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本編
第一話
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「エリーゼ・マロウ!お前との婚約を破棄する!」
夜会の真っ最中、公衆の面前で叫んでいるのは、アーロン・ジャーマンダー公爵令息。残念ながらこの私、マロウ侯爵令嬢であるエリーゼ・マロウの婚約者だ。そして喚き散らすアーロン様の隣には、肉感的で小柄な令嬢がピッタリと寄り添い、何故か勝ち誇ったような顔でこちらを見ている。
突然の大声に、流れていた音楽はとまり、会場にいた人達は何事かとアーロン様達と私を交互に見ている。
はぁ………これが最近恋愛小説なんかでよく見かける「婚約破棄、のち断罪劇場」ね。………全く、頭の出来を疑いますわね。
私は深ーい溜息をついた。
「………理由を、お聞かせ願えますか?」
本当は理由なんてどうでもいいけど、そちらがその気なら私も茶番劇に付き合って差し上げましょう。
「俺は、このボニータ・ビッテルハイム男爵令嬢との真実の愛に目覚めたのだ!それに聞けばお前は俺の愛しいボニータに陰湿な嫌がらせをしていたと言うではないか!そんな女は俺にふさわしくない!」
はい、出た。恋愛小説通りの筋書き。ツッコミどころがあり過ぎて困りますわ。
「どうだ!反論する気にもならないか!」
アーロン様。以前から傲慢で、勉学も苦手で、どう見ても人格的に不具合があると思っておりましたがここまでとは、非常に残念ですわ。公爵様はとても素晴らしい方だというのに………。
さて、どう調理しましょうかね。
「少々呆れて物が言えなかっただけですわ。大体、こんな公衆の面前で大声を出して、夜会を中断させ、婚約破棄をする必要がありまして?」
「なっ!」
私はいつも小説でこんなシーンが出てくるたびにツッコミを入れていた。婚約は家同士の契約なので、わざわざ大衆の前で宣言する必要なんて全くない。書面で双方か同意すれば済む話だろう、と。………まさかそれが自分の身に実際に起こるとは思っていなかったのですけれど。
「そもそも真実の愛などと仰いますが、誰がどうやって証明するのです?そもそも婚約者がいる身でありながら、別の令嬢と真実の愛を語るですって?それはご自分が不実であると宣言しているのと同じではありませんの?」
「そ………それはだな…………!」
私はアーロン様の答えを待つことなく、更に問い詰める。
「それに陰湿な嫌がらせ?そちらのご令嬢とは面識がありません。今が初対面ですわ。それを一方からの言い分のみで判断するとは、公平性にかけますわよね。第一、証拠はありますの?この年になって公平かつ冷静な判断が出来ないようであれば、公爵家の恥晒しですわ」
私はそこまで言い切ると、アーロン様の出方を待つ。
「黙って聞いていれば………!お前のその生意気な所が気に入らないんだよ!俺より少しばかり賢いと思って、俺の事を見下していただろう………!」
あら、気が付いていたのですね。
ただ、少しばかりではなく、貴方と私の頭の出来は天地ほどの差がありますのでそこは訂正したいのですけど。
「顔だけはいいから、仕方なく婚約者にしてやったが、美人は三日で飽きると言うからな。冷たい人形のようなお前と違って、ボニータは愛嬌があって従順だし、身の程をわきまえている」
は?身の程を弁えているのなら、婚約者がいる令息になんて手は出さないでしょう。そもそもこの件は公爵様はご存知なのかしら?
「ボイーン嬢の事は、公爵様はご存知なのですか?」
「失礼ね!ボイーンじゃなくてボニータよ!」
だって、体形がボイーン………胸にばかり意識がいって、つい間違えてしまった。これは確かに失礼でしたわね。
「父上は認めてくれるさ。何と言っても俺達は真実の愛で結ばれているからな」
………この人、私の話聞いてたのかしら?何よ、真実の愛って。
夜会の真っ最中、公衆の面前で叫んでいるのは、アーロン・ジャーマンダー公爵令息。残念ながらこの私、マロウ侯爵令嬢であるエリーゼ・マロウの婚約者だ。そして喚き散らすアーロン様の隣には、肉感的で小柄な令嬢がピッタリと寄り添い、何故か勝ち誇ったような顔でこちらを見ている。
突然の大声に、流れていた音楽はとまり、会場にいた人達は何事かとアーロン様達と私を交互に見ている。
はぁ………これが最近恋愛小説なんかでよく見かける「婚約破棄、のち断罪劇場」ね。………全く、頭の出来を疑いますわね。
私は深ーい溜息をついた。
「………理由を、お聞かせ願えますか?」
本当は理由なんてどうでもいいけど、そちらがその気なら私も茶番劇に付き合って差し上げましょう。
「俺は、このボニータ・ビッテルハイム男爵令嬢との真実の愛に目覚めたのだ!それに聞けばお前は俺の愛しいボニータに陰湿な嫌がらせをしていたと言うではないか!そんな女は俺にふさわしくない!」
はい、出た。恋愛小説通りの筋書き。ツッコミどころがあり過ぎて困りますわ。
「どうだ!反論する気にもならないか!」
アーロン様。以前から傲慢で、勉学も苦手で、どう見ても人格的に不具合があると思っておりましたがここまでとは、非常に残念ですわ。公爵様はとても素晴らしい方だというのに………。
さて、どう調理しましょうかね。
「少々呆れて物が言えなかっただけですわ。大体、こんな公衆の面前で大声を出して、夜会を中断させ、婚約破棄をする必要がありまして?」
「なっ!」
私はいつも小説でこんなシーンが出てくるたびにツッコミを入れていた。婚約は家同士の契約なので、わざわざ大衆の前で宣言する必要なんて全くない。書面で双方か同意すれば済む話だろう、と。………まさかそれが自分の身に実際に起こるとは思っていなかったのですけれど。
「そもそも真実の愛などと仰いますが、誰がどうやって証明するのです?そもそも婚約者がいる身でありながら、別の令嬢と真実の愛を語るですって?それはご自分が不実であると宣言しているのと同じではありませんの?」
「そ………それはだな…………!」
私はアーロン様の答えを待つことなく、更に問い詰める。
「それに陰湿な嫌がらせ?そちらのご令嬢とは面識がありません。今が初対面ですわ。それを一方からの言い分のみで判断するとは、公平性にかけますわよね。第一、証拠はありますの?この年になって公平かつ冷静な判断が出来ないようであれば、公爵家の恥晒しですわ」
私はそこまで言い切ると、アーロン様の出方を待つ。
「黙って聞いていれば………!お前のその生意気な所が気に入らないんだよ!俺より少しばかり賢いと思って、俺の事を見下していただろう………!」
あら、気が付いていたのですね。
ただ、少しばかりではなく、貴方と私の頭の出来は天地ほどの差がありますのでそこは訂正したいのですけど。
「顔だけはいいから、仕方なく婚約者にしてやったが、美人は三日で飽きると言うからな。冷たい人形のようなお前と違って、ボニータは愛嬌があって従順だし、身の程をわきまえている」
は?身の程を弁えているのなら、婚約者がいる令息になんて手は出さないでしょう。そもそもこの件は公爵様はご存知なのかしら?
「ボイーン嬢の事は、公爵様はご存知なのですか?」
「失礼ね!ボイーンじゃなくてボニータよ!」
だって、体形がボイーン………胸にばかり意識がいって、つい間違えてしまった。これは確かに失礼でしたわね。
「父上は認めてくれるさ。何と言っても俺達は真実の愛で結ばれているからな」
………この人、私の話聞いてたのかしら?何よ、真実の愛って。
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