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本編
第六話
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「だいぶ腫れているな。酷く痛むか?」
「いえ、大したことはございません」
冷たい水に浸したタオルを、王子殿下自ら頬に当てて下さる。畏れ多くて、治る傷も治らなくなりそうだわ。
「君のような聡明で美しい令嬢が、あのような子供じみた癇癪持ちの令息と婚約など、よく同意したものだ」
「お褒めに預かり光栄です。我が家は歴史だけは長い侯爵家ですが、公爵家の頼みは断れませんもの」
そう。歴史だけは長いマロウ侯爵家は、領地が旱魃に見舞われた時に、立て直しの為に多額の借金をした。一時は平民並みの暮らしをしていたんじゃないかしら?
それを見かねた公爵様が、アーロン様と私の婚約を条件に、借金を全額肩代わりして下さった。人質みたいなものですけど、別に私は気にしていない。結婚も婚約も、そういうものだと割り切っておりますもの。
それに、借金が無くなったおかげで弟にきちんとした教育を受けさせる事も出来たし、両親も楽になったのだから、私一人差し出せば良かったのだから、むしろ好条件だったのだし。
「そうか」
王子殿下は、探るような目つきで私を見てきた。別に私などご覧になっても、変わったものは何一つありませんけど?
「あの、何か?」
「いや、他にどこか怪我をしている所がないか確認していただけだ」
「お陰様で、他は無事ですわ。お手を煩わせて申し訳ございません」
「何故謝る?悪いのは全てあの男だろう」
「いえ、エルカリオンの王子殿下直々に手当をしていただくような身分ではございませんもの」
「私がそうしたいと思ったから手当している。何が悪い」
「悪い訳ではございません。恐縮しているだけです」
この拷問のような時間はいつまで続くのでしょう。先程の婚約破棄茶番劇の方がよっぽど気楽でしたわ。
「さて、大分遅い時間になってきた。ご両親も心配しているだろうから、屋敷まで送ろう」
「いえ、お申し出はありがたく頂戴しますが、一人で帰れますわ」
「私の言う事には、大人しく従いたまえ」
流石はエルカリオンの王子様命令することに慣れてらっしゃいますのね。
私もこれ以上逆らって機嫌を損ねたくないもの。それに、そもそも私が意見出来るような方ではない。危うくあの婚約者と同レベルになるところだったわ。
「では、よろしくお願いいたします」
私が大人しく頷くと、殿下は満足そうに微笑んだ。
「いえ、大したことはございません」
冷たい水に浸したタオルを、王子殿下自ら頬に当てて下さる。畏れ多くて、治る傷も治らなくなりそうだわ。
「君のような聡明で美しい令嬢が、あのような子供じみた癇癪持ちの令息と婚約など、よく同意したものだ」
「お褒めに預かり光栄です。我が家は歴史だけは長い侯爵家ですが、公爵家の頼みは断れませんもの」
そう。歴史だけは長いマロウ侯爵家は、領地が旱魃に見舞われた時に、立て直しの為に多額の借金をした。一時は平民並みの暮らしをしていたんじゃないかしら?
それを見かねた公爵様が、アーロン様と私の婚約を条件に、借金を全額肩代わりして下さった。人質みたいなものですけど、別に私は気にしていない。結婚も婚約も、そういうものだと割り切っておりますもの。
それに、借金が無くなったおかげで弟にきちんとした教育を受けさせる事も出来たし、両親も楽になったのだから、私一人差し出せば良かったのだから、むしろ好条件だったのだし。
「そうか」
王子殿下は、探るような目つきで私を見てきた。別に私などご覧になっても、変わったものは何一つありませんけど?
「あの、何か?」
「いや、他にどこか怪我をしている所がないか確認していただけだ」
「お陰様で、他は無事ですわ。お手を煩わせて申し訳ございません」
「何故謝る?悪いのは全てあの男だろう」
「いえ、エルカリオンの王子殿下直々に手当をしていただくような身分ではございませんもの」
「私がそうしたいと思ったから手当している。何が悪い」
「悪い訳ではございません。恐縮しているだけです」
この拷問のような時間はいつまで続くのでしょう。先程の婚約破棄茶番劇の方がよっぽど気楽でしたわ。
「さて、大分遅い時間になってきた。ご両親も心配しているだろうから、屋敷まで送ろう」
「いえ、お申し出はありがたく頂戴しますが、一人で帰れますわ」
「私の言う事には、大人しく従いたまえ」
流石はエルカリオンの王子様命令することに慣れてらっしゃいますのね。
私もこれ以上逆らって機嫌を損ねたくないもの。それに、そもそも私が意見出来るような方ではない。危うくあの婚約者と同レベルになるところだったわ。
「では、よろしくお願いいたします」
私が大人しく頷くと、殿下は満足そうに微笑んだ。
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