88 / 102
番外編
第三話 試練のお茶会(その一)
しおりを挟む
結婚式の準備と王太子妃教育で目の回るような忙しい日々を送り、ようやく結婚式まであと二ヶ月と迫ったある日の昼下り。
私はとある侯爵家で開かれたお茶会に招待されていた。
正直乗り気ではなかったけれど、選り好みできるような立場ではない。(そんな事を言ったらまたジェイド様に怒られそうですけれどね)
「本日はお招きいただきありがとうございます」
私はホストであるアルテミア候爵夫妻とそのご子息、ご令嬢に挨拶をした。
候爵様は厳しそうな方で、夫人もどことなく神経質そうな方だ。
お子様方は私と同じ位のご年齢と思われるけれど、口数が少ない。
令嬢は心なしか私の方を睨んでいるような気がするけれど、気にしても仕方がないわね。
「こちらへどうぞ、公爵令嬢」
席への案内をしてくれたのは、そのご令嬢だった。確か名前はセシル嬢とか言ったかしら?
「ありがとうございます」
お礼を言う私を見る目に、明らかな侮蔑の眼差しが混ざっている。
私はあたりを見回した。
今日の招待客はあまり見知った顔も少なくて、その割に人数は多い。これは、場合によっては周り中敵だらけ………という可能性も考えられるわね。
でも、下手に動けばジェイド様にも、キャメロット公爵家のお義父様達にも迷惑を掛けてしまうことになりかねない。
どうするのが最善策なのか、どう動くべきかを見極める為に、私は少し様子を見ることにしたのだった。
「それにしても公爵令嬢は、恵まれておりますわねえ」
席について一番初めに声をかけてきたのは、やはりセシル嬢だった。
「元々は、属国の候爵令嬢だったのに、今では誇り高きエルカリオン王国王太子の婚約者だなんて、ねえ?」
セシル嬢が、口元にだけ意地悪な笑みを湛えた。
この方がロゼリア嬢と決定的に違うのは、セシル嬢は言葉では褒めて、態度で私をけなすということ。
あからさまに態度には出してこないと言うこと。
多分頭の出来はセシル嬢の方が何枚も上手なのだろう。
………これは、予想していたよりも
楽しいお茶会
になりそうね………。
私は人知れず、ため息をついたのだった。
私はとある侯爵家で開かれたお茶会に招待されていた。
正直乗り気ではなかったけれど、選り好みできるような立場ではない。(そんな事を言ったらまたジェイド様に怒られそうですけれどね)
「本日はお招きいただきありがとうございます」
私はホストであるアルテミア候爵夫妻とそのご子息、ご令嬢に挨拶をした。
候爵様は厳しそうな方で、夫人もどことなく神経質そうな方だ。
お子様方は私と同じ位のご年齢と思われるけれど、口数が少ない。
令嬢は心なしか私の方を睨んでいるような気がするけれど、気にしても仕方がないわね。
「こちらへどうぞ、公爵令嬢」
席への案内をしてくれたのは、そのご令嬢だった。確か名前はセシル嬢とか言ったかしら?
「ありがとうございます」
お礼を言う私を見る目に、明らかな侮蔑の眼差しが混ざっている。
私はあたりを見回した。
今日の招待客はあまり見知った顔も少なくて、その割に人数は多い。これは、場合によっては周り中敵だらけ………という可能性も考えられるわね。
でも、下手に動けばジェイド様にも、キャメロット公爵家のお義父様達にも迷惑を掛けてしまうことになりかねない。
どうするのが最善策なのか、どう動くべきかを見極める為に、私は少し様子を見ることにしたのだった。
「それにしても公爵令嬢は、恵まれておりますわねえ」
席について一番初めに声をかけてきたのは、やはりセシル嬢だった。
「元々は、属国の候爵令嬢だったのに、今では誇り高きエルカリオン王国王太子の婚約者だなんて、ねえ?」
セシル嬢が、口元にだけ意地悪な笑みを湛えた。
この方がロゼリア嬢と決定的に違うのは、セシル嬢は言葉では褒めて、態度で私をけなすということ。
あからさまに態度には出してこないと言うこと。
多分頭の出来はセシル嬢の方が何枚も上手なのだろう。
………これは、予想していたよりも
楽しいお茶会
になりそうね………。
私は人知れず、ため息をついたのだった。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
聖なる乙女は竜騎士を選んだ
鈴元 香奈
恋愛
ルシアは八歳の時に聖なる力があるとわかり、辺境の村から王都の神殿に聖乙女として連れて来られた。
それから十六年、ひたすらこの国のために祈り続ける日々を送っていたが、ようやく力も衰えてきてお役御免となった。
長年聖乙女として務めたルシアに、多額の金品とともに、結婚相手を褒賞として与えられることになった。
望む相手を問われたルシアは、何ものにも囚われることなく自由に大空を舞う竜騎士を望んだ。
しかし、この国には十二人の竜騎士しかおらず、その中でも独身は史上最年少で竜騎士となった弱冠二十歳のカイオだけだった。
歴代最長の期間聖乙女を務めた二十四歳の女性と、彼女より四歳年下の誇り高い竜騎士の物語。
三島 至様主催の『聖夜の騎士企画』に参加させていただきます。
本編完結済みです。
小説家になろうさんにも投稿しています。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる