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第一章 異世界に来ちゃった
怖い夢
皆へのお礼を後で返すとは言えディカイアスのポケットマネーから出してもらうのは何か違うかな、と思って結局屋台で食い歩きをして帰路に着いた。
でも今日のお金もちゃんと返すからね!もしくは割り勘ね!
あとはとりあえずみんなに何あげるか何となく候補が出来たから収穫ありだ。
ローゼンには砥石。ディカイアスに聞いたら、騎士団で砥石も支給されてるけど今日俺達が行った店の砥石はそれより質が良いやつなんだって。
ローゼンはいつも部屋に戻ると剣の手入れしてるし、良いかな、って思って。フライパンと迷ったんだけど料理する人って道具にもこだわりあったりするし、それならディカイアスお墨付きの砥石の方が良さそう。
そのディカイアスには……すごい悩んだけど髪をまとめる紐にしようと思う。雑貨屋でディカイアスの目の色に良く似た糸見つけたし、あれで組み紐作ってあげよう、って。意外とそういうの得意なんだよな。
パルティエータには美味しいコーヒー。普段自分では買わないようなちょっとお高いやつ!俺もコーヒー好きだし良く買ってたけど、独り暮らしだと嗜好品に回せるお金が少なくて安物ばっかりだったんだ。
聞けばパルティエータも、主に買いに出る暇がなくて騎士団の売店で売ってるコーヒーで我慢してるって言うし。っていうか売店なんてあるんだな……。知らなかった。
パーピュアはな~。個別に渡すとレイアゼシカの嫉妬で
「僕がえらい目に遭う!」
って怒りそうだから無難にお茶菓子かな。みんなでどうぞ、的な雰囲気で。
うんうん。これで行こう!あとは俺が頑張ってお金を稼げるようになるだけだ!
町に出るときは何もなかったけど、騎士領に戻る前には検問で止められた。ディカイアスがいたから顔パスだったけど、そうだよな。この先機密事項満載な騎士団領と、貴族の屋敷と王宮があるんだもん。検問は相当厳しいよな。
その門を抜けて日が傾きつつある空を見上げる。
朝に出掛けてもう夕方かぁ。長いこと連れ回しちゃったな。
「ディカイアス、今日はありがとう。楽しかった!」
「そうか。それは良かった」
あんまり表情を変えないディカイアスがふ、と微笑んでくれる。
あぁぁぁぁ!!!ホントに…!!ホントに顔が良い…!!!
しっかり訓練頑張って旅に出てお金貰えるようになったら、絶対みんなにお礼をするからね。最初はそんなに高いもの買えないだろうから旅行のお土産程度の物しか渡せないけど、たくさん貯まったらその時はきっちり改まったものをあげたいな。
何て思いながら馬車に揺られてるうちに俺は寝てしまったようで夢を見た。
雷が鳴る荒天の中、支柱が折れて半分破れながら靡くあの旗は第一騎士団の獅子の紋章。その下には沢山の塊が……いや、あれは人間だ。第一騎士団のみんなが折り重なるように倒れてるんだ。
――何…、何で…?
ビチャ、と足元で鳴るのは雨水じゃない赤い液体。酷く鉄臭く、吐き気が込み上げるほど。
最後まで剣を握って離さなかったらしい腕が、誰かの足が、あちらこちらに落ちている。
ハッ、と気付くとすぐ近くにうつ伏せで倒れる誰かの姿が。あのむっちり具合はローゼンか。しかしその周りはすでに血溜まりで真っ赤に染まり怖くて近寄れない。
その近くに血でところどころ赤く染まった銀糸が見える。あれはディカイアスではないのか。しかし腰から下が見当たらない。
あのローブはティエの物だ。腕は見えているのに他の箇所にあるべき膨らみがない。
あれは…?パーピュア?あっちはレイアゼシカ…?
見知った顔が光を喪った虚ろな瞳を天に向けている。
――な、んだ、これ……
ひっ、と喉からひきつった声が漏れた。夢だ。こんなの夢だ。起きなきゃ。早く。早く早く早く!!!!
「……!……ナオ!スナオ!!」
「!!!?」
ハッと目を開けると、目の前にはディカイアスの綺麗な顔が。
「どうした。大丈夫か」
ひ、ひ、とひきつった自分の息遣いは夢と同じ。怖くなって思わずその体に抱き付いた。
(あったかい……)
耳に感じる吐息。ふんわり漂うバニラの香り。躊躇いがちに背中をさする暖かな手の平。
大丈夫。ちゃんと生きてる。あれは夢だ。
「ご……ごめん……。何か、変な夢見てたみたい……」
「そのまま上に乗っていろ。もう寮に着く」
「え……わぁ!!?」
俺!いつの間にかディカイアスの膝の上に乗っちゃってるじゃん!!!ごごごごごめん!!!!
「お、おも、重いだろ!?ごめん!!!」
「軽い」
あぁぁ!!そうだった!朝も軽い軽い言われてたんだった!
いやいや、今はそんな事より!
「降ります……!」
「構わん。どうせすぐ着く」
「いや、でも膝の上とか……!」
俺は子供か!?…まぁ腕に抱えられて街中歩き回ってる時点で今更感ハンパないけども。
「良いからこのままでいろ」
「ひぇぇぇ……!!」
イ、イケメーン!!!
俺が跨ぐ体勢から横抱きに抱え直されて、ぎゅ、っと抱き締められれば必然的に俺の頭はディカイアスの首元だ。ディカイアスがちょっと顔の向き変えたらちゅーしちゃう位置じゃん!
くぅぅ……!絶対この人も百戦錬磨だよな!!このモテ男めー!!他意はないってわかってても、何だかドキドキするだろー!!
