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154.瞳
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「べ、別に見返りなんて………っ」
小さな声でアンネリーゼが呟くと、フローラは更に目を細めながら、アンネリーゼを見据える。
その視線は、獲物に狙いを定めた肉食獣のようで、アンネリーゼは思わず身構える。
「あらぁ、遠慮しなくていいのよぉ?望みがあれば私が何でも叶えてあげる。宝石でも金でも、何でもね。………ただその代わり、私のお願いも聞いてちょうだい?」
フローラの若草色の瞳が、ゆっくりと細められ、同時に彼女の艷やかな唇がはっきりと弧を描く。
その表情に、ジークヴァルトははっとした。
それは、『禍月の魔女』の表情そのものだった。
ジークヴァルトの心臓が大きく跳ね、ほぼ同時に耳のすぐ近くでドクンとおおきく脈を打つ。
数歩の距離に佇むストロベリーブロンドの少女と魔女の顔は似ても似つかないのにそのように見えるのは、あの女の魔力の気配が少女を覆っているからだろうか。それとも何か別の理由があるのか。
ジークヴァルトは乱れそうになる呼吸をゆっくりと落ち着かせる。
そんなジークヴァルトの異変に気がついたアンネリーゼは心配そうに彼を見た後、ゆっくりと口を開いた。
「本当に、見返りなんて求めていません」
貴族だと気が付かれないように慎重に言葉を選びながら、アンネリーゼはじっとフローラを見つめた。
「………それに、お願いを聞いて差し上げたいのは山々ですが、お嬢様の望みを叶えるような力は私達にはありませんから、申し訳ないのですけれどお断りします」
そう言ってアンネリーゼは上辺だけ取り繕った笑顔を浮かべる。
するとフローラは忌々しそうに眉間に皺を寄せた。
「…………あんた、平民のクセに………。そういう取り澄ました所が何だか私の大嫌いな女に似ている気がするわぁ。…………その女、アンネリーゼ・モルゲンシュテルンっていうんだけれどね」
「え……………?」
「その名前を聞けば、いくら無知な平民でもわかるでしょ?私のお願いは、その女を三日後の聖殿入りが出来ないようにしてもらいたかったんだけど………」
フローラのストロベリーブロンドの髪がざわりと揺れて、彼女の体からじわりと黒くくすんだ魔力が滲み出てくるような気配がした。
「その気がないなら、気に入らないから死んでくれない?」
信じられない言葉を口にしたフローラが、かっと目を見開く。
その瞳の色はフローラの若草色ではなく、鮮やかな紫色だった。
「…………!」
アンネリーゼも、ジークヴァルトも思わず息を呑んだ。
小さな声でアンネリーゼが呟くと、フローラは更に目を細めながら、アンネリーゼを見据える。
その視線は、獲物に狙いを定めた肉食獣のようで、アンネリーゼは思わず身構える。
「あらぁ、遠慮しなくていいのよぉ?望みがあれば私が何でも叶えてあげる。宝石でも金でも、何でもね。………ただその代わり、私のお願いも聞いてちょうだい?」
フローラの若草色の瞳が、ゆっくりと細められ、同時に彼女の艷やかな唇がはっきりと弧を描く。
その表情に、ジークヴァルトははっとした。
それは、『禍月の魔女』の表情そのものだった。
ジークヴァルトの心臓が大きく跳ね、ほぼ同時に耳のすぐ近くでドクンとおおきく脈を打つ。
数歩の距離に佇むストロベリーブロンドの少女と魔女の顔は似ても似つかないのにそのように見えるのは、あの女の魔力の気配が少女を覆っているからだろうか。それとも何か別の理由があるのか。
ジークヴァルトは乱れそうになる呼吸をゆっくりと落ち着かせる。
そんなジークヴァルトの異変に気がついたアンネリーゼは心配そうに彼を見た後、ゆっくりと口を開いた。
「本当に、見返りなんて求めていません」
貴族だと気が付かれないように慎重に言葉を選びながら、アンネリーゼはじっとフローラを見つめた。
「………それに、お願いを聞いて差し上げたいのは山々ですが、お嬢様の望みを叶えるような力は私達にはありませんから、申し訳ないのですけれどお断りします」
そう言ってアンネリーゼは上辺だけ取り繕った笑顔を浮かべる。
するとフローラは忌々しそうに眉間に皺を寄せた。
「…………あんた、平民のクセに………。そういう取り澄ました所が何だか私の大嫌いな女に似ている気がするわぁ。…………その女、アンネリーゼ・モルゲンシュテルンっていうんだけれどね」
「え……………?」
「その名前を聞けば、いくら無知な平民でもわかるでしょ?私のお願いは、その女を三日後の聖殿入りが出来ないようにしてもらいたかったんだけど………」
フローラのストロベリーブロンドの髪がざわりと揺れて、彼女の体からじわりと黒くくすんだ魔力が滲み出てくるような気配がした。
「その気がないなら、気に入らないから死んでくれない?」
信じられない言葉を口にしたフローラが、かっと目を見開く。
その瞳の色はフローラの若草色ではなく、鮮やかな紫色だった。
「…………!」
アンネリーゼも、ジークヴァルトも思わず息を呑んだ。
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