婚約破棄から始める真実の愛の見つけ方

玉響

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本編

第ニ十二話

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「このまま、城に戻る。エリーゼも一緒に来い」
「はい。かしこまりました」

いくらジェイド様の従者とはいえ、私のような属国の貴族令嬢がいきなりお城に入っても大丈夫なのかしら。

「そなたのことは、既に先触れで知らせてある。そう不安そうな顔をするな」

ジェイド様がふわりと笑う。その笑顔を見ると、少し胸の鼓動が早くなる。初めて味わう感覚ですか、旅の疲れが出たのでしょうか?

「しかし、そなたでも不安になることはあるのだな。あれだけの度胸がありながら………実に面白い令嬢だ」
「お言葉ですが、ジェイド様は私を一体何だとお思いですか?私はごく普通の令嬢ですわ人並みの感覚は持ち合わせております」
「馬鹿を言え。恋だの愛だのと騒ぎ立てる年頃の令嬢の口から、婚約は家の為の契約で、当人の気持ちは関係ないだの、恋愛結婚など夢物語だのという言葉を聞くのは初めてだったぞ。冷徹姫と言うよりも、冷然姫だな」

よくそんな事を覚えてらっしゃいますわね。それに冷然てすって?余計なお世話ですわ。

「論理的というか、実に無駄を省いた考え方ではありますね」

サイラス様がそっとフォローしてくださる。
ちなみに、サイラス様はジェイド様の幼馴染で、エルカリオン王国の侯爵令息なのだそうだ。クールな雰囲気だけれど、時折見せる人間味がサイラス様の良さだと思います。
それをジェイド様にお話したら、何故か物凄い形相で睨まれましたわ。
お聞きしたことはありませんけど、サイラス様にも婚約者がいらっしゃるのでしょうか。

あら?そういえばジェイド様はどうなのかしら。私が知る限りは婚約者はいらっしゃらなかったと思うのですけれど………。
エルカリオン王国の王族で、この容姿であればきっと引く手数多なのでしょうね。

「貴族たるもの、己は国の駒であると思えと父から叩き込まれましたので、このような性格になったのですわ」
「コーネリアス………娘への教えと、己の行動が噛み合っていないではないか」

………確かに、ジェイド様の突っ込みは正しいですわ。お父様って、物凄く賢いのにどこかで少し残念なのですよね。どちらかと言うとお母様の方がしっかりされているわね。

「そこが、父らしさだと思います」
「そうだな」

ジェイド様が、また笑う。
どうして、この方の笑顔を見ると、胸が苦しくて、そのくせ温かい気持ちになるのかしら。
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