婚約破棄から始める真実の愛の見つけ方

玉響

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本編

第九話

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「公爵様。これは失礼を致しました」

私は慌てて淑女の礼をとる。

「いや、こちらの方こそうちのどうしようもない愚息が本当に申し訳ない事をした。あんな息子の婚約者を引き受けてもらったというのに、不貞を働いた挙げ句に一方的に婚約破棄を言い渡し、エリーゼ嬢を平手打ちし、それをエルカリオンの第二王子殿下に見咎められたのだなどとは、本当に情けない………」

公爵様、どうしようもない愚息って、分かってらっしゃったのですね。
公爵家嫡男という、優良物件の皮を被った不良債権という訳ですわね。

「しかし、平手打ちの件は私にも責任はありますわ。挑発したのは確かですもの。それに、公爵様には婚約と引き換えに我が家の借金を肩代わりして頂いておりますもの」

私はそう言って頬に触れる。まだ腫れてはいるけど、殿下の手当が迅速で適切だったお陰で酷くはなっていない。
そんな私を、お父様が心配そうに見ている。

「いや、エリーゼ嬢は何も悪くない。ただ、この件に関して、偶然その場に居合わせたエルカリオンの第二王子殿下が酷くご立腹でね。殿下の命令によって、実はアーロンは今、昨日の夜会会場となった離宮の地下牢に投獄されているのだ。例の浮気相手の令嬢も一緒にね」

………やはり地下牢に入れられたのですね。私を投獄しようとなさっていたのに、代わりに自らが入る事になるなんて思っても見なかったでしょうね。
でも、殿下の申し出って一体何なのかしら?

「アーロン様はご無事なのですか?」

私は一応婚約者なのだし、安否の確認位は必要ね。

「あやつは体だけは丈夫だからな。今朝、面会許可を出してもらって顔を見てきたが、威勢は良かったぞ」

公爵様、ご子息が投獄されているというのに呑気ですわね。

「それで、本日はどのようなご用件で?」

公爵様はお忙しい方だ。わざわざ謝罪だけで我が家を訪れるような時間はないはず。

「実は、今回の件について、国王陛下直々に愚息の処遇を決められる事になったのだ。それに伴い、当事者てあるマロウ侯爵及びマロウ侯爵令嬢の両名に、登城命令が出た事を伝えに来たのだよ」

はい?登城命令ですって?冗談ですよね。
それにいくら公爵家の子息が起こした騒ぎとは言っても、国王陛下が騒ぎの翌日に、それも直々に処分を決めるですって?そんなの聞いたことないわ。

「今から、私と共に来ていただきたい」

え、今からですの?
あまりの急展開に、私の思考は完全に停止した。
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