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番外編3 誕生(少し出産シーンあります)
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「あまり動き回るな。大人しくしていたほうがいい」
大きく膨らんだお腹を抱えて歩く私を見て、アデルバート様が心配そうに付き添う。
元々過保護気味だとは思っていたけれど、お腹が目立つようになってくるとそれは更に顕著になってきた気がする。
「お医者様からも、安産のためには少し運動したほうがいいと言われておりますから」
もう何百回と説明した事をまた繰り返すけれど、アデルバート様は聞く耳を持たない。
「転んだりしたら大事だ」
「足元はかろうじて見えますから大丈夫ですわ」
ずっとこんな様子で、正直何も出来ない。
アデルバート様だって沢山の執務があるはずなのに、殆ど私につきっきりだ。
「そろそろ仕事に戻って下さいませ」
「シャトレーヌが心配で、何も手につかないのだ」
間髪入れずそんの答えが返ってくると、私は何も言えないわ………。
「………この子と、私の心配をしてくださるのなら、領主としてきちんとやるべきことはやってくださいな。でないと、この子だって安心して生まれて来れませんわ」
そう言って、ゆっくりとお腹を撫でた、その時だった。
「…………っ」
突然、痛みが腹部に走る。
「シャトレーヌ?!」
痛みに思わず顔を顰めると、アデルバート様がすかさず私の体を支えた。
「どうした?!」
「お………お腹が………っ」
重いような、鈍い痛みに、呼吸が乱れてくる。
「おい、早く医者を呼べ!」
アデルバート様は大声で叫ぶと、私の体を抱え上げた。
「大丈夫か?」
「………はい………」
痛いには痛いけれど、我慢できないほどではない。
私は深呼吸を繰り返し、自分を落ち着けようとしていると痛みが徐々に引いてきた気がした。
少し、無理をしすぎたのかしら………?
寝台までアデルバート様が運んてくださると、お医者様がいらっしゃった。
………どうやら、陣痛が始まったと告げられると、俄に周囲が慌ただしくなった。
それから、短いようで長い時間、経験したことのないような痛みに耐え続け…………。
「おめでとうございます。元気な、男の子ですよ」
お医者様が、小さな体から懸命に声を上げている、赤ちゃんを私に抱かせてくれる。
「何て………なんて可愛らしいの………」
たった今この世に誕生した我が子を見た瞬間、涙が自然と零れ落ちた。
アデルバート様譲りの黒髪の、とても可愛らしい子だ。
「シャトレーヌ………よく、頑張ってくれた。………そして我が子よ、よく無事に生まれてきてくれた」
アデルバート様はずっと私に付き添い、手を握って、励まして下さっていた。
途中痛みで意識が飛びそうになると、アデルバート様が呼び戻して下さった。
「アデルバート様………」
アデルバート様が大きな手で、ぷっくりとした赤ちゃんの頬を愛おしげに撫でた。
その瞬間、産声をあげていたこの子が、ふわりと笑った気がした。
「笑った………?」
アデルバート様も、驚いたように目を瞠る。
そして、すぐに破顔した。
「………きっと、安心したのだろう。お前は賢い子だ。リュカラーシュ」
「リュカラーシュ?」
私が聞き返すと、アデルバート様は穏やかな表情で、頷かれた。
「ああ。この地方の古い言葉で、聖なる幸福という意味だ。この子が、未来永劫神の祝福を受け、幸せになれるように、願いを込めた」
「………とても、素敵な名前ですわ。良かったわね、リュカ?」
腕の中のリュカラーシュを覗き込み、それからアデルバート様を見る。
「ラーシュ」の名を織り込んだ、この子の未来を明るく照らしてくれるような素晴らしい名前だと、心から思った。
そして今この瞬間、私は本当に幸せだと、そう感じたのだった。
大きく膨らんだお腹を抱えて歩く私を見て、アデルバート様が心配そうに付き添う。
元々過保護気味だとは思っていたけれど、お腹が目立つようになってくるとそれは更に顕著になってきた気がする。
「お医者様からも、安産のためには少し運動したほうがいいと言われておりますから」
もう何百回と説明した事をまた繰り返すけれど、アデルバート様は聞く耳を持たない。
「転んだりしたら大事だ」
「足元はかろうじて見えますから大丈夫ですわ」
ずっとこんな様子で、正直何も出来ない。
アデルバート様だって沢山の執務があるはずなのに、殆ど私につきっきりだ。
「そろそろ仕事に戻って下さいませ」
「シャトレーヌが心配で、何も手につかないのだ」
間髪入れずそんの答えが返ってくると、私は何も言えないわ………。
「………この子と、私の心配をしてくださるのなら、領主としてきちんとやるべきことはやってくださいな。でないと、この子だって安心して生まれて来れませんわ」
そう言って、ゆっくりとお腹を撫でた、その時だった。
「…………っ」
突然、痛みが腹部に走る。
「シャトレーヌ?!」
痛みに思わず顔を顰めると、アデルバート様がすかさず私の体を支えた。
「どうした?!」
「お………お腹が………っ」
重いような、鈍い痛みに、呼吸が乱れてくる。
「おい、早く医者を呼べ!」
アデルバート様は大声で叫ぶと、私の体を抱え上げた。
「大丈夫か?」
「………はい………」
痛いには痛いけれど、我慢できないほどではない。
私は深呼吸を繰り返し、自分を落ち着けようとしていると痛みが徐々に引いてきた気がした。
少し、無理をしすぎたのかしら………?
寝台までアデルバート様が運んてくださると、お医者様がいらっしゃった。
………どうやら、陣痛が始まったと告げられると、俄に周囲が慌ただしくなった。
それから、短いようで長い時間、経験したことのないような痛みに耐え続け…………。
「おめでとうございます。元気な、男の子ですよ」
お医者様が、小さな体から懸命に声を上げている、赤ちゃんを私に抱かせてくれる。
「何て………なんて可愛らしいの………」
たった今この世に誕生した我が子を見た瞬間、涙が自然と零れ落ちた。
アデルバート様譲りの黒髪の、とても可愛らしい子だ。
「シャトレーヌ………よく、頑張ってくれた。………そして我が子よ、よく無事に生まれてきてくれた」
アデルバート様はずっと私に付き添い、手を握って、励まして下さっていた。
途中痛みで意識が飛びそうになると、アデルバート様が呼び戻して下さった。
「アデルバート様………」
アデルバート様が大きな手で、ぷっくりとした赤ちゃんの頬を愛おしげに撫でた。
その瞬間、産声をあげていたこの子が、ふわりと笑った気がした。
「笑った………?」
アデルバート様も、驚いたように目を瞠る。
そして、すぐに破顔した。
「………きっと、安心したのだろう。お前は賢い子だ。リュカラーシュ」
「リュカラーシュ?」
私が聞き返すと、アデルバート様は穏やかな表情で、頷かれた。
「ああ。この地方の古い言葉で、聖なる幸福という意味だ。この子が、未来永劫神の祝福を受け、幸せになれるように、願いを込めた」
「………とても、素敵な名前ですわ。良かったわね、リュカ?」
腕の中のリュカラーシュを覗き込み、それからアデルバート様を見る。
「ラーシュ」の名を織り込んだ、この子の未来を明るく照らしてくれるような素晴らしい名前だと、心から思った。
そして今この瞬間、私は本当に幸せだと、そう感じたのだった。
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