国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

26.幼馴染

「久しぶりだね。その………元気だったかい?」

 ブルーノと呼ばれた青年は、ひらひらと手を振ってみせた。

「ええ。ブルーノも変わりなく、元気そうで安心したわ」

 見知った顔を見て、アルフォンシーナは作り笑いではない笑顔を、ようやく浮かべることが出来た。

 彼ーーーブルーノ・タルディッリはタルディッリ男爵家の嫡子で、アルフォンシーナの幼馴染だった。
 引っ込み思案で穏やかな性格の、目立たない男の子だったが、互いの母親が友人同士だったこともあり、幼い頃は良く遊んだ記憶がある。
 しかし六歳を過ぎて、互いに勉学が忙しくなってくると、自然に一緒に過ごす時間は少なくなり、成人する頃には殆ど会わなくなってしまった。

 デビュタントを済ませると、舞踏会で会うこともあり、その時にはパートナーとして踊ることもあった。

「………結婚、したんだね」

 てっきり、先程の騒ぎを聞きつけて声をかけてきたのだと思っていたアルフォンシーナは、少し拍子抜けした。
 思い起こしてみれば、ブルーノとは昨年の社交シーズンから会っていなかったし、結婚式も身内のみで行ったため、結婚後にブルーノと会うのは初めてだった。

「ええ。国王陛下のご命令で、シルヴェストリ侯爵に嫁ぐことになったのよ」
「…………うん、聞いたよ」

 短く答えたブルーノは、どこか悲しそうに笑う。
 もしかすると、自分だけ置いてけぼりにされてしまったと感じているのだろうか。
 アルフォンシーナはそんなブルーノを励ますように微笑んだ。

「ブルーノにも、素敵なご令嬢との歓談があるのではなくて?」

 ベルナルドに比べてしまうと、ずっと見劣りはするが、それでも背は高く、顔立ちも整っている方だ。
 本人が気が弱いことと、爵位が低く、しかも家があまり豊かではないという要因が難点となり、中々縁談は纏まらなかった。
 それでももうデビュタントから二年が経っているのだから、縁談が纏まっていてもおかしくは無い。
 だが、アルフォンシーナの問いかけに、ブルーノはふるふると首を振った。

「………それが、まだ…………」

 恥ずかしいのだろうか。ブルーノは栗色の瞳を隠すように目を伏せ、悲しそうな表情を作った。

「…………ごめんなさい。わたくし、てっきり…………」

 予想が外れ、アルフォンシーナは慌てた。
 おそらくその事実を一番気にしているのはブルーノ自身に違いなかったからだ。

「…………でも、きっと大丈夫よ。ブルーノはとても優しいもの」

 自信なさそうに俯くブルーノを励ますようにもう一度、アルフォンシーナは優しく微笑んだ。
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