253 / 269
番外編
騎士団長の恋愛事情(45)
しおりを挟む
それから数日後。
王宮内の一室には国王夫妻と宰相であるカンチェラーラ侯爵、そしてレッジ子爵夫妻とアンナとダンテが揃っていた。
「問題ありませんね」
カンチェラーラ侯爵が一揃えになった書類に目を通し終わり、顔を上げた。
以前は契約書のような紙切れ一枚で手続き出来たが、先王フィリッポの後宮問題の一件から、特に平民を養子として迎える場合は厳しい審査を通らなければ受理されないように手続きの方法を変更したため、その書類を整えるのに時間が掛かったが、審査は滞りなく済んだようだった。
カンチェラーラ侯爵はサインを書類の最後に書き記してから印璽を押し、それをエドアルドへと手渡すと、エドアルドもサインを書き記した。
「……レッジ子爵。ご息女を、大切にな」
「もちろんでございます。この年になって娘がもう一人出来るとは思いもよりませんでしたが……嬉しいものですな」
静かに呟いたエドアルドに対して、レッジ子爵夫妻は穏やかな笑顔を浮かべると、アンナを伴って部屋を出ていく。
「お待ちください、レッジ子爵」
ダンテが慌てて後を追うのを、エドアルドとクラリーチェ、そしてカンチェラーラ侯爵が何とも言えない表情で見送っていた。
「ご息女を……少しだけお誘いしても?」
すると、レッジ子爵は小さく溜息をついた。
「まだ正式に婚約を結んではいないのですから、あまり占領するのはお控えいただきたいところですが……今日は特別ですぞ」
「ありがとうございます」
いたずらっぽく微笑むレッジ子爵に深々と頭を下げると、ダンテはアンナに腕を差し出した。
「少し、風にあたりませんか?」
ほんの少し照れたようなダンテの表情に、アンナははにかみながら彼の手を取った。
ダンテがアンナを連れてきた場所は、つい先日、二人で想いを伝えあった中庭だった。
彼女の歩調に合わせるようにゆったりとした足取りでアンナを導くいたのは、その中庭のやや奥まったところにある銀木犀の木の下だった。
甘やかな香りが辺りに漂い、思わず深呼吸をしたくなる。
「………先日君の髪に飾ったこの花は、銀木犀と言うそうだ」
「存じております」
「では、花言葉も知っているか?」
ダンテは立ち止まってからアンナに向き合うと、彼女の顔を覗き込んだ。
「……花言葉、ですか?」
アンナはきょとんとして数回瞬きをしてからふるふると首を横に振った。
「高潔、謙虚などという意味があるのだそうだ」
いきなり何の話をするのだろうというような、不思議そうな表情を浮かべ、アンナはじっとダンテの話を聞いている。
「……その中に、初恋、あなたの気を引く、そして……唯一の恋というものがあると、妃殿下が教えて下さった」
ダンテは頬を赤らめながら恥ずかしそうに呟いた。
「私は花言葉など馴染みはないし……気にもしていなかったのだが、……図らずもこの花が、君に私の心を伝えていたということが、とても嬉しかったんだ」
栗色の瞳にじっと見つめられると、アンナは胸の鼓動が早まるのを感じた。
王宮内の一室には国王夫妻と宰相であるカンチェラーラ侯爵、そしてレッジ子爵夫妻とアンナとダンテが揃っていた。
「問題ありませんね」
カンチェラーラ侯爵が一揃えになった書類に目を通し終わり、顔を上げた。
以前は契約書のような紙切れ一枚で手続き出来たが、先王フィリッポの後宮問題の一件から、特に平民を養子として迎える場合は厳しい審査を通らなければ受理されないように手続きの方法を変更したため、その書類を整えるのに時間が掛かったが、審査は滞りなく済んだようだった。
カンチェラーラ侯爵はサインを書類の最後に書き記してから印璽を押し、それをエドアルドへと手渡すと、エドアルドもサインを書き記した。
「……レッジ子爵。ご息女を、大切にな」
「もちろんでございます。この年になって娘がもう一人出来るとは思いもよりませんでしたが……嬉しいものですな」
静かに呟いたエドアルドに対して、レッジ子爵夫妻は穏やかな笑顔を浮かべると、アンナを伴って部屋を出ていく。
「お待ちください、レッジ子爵」
ダンテが慌てて後を追うのを、エドアルドとクラリーチェ、そしてカンチェラーラ侯爵が何とも言えない表情で見送っていた。
「ご息女を……少しだけお誘いしても?」
すると、レッジ子爵は小さく溜息をついた。
「まだ正式に婚約を結んではいないのですから、あまり占領するのはお控えいただきたいところですが……今日は特別ですぞ」
「ありがとうございます」
いたずらっぽく微笑むレッジ子爵に深々と頭を下げると、ダンテはアンナに腕を差し出した。
「少し、風にあたりませんか?」
ほんの少し照れたようなダンテの表情に、アンナははにかみながら彼の手を取った。
ダンテがアンナを連れてきた場所は、つい先日、二人で想いを伝えあった中庭だった。
彼女の歩調に合わせるようにゆったりとした足取りでアンナを導くいたのは、その中庭のやや奥まったところにある銀木犀の木の下だった。
甘やかな香りが辺りに漂い、思わず深呼吸をしたくなる。
「………先日君の髪に飾ったこの花は、銀木犀と言うそうだ」
「存じております」
「では、花言葉も知っているか?」
ダンテは立ち止まってからアンナに向き合うと、彼女の顔を覗き込んだ。
「……花言葉、ですか?」
アンナはきょとんとして数回瞬きをしてからふるふると首を横に振った。
「高潔、謙虚などという意味があるのだそうだ」
いきなり何の話をするのだろうというような、不思議そうな表情を浮かべ、アンナはじっとダンテの話を聞いている。
「……その中に、初恋、あなたの気を引く、そして……唯一の恋というものがあると、妃殿下が教えて下さった」
ダンテは頬を赤らめながら恥ずかしそうに呟いた。
「私は花言葉など馴染みはないし……気にもしていなかったのだが、……図らずもこの花が、君に私の心を伝えていたということが、とても嬉しかったんだ」
栗色の瞳にじっと見つめられると、アンナは胸の鼓動が早まるのを感じた。
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。