45 / 166
45.襲撃の知らせ
しおりを挟む
それから一ヶ月程経ったある日の事。
北方の街からの早馬が城に駆け込んできた。
「氷河山脈を越えて、異民族が攻め込んで来ました!」
その言葉に、城内に緊張が走った。
「旗印は、スネーストルム!率いているのは恐らく、首領のラーシュと思われます!」
「……来たか」
アデルバート様が苦々しい顔をした。
スネーストルムは聞いたことがある。彼らは領土を持たないいわゆる流浪の民。雪や氷の魔法に長けた狩猟民族で、度々我が国に侵略を行ってくる部族の中で最も厄介な相手と言われていた。
「被害の状況は?」
アデルバート様は冷静に状況を分析しようとしている。
「村が二つ、襲われました。エダムの村は壊滅、民も皆殺し。今回はリーテの村より、救援要請です」
私は、ショックで言葉が出なかった。……これが、極北の地の現実……。
「最短で出立するとなると、明後日の早朝。各自、準備を進めよ」
氷狼の討伐が終わったと思ったら、今度はスネーストルムの侵略行為。
アデルバート様は、本当に気が休まる暇などないだろう。
いくら最恐将軍とは言え、アデルバート様だって生身の人間だ。
疲れが出れば、脆い部分だって出てしまう。
もし、アデルバート様の身に何かあったら……。私は言いしれない不安に、胸がいっぱいになった。
アミュレットや加護魔法は当然として……他に何か私でも力になれる事があれば……。
「スネーストルムは、強力な攻撃魔法を使う。治療薬を多めに用意しておけ」
偶然、アデルバート様がそう指示を出しているのが耳に入ってきた。
治療なら、私にも出来る。治癒魔法は最も得意とする魔法だ。
それに気がついた私は、慌ててアデルバート様に駆け寄った。
「アデルバート様、お願いがございます」
「お前が願い事をするなど珍しいな。一体、何だ」
「……私を、一緒にお連れください」
私はアデルバート様の深紅の双眸を、真っ直ぐに見据えた。
「駄目だ。危険すぎる」
アデルバート様は即座にそう言った。
「何故です?」
「我々は、戦いに行くのだ。女を伴ってなど、行けぬ」
「……アデルバート様。確かに私は女です。でも、男性に守ってもらうだけの存在ではありません。お忘れかもしれませんが私はアデルバート様の妻である前に、聖女です。共に戦う事が出来ます」
私は、堂々とそう宣言した。
「……しかし」
「聖女は、騎士と共に戦に出かけるのは日常茶飯事でしょう?私がアデルバート様の妻だからと、それを理由に出来るとは思えません」
そう言い放って、アデルバート様の出方を伺うのだった。
北方の街からの早馬が城に駆け込んできた。
「氷河山脈を越えて、異民族が攻め込んで来ました!」
その言葉に、城内に緊張が走った。
「旗印は、スネーストルム!率いているのは恐らく、首領のラーシュと思われます!」
「……来たか」
アデルバート様が苦々しい顔をした。
スネーストルムは聞いたことがある。彼らは領土を持たないいわゆる流浪の民。雪や氷の魔法に長けた狩猟民族で、度々我が国に侵略を行ってくる部族の中で最も厄介な相手と言われていた。
「被害の状況は?」
アデルバート様は冷静に状況を分析しようとしている。
「村が二つ、襲われました。エダムの村は壊滅、民も皆殺し。今回はリーテの村より、救援要請です」
私は、ショックで言葉が出なかった。……これが、極北の地の現実……。
「最短で出立するとなると、明後日の早朝。各自、準備を進めよ」
氷狼の討伐が終わったと思ったら、今度はスネーストルムの侵略行為。
アデルバート様は、本当に気が休まる暇などないだろう。
いくら最恐将軍とは言え、アデルバート様だって生身の人間だ。
疲れが出れば、脆い部分だって出てしまう。
もし、アデルバート様の身に何かあったら……。私は言いしれない不安に、胸がいっぱいになった。
アミュレットや加護魔法は当然として……他に何か私でも力になれる事があれば……。
「スネーストルムは、強力な攻撃魔法を使う。治療薬を多めに用意しておけ」
偶然、アデルバート様がそう指示を出しているのが耳に入ってきた。
治療なら、私にも出来る。治癒魔法は最も得意とする魔法だ。
それに気がついた私は、慌ててアデルバート様に駆け寄った。
「アデルバート様、お願いがございます」
「お前が願い事をするなど珍しいな。一体、何だ」
「……私を、一緒にお連れください」
私はアデルバート様の深紅の双眸を、真っ直ぐに見据えた。
「駄目だ。危険すぎる」
アデルバート様は即座にそう言った。
「何故です?」
「我々は、戦いに行くのだ。女を伴ってなど、行けぬ」
「……アデルバート様。確かに私は女です。でも、男性に守ってもらうだけの存在ではありません。お忘れかもしれませんが私はアデルバート様の妻である前に、聖女です。共に戦う事が出来ます」
私は、堂々とそう宣言した。
「……しかし」
「聖女は、騎士と共に戦に出かけるのは日常茶飯事でしょう?私がアデルバート様の妻だからと、それを理由に出来るとは思えません」
そう言い放って、アデルバート様の出方を伺うのだった。
4
あなたにおすすめの小説
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる