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第二章 浄化の旅
カラスもどき
「スナオ様!」
俺を抱えたハーロットがバッと後ろに跳ぶ。
「うぅ…っ、気持ち悪いぃ…!」
懸命に瘴気を防ごうとするけど圧縮されてたらしい、辺りが一気に瘴気だらけになるくらいの量にビックリしすぎてうまくいかない。
何度かゲロゲロ吐いてガンガンと痛む頭と目眩から逃れようと一度ギュ、と目を閉じたーーーその瞬間、ふわりと地面から足が浮く。
「ぅえ…っ!!?」
がっちり何かに体を掴まれてる感覚と、目を開けて見た足元の地面がみるみる遠ざかる。
「えぇぇぇぇーーーー!!?」
何事ーーー!!?うわぁ!景色良く見えるー!あ、あっちにテントあるな!あれがグレイブ・アンヘルの野営地かなぁ!?おーい!みんなー!
何て言ってる場合じゃねぇぇぇーー!!
ぐんぐんぐんぐん高度が上がっていって、急激な気圧の差で耳がキーンってなるし、また吐くし。ごめんね、下の人!ゲロばらまいちゃったけど許してね!とりあえずこの状況でまだ意識失ってない俺すごくない!?
『アぁぁァクマァはぁぁ…キィえろォォォ…っ!!!』
「うぐ…っ」
何個もの声が重なるように聞こえるけど、この声はナピリアートの声だ。
何とか体を捩って見上げたそこには瘴気を纏った真っ黒な…カラスに禍々しさをプラスしたような鳥が一羽。
まさか…まさかこいつが喋った…?
『まがいものォォォ…!シネェェェ!!!』
「ひぇ…!!?」
真っ黒な嘴から瘴気と共に呪詛のような声を出しながら、ポイっと。本当にゴミでも捨てるかのようにポイっと、何もない空中に投げ出される。
一瞬の間の後重力に従って落ちる体。
「ーーーーーッ!!?」
悲鳴も上げられない風圧。さっきと逆にぐんぐん近付いてくる地面。
ヤバいヤバいヤバい!!!ヤバいってもんじゃないくらいヤバい!!!このまま叩き付けられたら木っ端微塵だ…っ!!!
何か!何かしないと…!どうにかしてこの落下を止めないと!!!……どうやってーーーー!!?
不意にポムッと小さな破裂音がして、目も鼻もない茶色いクッキー人形みたいなヤツが鼻先10センチに現れて固まる。
何じゃこりゃあぁぁぁーーー!!?
“お水…”
水!?水が何だって!?こっちは絶賛落下中なんだよぉぉぉーーーー!!
“お水…ぽよんぽよんのお水…”
ぽよんぽよんのお水って何だーーー!!!
そこでハッとする。そうか!水か!
あの泉に浮いてたみたいな触れる水!ぽよんぽよんの水!!俺が乗れるくらいのやつ!!!
