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ラファエロ編
52.同意
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怯え切った船頭達があの日フェラーラ侯爵に命じられて行ったことを正直に明かすが、予想通りに侯爵はそれを真っ向から否定した。
初めから証人を用意した位では素直に罪を認めるはずがないと思ってはいたが、その予想を裏切らない反応に、呆れることすらも出来なかった。
そんなフェラーラ侯爵をどのようにエドアルドは裁くのだろうということにしか期待はない。
そんな中、フェラーラ侯爵夫人の口から証人の船頭達を「下賤の民」と蔑む言葉が飛び出したのを聞いて、ラファエロは溜息をついた。
それと同時にエドアルドの顔から一切の表情は消え、冷然とした空気が漂う。
エドアルドは幼い頃、国を統べる者としてあるべき姿を、その心構えを国王である伯父ヴァレリオが直々に教わっていたらしい。
国とは、土地と、民と、統治する者で成り立っている。そのどれが欠けても、国は成り立たないのだとエドアルドは何度も口にしていた。その礎の一つである民を侮辱した事で、エドアルドの神経を逆撫でしてしまったということに、侯爵夫人は気がついてはいないだろう。
「本当に愚か者はどこまでも愚かです。兄上の神経を逆撫でするような事をわざわざ口にしなくてもいいのに、と思いませんか?そんなに死にたいのでしょうか………」
ラファエロは侯爵夫人を軽蔑しながらも、いつもどおり穏やかな表情を浮かべた。
「無能な貴族程、己の果たすべき役割を忘れ、深い欲を満たすために奔走するものです。………全く、滑稽ですよね。貴族というだけで、何をしても許されると思っているのでしょうか?」
畳み掛けるように囁くと、リリアーナはふっと笑みを浮かべた。
「あの程度の頭の出来なら、そう考えていてもおかしくないかもしれませんわよ?」
可愛らしい彼女の唇が紡ぐのは辛辣な言葉で、それが堪らなく心地よく感じるのは、やはり自分の中の彼女への気持ちがそうさせるのかとラファエロは考える。
「ふふ、中々言いますね。………以前から貴女とは話が合うような気がしていたんですよ。どうやら私の見込みは間違っていなかったようですね」
「あら、奇遇ですわね。私もそう思っていましたの」
リリアーナから同意の言葉が飛び出して、ラファエロは密かに満足気な笑みを浮かべたが、その感情に浸る間もなく、フェラーラ侯爵夫人が、悲鳴にも似た、耳を劈くような金切り声で、無様に保身の為の言い訳を始めた。
しかし、そんな侯爵夫人に救いの手を差し伸べようとする者は誰一人としておらず、ブラマーニ公爵家の面々………侯爵夫人が長年仕えてきた主ディアマンテも知らん顔でそっぽを向いていた。
初めから証人を用意した位では素直に罪を認めるはずがないと思ってはいたが、その予想を裏切らない反応に、呆れることすらも出来なかった。
そんなフェラーラ侯爵をどのようにエドアルドは裁くのだろうということにしか期待はない。
そんな中、フェラーラ侯爵夫人の口から証人の船頭達を「下賤の民」と蔑む言葉が飛び出したのを聞いて、ラファエロは溜息をついた。
それと同時にエドアルドの顔から一切の表情は消え、冷然とした空気が漂う。
エドアルドは幼い頃、国を統べる者としてあるべき姿を、その心構えを国王である伯父ヴァレリオが直々に教わっていたらしい。
国とは、土地と、民と、統治する者で成り立っている。そのどれが欠けても、国は成り立たないのだとエドアルドは何度も口にしていた。その礎の一つである民を侮辱した事で、エドアルドの神経を逆撫でしてしまったということに、侯爵夫人は気がついてはいないだろう。
「本当に愚か者はどこまでも愚かです。兄上の神経を逆撫でするような事をわざわざ口にしなくてもいいのに、と思いませんか?そんなに死にたいのでしょうか………」
ラファエロは侯爵夫人を軽蔑しながらも、いつもどおり穏やかな表情を浮かべた。
「無能な貴族程、己の果たすべき役割を忘れ、深い欲を満たすために奔走するものです。………全く、滑稽ですよね。貴族というだけで、何をしても許されると思っているのでしょうか?」
畳み掛けるように囁くと、リリアーナはふっと笑みを浮かべた。
「あの程度の頭の出来なら、そう考えていてもおかしくないかもしれませんわよ?」
可愛らしい彼女の唇が紡ぐのは辛辣な言葉で、それが堪らなく心地よく感じるのは、やはり自分の中の彼女への気持ちがそうさせるのかとラファエロは考える。
「ふふ、中々言いますね。………以前から貴女とは話が合うような気がしていたんですよ。どうやら私の見込みは間違っていなかったようですね」
「あら、奇遇ですわね。私もそう思っていましたの」
リリアーナから同意の言葉が飛び出して、ラファエロは密かに満足気な笑みを浮かべたが、その感情に浸る間もなく、フェラーラ侯爵夫人が、悲鳴にも似た、耳を劈くような金切り声で、無様に保身の為の言い訳を始めた。
しかし、そんな侯爵夫人に救いの手を差し伸べようとする者は誰一人としておらず、ブラマーニ公爵家の面々………侯爵夫人が長年仕えてきた主ディアマンテも知らん顔でそっぽを向いていた。
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