせいか。
というか俺は何故このイケメンに抱き抱えられてるんだろう。
再びヒヒン、と嘶く馬を宥めるように撫でたその動きで抱き抱えられていた俺の体も揺れてジャラリ、と耳障りな音がして――
(お、思い出した……!!!)
そうだ、俺は変なおっさん達に捕まったんだった!しかも危うく生きたまま焼き殺されるところだったんだ!
「大丈夫か」
思い出したら急に震えが来た。
震えに合わせて微かにチャリチャリ音をたてる鎖が否応なしに現実を突き付けてくる。
「おい、お前。大丈夫か」
大丈夫かって?大丈夫じゃねぇよ!こっちは死にかけたんだぞ!いや、もしかしたら一度死んでるのかもだけど、でも今生きてるからそこは置いといて。
俺がうんともすんとも言わないからか、イケメンは僅かに眉を寄せる。怒ったのかと思えば、器用に唇でグローブを咥えて外し俺の瞼をその大きな手の平で塞いだ。
何々!?見えなくなると余計怖いんだけど!!さっきも目隠しされて暗闇の中で焼かれかけたんだし!!
「や……っ」
小さく溢れた声は掠れてて、イケメンに届いたのかわからない。でもイケメンは一旦手の平を避けると俺の瞳を覗き込んだ。
「ここはもう安全だ。いい子だからもう少し寝ていろ」
冷たく見えた瞳を細めてふわりと笑う。その手が再び瞼に掛かり、それから口元に当てられる。いつの間にかその手の平には爽やかな甘い香りを振り撒く粉末が。その甘い香りを認識した途端、あれ、と思う間もなくまたも俺の意識はなくなった。
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