冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

騎士団長の恋愛事情(45)

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それから数日後。
王宮内の一室には国王夫妻と宰相であるカンチェラーラ侯爵、そしてレッジ子爵夫妻とアンナとダンテが揃っていた。

「問題ありませんね」

カンチェラーラ侯爵が一揃えになった書類に目を通し終わり、顔を上げた。
以前は契約書のような紙切れ一枚で手続き出来たが、先王フィリッポの後宮問題の一件から、特に平民を養子として迎える場合は厳しい審査を通らなければ受理されないように手続きの方法を変更したため、その書類を整えるのに時間が掛かったが、審査は滞りなく済んだようだった。

カンチェラーラ侯爵はサインを書類の最後に書き記してから印璽を押し、それをエドアルドへと手渡すと、エドアルドもサインを書き記した。

「……レッジ子爵。ご息女を、大切にな」
「もちろんでございます。この年になって娘がもう一人出来るとは思いもよりませんでしたが……嬉しいものですな」

静かに呟いたエドアルドに対して、レッジ子爵夫妻は穏やかな笑顔を浮かべると、アンナを伴って部屋を出ていく。

「お待ちください、レッジ子爵」

ダンテが慌てて後を追うのを、エドアルドとクラリーチェ、そしてカンチェラーラ侯爵が何とも言えない表情で見送っていた。

「ご息女を……少しだけお誘いしても?」

すると、レッジ子爵は小さく溜息をついた。

「まだ正式に婚約を結んではいないのですから、あまり占領するのはお控えいただきたいところですが……今日は特別ですぞ」
「ありがとうございます」

いたずらっぽく微笑むレッジ子爵に深々と頭を下げると、ダンテはアンナに腕を差し出した。

「少し、風にあたりませんか?」

ほんの少し照れたようなダンテの表情に、アンナははにかみながら彼の手を取った。


ダンテがアンナを連れてきた場所は、つい先日、二人で想いを伝えあった中庭だった。
彼女の歩調に合わせるようにゆったりとした足取りでアンナを導くいたのは、その中庭のやや奥まったところにある銀木犀の木の下だった。
甘やかな香りが辺りに漂い、思わず深呼吸をしたくなる。

「………先日君の髪に飾ったこの花は、銀木犀と言うそうだ」
「存じております」
「では、花言葉も知っているか?」

ダンテは立ち止まってからアンナに向き合うと、彼女の顔を覗き込んだ。

「……花言葉、ですか?」

アンナはきょとんとして数回瞬きをしてからふるふると首を横に振った。

「高潔、謙虚などという意味があるのだそうだ」

いきなり何の話をするのだろうというような、不思議そうな表情を浮かべ、アンナはじっとダンテの話を聞いている。

「……その中に、初恋、あなたの気を引く、そして……唯一の恋というものがあると、妃殿下が教えて下さった」

ダンテは頬を赤らめながら恥ずかしそうに呟いた。

「私は花言葉など馴染みはないし……気にもしていなかったのだが、……図らずもこの花が、君に私の心を伝えていたということが、とても嬉しかったんだ」

栗色の瞳にじっと見つめられると、アンナは胸の鼓動が早まるのを感じた。
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