「水風船みたいなやつー!!」
一番高い建物の屋根を越える辺りでぽよんっ、と出てきた水にぼいーんっ、と跳ね返されて、また新たに出したぽよ水にぼいーんっ、そしてまたぼいーんっ、と何度も繰り返してる内に落下の勢いがかなり弱まって、最後にぼいーんっ、と跳ね返された後ドサリ、と背中に軽い衝撃が来た。
「大丈夫!?スナオ!」
「ティエ…?」
ぎゅぅっと瞑ってた目を開けると、そこには俺を抱き止めてくれて、焦った表情をしたティエがいた。あぁ、良かった。ティエも無事だったんだな。
「あいたた…」
「…っ!怪我してるじゃない!!」
何か痛くて脇腹付近を触った手の平にぬるりとした感触があるな、と思ったらそれは自分の血で結構ガッツリ出血してる。
そっか、あのカラスもどきの足で掴まれた時か。
「うー…痛いぃ…」
治癒魔法は自分自身は癒せない。今ここにいる面子じゃあ治癒は出来ない。仕方ないから魔術師が追い付くの待つしかないなあ。結構痛いけど…。
上空を旋回してたカラスもどきがまた低空飛行で襲ってくるのを俺を抱いたままのティエが飛び退いて避け、敵が入って来れなさそうな狭い建物の中でボタン弾き跳ばしながら服を脱がされる。
「あの野郎…ッ」
食い込んだ爪の痕からドクドクと血が溢れて来てて、ティエが押さえる先から布が真っ赤に染まっていく。
「ティエ…、外、行ってあげて…!」
外から誰かの悲鳴が聞こえた。近場にいた騎士団は徐々に集まってきてる。その内魔術師も来るだろうからそれまでの辛抱だ。でも死んでしまったらもう手遅れ。だから。
「ティエ!誰も死なせたくない…!外行って!!」
「…っ、くそ…ッ!」
一つ悪態をついて、俺の傷口を出来るだけきつく縛って、流れるようにキスして。
「お前も死んだら終わりだからな!!わかってるか!?」
怒鳴られたけど。
「うん、わかってる。俺は死なない。だからみんなを助けて!」
一瞬の逡巡のあと駆け出して行く背中を見送る。
あぁ、これでとりあえず外はみんなが来るまできっと大丈夫。ティエ強いもんな。俺は死なないように出来るだけじっとしとこう。ーーー何て思ってたら。
ドガァァン、と凄まじい音と共に屋根がぶっ飛んで思わず目が点になった。
しかもぬぅ、と現れたのがあのカラスもどきの顔で死ぬほどびびった。
『みぃぃぃつけたぁぁぁぁ…』
ひぇぇぇぇ!!?あれ!?狙われてるの俺だった!!?そっか、なら俺が狙われてる間はみんな無事だよな!…俺が元気だったらなーーー!!?
正直今動けない。認識したら途端にズッキンズッキン痛み出した傷口の所為で集中出来ないし、今魔法を使える気がしない。
外からティエ達が攻撃するんだけど、羽でぶっ飛ばし上空に舞い上がってはまた俺のいる建物を壊しにかかる。
ピンチ再びーーーー!!!?
俺を抱えたハーロットがバッと後ろに跳ぶ。
「うぅ…っ、気持ち悪いぃ…!」
懸命に瘴気を防ごうとするけど圧縮されてたらしい、辺りが一気に瘴気だらけになるくらいの量にビックリしすぎてうまくいかない。
何度かゲロゲロ吐いてガンガンと痛む頭と目眩から逃れようと一度ギュ、と目を閉じたーーーその瞬間、ふわりと地面から足が浮く。
「ぅえ…っ!!?」
がっちり何かに体を掴まれてる感覚と、目を開けて見た足元の地面がみるみる遠ざかる。
「えぇぇぇぇーーーー!!?」
何事ーーー!!?うわぁ!景色良く見えるー!あ、あっちにテントあるな!あれがグレイブ・アンヘルの野営地かなぁ!?おーい!みんなー!
何て言ってる場合じゃねぇぇぇーー!!
ぐんぐんぐんぐん高度が上がっていって、急激な気圧の差で耳がキーンってなるし、また吐くし。ごめんね、下の人!ゲロばらまいちゃったけど許してね!とりあえずこの状況でまだ意識失ってない俺すごくない!?
『アぁぁァクマァはぁぁ…キィえろォォォ…っ!!!』
「うぐ…っ」
何個もの声が重なるように聞こえるけど、この声はナピリアートの声だ。
何とか体を捩って見上げたそこには瘴気を纏った真っ黒な…カラスに禍々しさをプラスしたような鳥が一羽。
まさか…まさかこいつが喋った…?
『まがいものォォォ…!シネェェェ!!!』
「ひぇ…!!?」
真っ黒な嘴から瘴気と共に呪詛のような声を出しながら、ポイっと。本当にゴミでも捨てるかのようにポイっと、何もない空中に投げ出される。
一瞬の間の後重力に従って落ちる体。
「ーーーーーッ!!?」
悲鳴も上げられない風圧。さっきと逆にぐんぐん近付いてくる地面。
ヤバいヤバいヤバい!!!ヤバいってもんじゃないくらいヤバい!!!このまま叩き付けられたら木っ端微塵だ…っ!!!
何か!何かしないと…!どうにかしてこの落下を止めないと!!!……どうやってーーーー!!?
不意にポムッと小さな破裂音がして、目も鼻もない茶色いクッキー人形みたいなヤツが鼻先10センチに現れて固まる。
何じゃこりゃあぁぁぁーーー!!?
“お水…”
水!?水が何だって!?こっちは絶賛落下中なんだよぉぉぉーーーー!!
“お水…ぽよんぽよんのお水…”
ぽよんぽよんのお水って何だーーー!!!
そこでハッとする。そうか!水か!
あの泉に浮いてたみたいな触れる水!ぽよんぽよんの水!!俺が乗れるくらいのやつ!!!
「水風船みたいなやつー!!」
一番高い建物の屋根を越える辺りでぽよんっ、と出てきた水にぼいーんっ、と跳ね返されて、また新たに出したぽよ水にぼいーんっ、そしてまたぼいーんっ、と何度も繰り返してる内に落下の勢いがかなり弱まって、最後にぼいーんっ、と跳ね返された後ドサリ、と背中に軽い衝撃が来た。
「大丈夫!?スナオ!」
「ティエ…?」
ぎゅぅっと瞑ってた目を開けると、そこには俺を抱き止めてくれて、焦った表情をしたティエがいた。あぁ、良かった。ティエも無事だったんだな。
「あいたた…」
「…っ!怪我してるじゃない!!」
何か痛くて脇腹付近を触った手の平にぬるりとした感触があるな、と思ったらそれは自分の血で結構ガッツリ出血してる。
そっか、あのカラスもどきの足で掴まれた時か。
「うー…痛いぃ…」
治癒魔法は自分自身は癒せない。今ここにいる面子じゃあ治癒は出来ない。仕方ないから魔術師が追い付くの待つしかないなあ。結構痛いけど…。
上空を旋回してたカラスもどきがまた低空飛行で襲ってくるのを俺を抱いたままのティエが飛び退いて避け、敵が入って来れなさそうな狭い建物の中でボタン弾き跳ばしながら服を脱がされる。
「あの野郎…ッ」
食い込んだ爪の痕からドクドクと血が溢れて来てて、ティエが押さえる先から布が真っ赤に染まっていく。
「ティエ…、外、行ってあげて…!」
外から誰かの悲鳴が聞こえた。近場にいた騎士団は徐々に集まってきてる。その内魔術師も来るだろうからそれまでの辛抱だ。でも死んでしまったらもう手遅れ。だから。
「ティエ!誰も死なせたくない…!外行って!!」
「…っ、くそ…ッ!」
一つ悪態をついて、俺の傷口を出来るだけきつく縛って、流れるようにキスして。
「お前も死んだら終わりだからな!!わかってるか!?」
怒鳴られたけど。
「うん、わかってる。俺は死なない。だからみんなを助けて!」
一瞬の逡巡のあと駆け出して行く背中を見送る。
あぁ、これでとりあえず外はみんなが来るまできっと大丈夫。ティエ強いもんな。俺は死なないように出来るだけじっとしとこう。ーーー何て思ってたら。
ドガァァン、と凄まじい音と共に屋根がぶっ飛んで思わず目が点になった。
しかもぬぅ、と現れたのがあのカラスもどきの顔で死ぬほどびびった。
『みぃぃぃつけたぁぁぁぁ…』
ひぇぇぇぇ!!?あれ!?狙われてるの俺だった!!?そっか、なら俺が狙われてる間はみんな無事だよな!…俺が元気だったらなーーー!!?
正直今動けない。認識したら途端にズッキンズッキン痛み出した傷口の所為で集中出来ないし、今魔法を使える気がしない。
外からティエ達が攻撃するんだけど、羽でぶっ飛ばし上空に舞い上がってはまた俺のいる建物を壊しにかかる。
ピンチ再びーーーー!!!?
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