もうそっちの衝撃の方が強すぎて、見てた夢はすぐに忘れてしまった。
でも今日のお金もちゃんと返すからね!もしくは割り勘ね!
あとはとりあえずみんなに何あげるか何となく候補が出来たから収穫ありだ。
ローゼンには砥石。ディカイアスに聞いたら、騎士団で砥石も支給されてるけど今日俺達が行った店の砥石はそれより質が良いやつなんだって。
ローゼンはいつも部屋に戻ると剣の手入れしてるし、良いかな、って思って。フライパンと迷ったんだけど料理する人って道具にもこだわりあったりするし、それならディカイアスお墨付きの砥石の方が良さそう。
そのディカイアスには……すごい悩んだけど髪をまとめる紐にしようと思う。雑貨屋でディカイアスの目の色に良く似た糸見つけたし、あれで組み紐作ってあげよう、って。意外とそういうの得意なんだよな。
パルティエータには美味しいコーヒー。普段自分では買わないようなちょっとお高いやつ!俺もコーヒー好きだし良く買ってたけど、独り暮らしだと嗜好品に回せるお金が少なくて安物ばっかりだったんだ。
聞けばパルティエータも、主に買いに出る暇がなくて騎士団の売店で売ってるコーヒーで我慢してるって言うし。っていうか売店なんてあるんだな……。知らなかった。
パーピュアはな~。個別に渡すとレイアゼシカの嫉妬で
「僕がえらい目に遭う!」
って怒りそうだから無難にお茶菓子かな。みんなでどうぞ、的な雰囲気で。
うんうん。これで行こう!あとは俺が頑張ってお金を稼げるようになるだけだ!
町に出るときは何もなかったけど、騎士領に戻る前には検問で止められた。ディカイアスがいたから顔パスだったけど、そうだよな。この先機密事項満載な騎士団領と、貴族の屋敷と王宮があるんだもん。検問は相当厳しいよな。
その門を抜けて日が傾きつつある空を見上げる。
朝に出掛けてもう夕方かぁ。長いこと連れ回しちゃったな。
「ディカイアス、今日はありがとう。楽しかった!」
「そうか。それは良かった」
あんまり表情を変えないディカイアスがふ、と微笑んでくれる。
あぁぁぁぁ!!!ホントに…!!ホントに顔が良い…!!!
しっかり訓練頑張って旅に出てお金貰えるようになったら、絶対みんなにお礼をするからね。最初はそんなに高いもの買えないだろうから旅行のお土産程度の物しか渡せないけど、たくさん貯まったらその時はきっちり改まったものをあげたいな。
何て思いながら馬車に揺られてるうちに俺は寝てしまったようで夢を見た。
雷が鳴る荒天の中、支柱が折れて半分破れながら靡くあの旗は第一騎士団の獅子の紋章。その下には沢山の塊が……いや、あれは人間だ。第一騎士団のみんなが折り重なるように倒れてるんだ。
――何…、何で…?
ビチャ、と足元で鳴るのは雨水じゃない赤い液体。酷く鉄臭く、吐き気が込み上げるほど。
最後まで剣を握って離さなかったらしい腕が、誰かの足が、あちらこちらに落ちている。
ハッ、と気付くとすぐ近くにうつ伏せで倒れる誰かの姿が。あのむっちり具合はローゼンか。しかしその周りはすでに血溜まりで真っ赤に染まり怖くて近寄れない。
その近くに血でところどころ赤く染まった銀糸が見える。あれはディカイアスではないのか。しかし腰から下が見当たらない。
あのローブはティエの物だ。腕は見えているのに他の箇所にあるべき膨らみがない。
あれは…?パーピュア?あっちはレイアゼシカ…?
見知った顔が光を喪った虚ろな瞳を天に向けている。
――な、んだ、これ……
ひっ、と喉からひきつった声が漏れた。夢だ。こんなの夢だ。起きなきゃ。早く。早く早く早く!!!!
「……!……ナオ!スナオ!!」
「!!!?」
ハッと目を開けると、目の前にはディカイアスの綺麗な顔が。
「どうした。大丈夫か」
ひ、ひ、とひきつった自分の息遣いは夢と同じ。怖くなって思わずその体に抱き付いた。
(あったかい……)
耳に感じる吐息。ふんわり漂うバニラの香り。躊躇いがちに背中をさする暖かな手の平。
大丈夫。ちゃんと生きてる。あれは夢だ。
「ご……ごめん……。何か、変な夢見てたみたい……」
「そのまま上に乗っていろ。もう寮に着く」
「え……わぁ!!?」
俺!いつの間にかディカイアスの膝の上に乗っちゃってるじゃん!!!ごごごごごめん!!!!
「お、おも、重いだろ!?ごめん!!!」
「軽い」
あぁぁ!!そうだった!朝も軽い軽い言われてたんだった!
いやいや、今はそんな事より!
「降ります……!」
「構わん。どうせすぐ着く」
「いや、でも膝の上とか……!」
俺は子供か!?…まぁ腕に抱えられて街中歩き回ってる時点で今更感ハンパないけども。
「良いからこのままでいろ」
「ひぇぇぇ……!!」
イ、イケメーン!!!
俺が跨ぐ体勢から横抱きに抱え直されて、ぎゅ、っと抱き締められれば必然的に俺の頭はディカイアスの首元だ。ディカイアスがちょっと顔の向き変えたらちゅーしちゃう位置じゃん!
くぅぅ……!絶対この人も百戦錬磨だよな!!このモテ男めー!!他意はないってわかってても、何だかドキドキするだろー!!
もうそっちの衝撃の方が強すぎて、見てた夢はすぐに忘れてしまった。
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