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88.目覚め
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「アンネリーゼ………」
誰かに呼ばれる声がした。
同時に、誰かの力強い腕がアンネリーゼの身体を抱き締めた。
「……………」
紡いだ筈の言葉は、何故か声にはならなず、彼には届かなかったが、アンネリーゼはその腕の温もりを知っているような気がした。
「アンネリーゼ………目を、覚ましてくれ…………」
温かい、大きな掌が頬に触れる。
その指先は微かに震えているかのようだった。
「だ………れ………?」
混濁した意識の中で、漸く動かした唇が言葉を形作る。
「アンネリー………巫女姫様?」
低く、静かだが艷やかでしっとりとした声が耳に届いて、アンネリーゼは瞼をぴくりと動かした。
「ん…………」
浮遊しているような感覚は、水の中にいるせいだろうか。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、真っ白な天井が視界に飛び込んできた。
「ここは………」
ぼやける視界を矯正しようと、数回瞬きをすると茶色い瞳が覗き込んできた。
「ジーク様…………?」
禊の最中なのに、何故ここにジークがいるのかという疑問が真っ先に浮かび上がってくる。
「意識が戻って、良かったです。巫女姫様は泉の中で沈んでいらっしゃったのですよ」
ジークの固い表情が僅かに緩んだのを見て、アンネリーゼははっとした。
禊の最中に光に包まれた所までははっきりと憶えているが、その後は一体どうなったのだろう。
「わたくし、また意識を失っていたのですか?」
「また、とは…………?そんなに頻繁に意識を失われているのですか?」
身体が頑丈な訳ではないが、かといって病弱な訳でもなかったが、思い返してみるとここ最近、意識を失うことが多い気がする。
「多いのは本当にここ最近なのです。…………前の巡礼で、婚約者を亡くした時と、それから…………」
そこまで言いかけると、ずきんと頭の芯のほうが鈍く痛んだ。
「前の巡礼とは…………?アンネリー…………巫女姫様、もしや、記憶が…………?」
ジークの表情は相変わらず固いままだが、それでも本気驚いたようだった。
「…………ええ」
隠しておくべき品物は、なにもないと判断したジークヴァルトは、アンネリーゼの答えに戸惑ったようだった。
「不思議なのだけれど、わたくしが禊のために泉に近付いた途端に泉の中に引きずり込まれたのです。それから、金色の光が集まってきて…………」
アンネリーゼは胸元で燻る想いを、ぎゅっと抱き締めるように胸の前で拳を握り締めた。
「少し辻褄の合わない記憶もありますが、間違いないと、思います」
ジークはアンネリーゼを見据えると、ゆっくりと頷いた。
誰かに呼ばれる声がした。
同時に、誰かの力強い腕がアンネリーゼの身体を抱き締めた。
「……………」
紡いだ筈の言葉は、何故か声にはならなず、彼には届かなかったが、アンネリーゼはその腕の温もりを知っているような気がした。
「アンネリーゼ………目を、覚ましてくれ…………」
温かい、大きな掌が頬に触れる。
その指先は微かに震えているかのようだった。
「だ………れ………?」
混濁した意識の中で、漸く動かした唇が言葉を形作る。
「アンネリー………巫女姫様?」
低く、静かだが艷やかでしっとりとした声が耳に届いて、アンネリーゼは瞼をぴくりと動かした。
「ん…………」
浮遊しているような感覚は、水の中にいるせいだろうか。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、真っ白な天井が視界に飛び込んできた。
「ここは………」
ぼやける視界を矯正しようと、数回瞬きをすると茶色い瞳が覗き込んできた。
「ジーク様…………?」
禊の最中なのに、何故ここにジークがいるのかという疑問が真っ先に浮かび上がってくる。
「意識が戻って、良かったです。巫女姫様は泉の中で沈んでいらっしゃったのですよ」
ジークの固い表情が僅かに緩んだのを見て、アンネリーゼははっとした。
禊の最中に光に包まれた所までははっきりと憶えているが、その後は一体どうなったのだろう。
「わたくし、また意識を失っていたのですか?」
「また、とは…………?そんなに頻繁に意識を失われているのですか?」
身体が頑丈な訳ではないが、かといって病弱な訳でもなかったが、思い返してみるとここ最近、意識を失うことが多い気がする。
「多いのは本当にここ最近なのです。…………前の巡礼で、婚約者を亡くした時と、それから…………」
そこまで言いかけると、ずきんと頭の芯のほうが鈍く痛んだ。
「前の巡礼とは…………?アンネリー…………巫女姫様、もしや、記憶が…………?」
ジークの表情は相変わらず固いままだが、それでも本気驚いたようだった。
「…………ええ」
隠しておくべき品物は、なにもないと判断したジークヴァルトは、アンネリーゼの答えに戸惑ったようだった。
「不思議なのだけれど、わたくしが禊のために泉に近付いた途端に泉の中に引きずり込まれたのです。それから、金色の光が集まってきて…………」
アンネリーゼは胸元で燻る想いを、ぎゅっと抱き締めるように胸の前で拳を握り締めた。
「少し辻褄の合わない記憶もありますが、間違いないと、思います」
ジークはアンネリーゼを見据えると、ゆっくりと頷いた。
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