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本編

第二話

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「つまり、まだお話されていないのですね?」
「だから何だと言うんだ!」

全く、いちいち怒鳴らなくても聞こえていますわ。大きな口を開けて喋るので、唾は飛び散るし、本当に公爵令息なのかと疑いたくなるレベルですね。

「婚約は、家同士の契約ですわ。当人同士の意志など二の次ですの。心から愛し合った者同士が結ばれるなど、お話の中だけ。まさに夢物語なのです。おわかり?」

そう。小説に出てくるような恋愛結婚は、理想論。
現実に目を向ければ、貴族であれ、平民であれ、皆家同士の繋がりを重視した結婚が主流。
勿論婚約してからや、夫婦になってから恋愛感情が芽生える事もあると聞きますが、あくまできっかけは恋愛ではないということもご存知ないのかしら?

「あらぁ、エリーゼ様はアーロン様に愛されていなかったから、悔し紛れでそんな事おっしゃるのですねぇ~」

ボイーン………じゃなかった、ボニータ嬢が丸い顔に嫌らしい笑顔を浮かべて挑発してきた。

「当たり前だ。こんな女を愛せるわけがないだろう」

………その言葉、そっくり貴方にお返ししますわ。
うん、こう見てるとこのお二人は似た者同士、お似合いなのかもしれませんわね。

「私が申し上げたいのは、私達だけの判断では婚約破棄出来ないということです。婚約破棄していただけるのは私にとってもありがたい事ですけれど。とにかく、この場でどうこう話し合う事ではございませんわ」

面倒ですけど挑発には乗らず、あくまで冷静に二人を諭すことにしましょう。多分この二人は何を言っても聞かない人種ですからね。

「俺が婚約破棄と言ったらそれは決定事項だ!つべこべ言うな!」

駄目ですわ。話になりません。

「アーロン様。貴方ははジャーマンダー公爵家の嫡男。将来は公爵家を継がれるお方です。そのような横暴な態度をお取りになるのは、感心しませんわ。それではまるで幼い子供ではありませんか」

何だか癇癪を起こした幼子を相手にしているような気分になった私は、ついアーロン様を諌めてしまった。
すると、アーロン様は両手をきつく握りしめて、顔を真っ赤にしていらっしゃいます。あら、怒らせましたわね。

「貴様!俺を侮辱したな!」

淑女に向かって貴様って………。
最早教育を施し直したほうがよろしいんじゃないかしら?
そんなことを呑気に考えていると、アーロン様がまた喚き散らした。

「おい、誰か!この女を引っ捕らえろ!不敬罪だ!」

貴様呼ばわりのあとは、この女呼ばわりですの?つくづく品の無い方ですこと。
呆れ果てて、その場に突っ立っていた私は、アーロン様の命令で駆けつけた騎士に呆気なく捕縛されてしまった。
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