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73.禊
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「お嬢様、そろそろ起きて下さい」
「ん………」
ミアの声が聞こえて、瞼を持ち上げると眩しい朝日がアンネリーゼの顔に当たった。
「さあ、今日から禊ですよ。お支度をして、聖殿に向かいましょう」
はっとして、アンネリーゼは飛び起きると真っ先にジークの姿を探した。
「ジーク様は………?」
「え?バルテル卿でしたら、扉の外に控えていらっしゃいますけれど………?」
目覚めて真っ先にジークを探すアンネリーゼに、ミアは戸惑ったようだった。
「あ……その、私が寝坊をしてご迷惑を掛けてしまったのではと思っただけよ………?」
もっともらしい理由をつけて誤魔化すと、アンネリーゼは溜息をついて寝台を降りる。
ぐっしょりと濡れていた筈の夜着も、乱れた髪の毛も綺麗に整っていた。
昨夜の出来事は、夢だったのだろうか。
用意された水で顔を洗い、聖殿へ向かう為のしゅんぱくの聖衣へと着替えながら、そんな事を考える。
「おはようございます、巫女姫様」
部屋を出ると、待っていたジークが恭しく騎士の礼をとった。
やはり無表情のままで、彼が自分を抱き締めた事などまるで無かったようだった。
思い出すだけで胸が高鳴るのが自分だけだという事実に、アンネリーゼはきゅっと唇を噛み締め、聖殿へと向かった。
「こちらが、儀式までの期間お過ごし頂くお部屋です。護衛騎士の方とお付きの方はそれぞれ隣室を用意致しましたので、そちらをお使い頂きます」
神官から祈祷を受けて説明を聞いたあと、アンネリーゼはすぐさま潔斎へと向かった。
各聖殿の中には泉が湧き出している。その泉に身を浸して身を清め、瞑想をして過ごすのが禊。
その間は禁欲が求められ、外部との接触も禁じられる。
三日間の潔斎期間を経て、女神への祈りの儀式に臨むのが習わしだった。
アンネリーゼはたった一人、真っ白な部屋へと入っていった。
部屋の中央に、ぽっかりと穴が開いていて、そこから滾々と水が湧き出している。
恐る恐る縁から覗き込むと、どこまでも澄み渡った水が、アンネリーゼを映し出す。
それはまるでアンネリーゼの乱れた心を表すかのようにゆらゆらと揺らいでいる。
アンネリーゼは、ゆっくりと足先を泉の水に浸す。
肌を刺すような冷たさと、優しい心地よさが入り混じった不思議な感覚がアンネリーゼを包み込んでいく。
水に触れた部分から、何かが駆け上がってくるような錯覚に囚われてすうっと息を吸い込んだ瞬間、アンネリーゼは水の中に引き込まれるように、落下していった。
「ん………」
ミアの声が聞こえて、瞼を持ち上げると眩しい朝日がアンネリーゼの顔に当たった。
「さあ、今日から禊ですよ。お支度をして、聖殿に向かいましょう」
はっとして、アンネリーゼは飛び起きると真っ先にジークの姿を探した。
「ジーク様は………?」
「え?バルテル卿でしたら、扉の外に控えていらっしゃいますけれど………?」
目覚めて真っ先にジークを探すアンネリーゼに、ミアは戸惑ったようだった。
「あ……その、私が寝坊をしてご迷惑を掛けてしまったのではと思っただけよ………?」
もっともらしい理由をつけて誤魔化すと、アンネリーゼは溜息をついて寝台を降りる。
ぐっしょりと濡れていた筈の夜着も、乱れた髪の毛も綺麗に整っていた。
昨夜の出来事は、夢だったのだろうか。
用意された水で顔を洗い、聖殿へ向かう為のしゅんぱくの聖衣へと着替えながら、そんな事を考える。
「おはようございます、巫女姫様」
部屋を出ると、待っていたジークが恭しく騎士の礼をとった。
やはり無表情のままで、彼が自分を抱き締めた事などまるで無かったようだった。
思い出すだけで胸が高鳴るのが自分だけだという事実に、アンネリーゼはきゅっと唇を噛み締め、聖殿へと向かった。
「こちらが、儀式までの期間お過ごし頂くお部屋です。護衛騎士の方とお付きの方はそれぞれ隣室を用意致しましたので、そちらをお使い頂きます」
神官から祈祷を受けて説明を聞いたあと、アンネリーゼはすぐさま潔斎へと向かった。
各聖殿の中には泉が湧き出している。その泉に身を浸して身を清め、瞑想をして過ごすのが禊。
その間は禁欲が求められ、外部との接触も禁じられる。
三日間の潔斎期間を経て、女神への祈りの儀式に臨むのが習わしだった。
アンネリーゼはたった一人、真っ白な部屋へと入っていった。
部屋の中央に、ぽっかりと穴が開いていて、そこから滾々と水が湧き出している。
恐る恐る縁から覗き込むと、どこまでも澄み渡った水が、アンネリーゼを映し出す。
それはまるでアンネリーゼの乱れた心を表すかのようにゆらゆらと揺らいでいる。
アンネリーゼは、ゆっくりと足先を泉の水に浸す。
肌を刺すような冷たさと、優しい心地よさが入り混じった不思議な感覚がアンネリーゼを包み込んでいく。
水に触れた部分から、何かが駆け上がってくるような錯覚に囚われてすうっと息を吸い込んだ瞬間、アンネリーゼは水の中に引き込まれるように、落下していった。
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