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結婚編
23.欲求不満?
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「今日は動き回ってお疲れでしょう」
「ええ。でも、物凄く楽しかったわ」
部屋に戻るとエラが湯浴みの支度をして待っていた。
「お嬢様のお顔を見れば、分かります。とても幸せそうですもの」
ふふ、と含み笑いをしながら、エラは丁寧にリリアーナの髪を洗ってくれる。
グロッシ侯爵邸から持参してきたお気に入りの香油を入れた湯船にゆったりと浸かると、全身から力が抜けていくようだった。
リリアーナの体を気遣ったエラは丁寧にマッサージを施し、リリアーナの身支度を整えるとそそくさと退散していった。
「………本当に、夢のような一日だったわ」
生き生きとしたラファエロの笑顔を思い出しながら、リリアーナは寝台に横になり、溜息を零した。
溜息をつくと幸せが逃げる、という古くからの言い伝えがあるが、溜息をつかなければ、幸せで胸が破裂してしまいそうだとリリアーナは思う。
ゴブラン織りのクッションを手にしてぎゅっと抱き締めていると、先程のラファエロの言葉が脳裏に浮かんできた。
「~~~~~っ!」
ラファエロの指摘する『甘い香り』とやらはリリアーナにはさっぱり分からない。
そもそもそんな体臭などあるのだろうか。
だが、あの煌めくエメラルド色の瞳に見つめられるだけで、体が火照っていくようだった。
「………葡萄酒を、飲みすぎたのかしら」
調子が狂う、というよりも、自分が自分でなくなるような気がした。
あの吐息を、羽が触れるような優しい指先を思い出すだけで、やるせないもどかしさがリリアーナを襲う。
体の芯が疼くような、胸の奥が甘く痛むようなその感覚は、大好きな恋物語を読んでいるときのそれに似ている気がした。
「あのくらいでは、酔ったことなどありませんでしたのに………」
空いている方の手でそっと頬に触れると、自分が思っていた以上に熱くなっているのを感じる。
部屋の中の静寂が深まれば深まるほどに、リリアーナの心は散り散りに乱れていく。
湯上りだから、とお風呂のせいにするにはあまりにも時間が経ちすぎている。
だからリリアーナは、無理矢理晩餐の席で飲んだ葡萄酒のせいにした。
目を閉じていても、開いていてもその感覚ば消えることはない。
寧ろより強く思い出してしまうようだった。
「………嫌だわ。これでは私、まるで欲求不満みたいではないの?」
ほう………と切なげにもう一度溜息をつくと、リリアーナは早く眠りについてしまおうとぎゅっと強く目を閉じたのだった。
「ええ。でも、物凄く楽しかったわ」
部屋に戻るとエラが湯浴みの支度をして待っていた。
「お嬢様のお顔を見れば、分かります。とても幸せそうですもの」
ふふ、と含み笑いをしながら、エラは丁寧にリリアーナの髪を洗ってくれる。
グロッシ侯爵邸から持参してきたお気に入りの香油を入れた湯船にゆったりと浸かると、全身から力が抜けていくようだった。
リリアーナの体を気遣ったエラは丁寧にマッサージを施し、リリアーナの身支度を整えるとそそくさと退散していった。
「………本当に、夢のような一日だったわ」
生き生きとしたラファエロの笑顔を思い出しながら、リリアーナは寝台に横になり、溜息を零した。
溜息をつくと幸せが逃げる、という古くからの言い伝えがあるが、溜息をつかなければ、幸せで胸が破裂してしまいそうだとリリアーナは思う。
ゴブラン織りのクッションを手にしてぎゅっと抱き締めていると、先程のラファエロの言葉が脳裏に浮かんできた。
「~~~~~っ!」
ラファエロの指摘する『甘い香り』とやらはリリアーナにはさっぱり分からない。
そもそもそんな体臭などあるのだろうか。
だが、あの煌めくエメラルド色の瞳に見つめられるだけで、体が火照っていくようだった。
「………葡萄酒を、飲みすぎたのかしら」
調子が狂う、というよりも、自分が自分でなくなるような気がした。
あの吐息を、羽が触れるような優しい指先を思い出すだけで、やるせないもどかしさがリリアーナを襲う。
体の芯が疼くような、胸の奥が甘く痛むようなその感覚は、大好きな恋物語を読んでいるときのそれに似ている気がした。
「あのくらいでは、酔ったことなどありませんでしたのに………」
空いている方の手でそっと頬に触れると、自分が思っていた以上に熱くなっているのを感じる。
部屋の中の静寂が深まれば深まるほどに、リリアーナの心は散り散りに乱れていく。
湯上りだから、とお風呂のせいにするにはあまりにも時間が経ちすぎている。
だからリリアーナは、無理矢理晩餐の席で飲んだ葡萄酒のせいにした。
目を閉じていても、開いていてもその感覚ば消えることはない。
寧ろより強く思い出してしまうようだった。
「………嫌だわ。これでは私、まるで欲求不満みたいではないの?」
ほう………と切なげにもう一度溜息をつくと、リリアーナは早く眠りについてしまおうとぎゅっと強く目を閉じたのだった。
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