黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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73.ティストの町へ

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「………そろそろ村人たちの弔いも終わっただろう。腹ごしらえをしたら、追撃に出るぞ」

そうか………。どうしてすぐに追わなかったかと思ったら、色々と理由をつけていたけれど、騎士たちが村人たちの亡骸を埋葬するのを待っていたのね。

「分かりました。でも、私も付いていって………よろしいのですか?」

私は恐る恐る尋ねる。
ここまで付いてきておいて今更なのだけれど、万が一戦いになった時、アデルバート様の愛馬スヴァルトに同乗していたら邪魔ではないかしら。

「野営地に、お前を残していく方が危険だろう」

確かに仰る通りよね。こんな人気のない場所に取り残されるのは流石に怖い。

「大丈夫だ。何があっても必ずお前だけは守る」
「………アデルバート様もご無事でなければ嫌ですわ」

私がそう耳元で囁くと、アデルバート様はふっと微笑み、私の唇に口付を落としたのだった。


準備が整い、いよいよ追撃に向けての隊列が組まれた。
アルヴァは、本人の希望により追撃隊に加わることになった。

「この先は雪深いので、俺が道案内をします!」

と張り切っているけれど、アデルバート様の仰る通りであれば、彼の道案内は罠である可能性が高いだろう。
私はアデルバート様に相談し、アルヴァには気が付かれないように、天眼魔法を使って周囲の状況を確認しながら、ティストの町へ向かうことになった。

「出立!」

野営地に残る騎士たちもいるけれど、基本は皆追撃部隊に加わっている。
皆、密かにアルヴァの動向を窺っている事に、彼は気がついているのかしら。

「ここからティストの町までは、馬だったら半日かかるかどうかですけど、何せ昨日の吹雪が凄かったから………」

瀕死の重傷を負い、自分の村の住民が皆殺しにされた直後の人とは思えない、明るい口調でアルヴァは随行する騎士に話しかけている。
怪我を治療した後の様子では多少なりともショックを受けている風だったけれど、彼がスネーストルムの人間だと思えば思うほど、言動が疑わしく感じるから不思議だ。
………私、もしかしたら彼に同情して、肝心なものが見えていなかったのかもしれない。
聖女は、その力を正義のために使えと教わった。私は困っている人に手を差し伸べるのがそうなのだと思っていたけれど、そもそも私の目が曇っていたら正しいものは見えないのかもしれない。
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