猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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ラファエロ編

20.嫉妬心

「久しぶりに王宮で行われた舞踏会というだけあって、かなり集まりましたね」

あまり目立たないように玉座の置かれた場所のすぐ近くに控えるダンテたちの許に移動したラファエロはほっと溜息をつきながら呟いた。

ふと広間の方に目をやると、犇めき合う貴族たちの中にリリアーナの姿が認められた。
ダークブロンドや栗毛、亜麻色などの髪の色が多いキエザでは、クラリーチェの銀髪ほどではないにしても、リリアーナのようなストロベリーブロンドもなかなか見かけない。
隣には彼女の両親であるグロッシ侯爵夫妻や兄のウルバーノもいるために、大勢の中でも目につきやすかった。

そして案の定、本来彼女の隣にあるべき男の姿は見当たらない。
殆どの夜会で、リリアーナが婚約者であるジュストと一緒にいるところを見かけたことがなかった。
共にいたとしても、ジュストは口ではリリアーナを褒めておきながらリリアーナに視線を向けることもしなかったし、リリアーナは明らかに作り笑いと分かる笑顔を張り付けているだけだった。
多くの貴族たちは気が付いていないようだったが、互いに互いを嫌っているというのは一目瞭然だった。

ラファエロは一も通りの穏やかな笑顔を浮かべながら、彼女をじっと観察する。

エドアルドとクラリーチェがゆっくりと正面を向くと、可憐な見た目に、強い意志の宿った紺碧の瞳は輝きを失ってはいなかった。
だが、いつもと異なっているのはその表情だった。
まるで宝物でも見つけたかのような、どこか恍惚とした表情を浮かべて一点を見つめていることに気がつく。

「…………?」

ラファエロはその視線を辿り、そして、凍りついた。

「……………っ!」

その先にいた人物。………それは、最愛の兄・エドアルドだった。
その事に気がついた途端にラファエロは指先が冷たくなっていく感覚を覚えてギュッと両手を握りしめた。

そして、込み上げてくる絶望を静かな吐息とともに吐き出した。
それでも喉の奥に苦々しいものが残っていて、まるで息が詰まったようだとラファエロは思った。

彼女がジュストの婚約者だと知った時とは比べ物にならない位の様々な感情が、ラファエロを苛んだ。

だが、暫く兄に対する嫉妬心を抑え込みながら彼女の様子を見ていると、視線の行き着く先が僅かに違うことに気がつく。
リリアーナはエドアルドではなく、その隣にいるクラリーチェに熱い視線を向けていたのだ。
今度は一瞬ぎょっとするが、あれはエドアルドやクラリーチェがお互いを見つめるような、いわゆる『恋する者の眼差し』ではなく、単純な憧れ、もっと言えば崇拝に近いものを感じる。

「………もう少し、様子を見てみましょうか」

ラファエロは誰にも聞こえない位の小さな声で、独りそう呟いたのだった。
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