国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

206.断罪(17)

「嘘ではないわ。本当の事よ。わたくしは何度も何度も、同じ事を伝えたけれど、聞く耳を持たなかったのはあなたなのよ?こんなつまらないことにわたくしの侍女のビアンカまで巻き込んで………。恥ずかしいとは思わなかったのかしら」

表情こそ変わらなかったが、アルフォンシーナの口調は明らかに怒りを含んでいた。
こんなに大勢の前で怒りを露わにしたのは生まれて初めてだったが、意外にも羞恥は感じなかった。

「恥ずかしい…………?ぼ、僕の………僕の、アリーに恋い焦がれる気持ちが、恥ずかしい………?!」

ブルーノは完全に混乱しているようだった。
いつもオドオドとして落ち着かなかった地味な栗色の瞳はまるで焦点が合っていない。
それに、身体は小刻みに震えているように見えた。

「あなたの気持ちを全て否定する訳では無いけれど、それでもわたくしはあなたの気持ちには応えられないし、応えるつもりも一切ないわ」

もう彼は、自分の知っている幼馴染の男の子『ブルーノ・タルディッリ』ではない、と言い聞かせながら、彼を切り捨てるようにそう言い放った。

「………………!」

ブルーノの、声にならない悲鳴が部屋に響き渡った。
同時に彼はその場に倒れ込む。その様は、まるで魂が抜き取られたかのようだった。

あまりのことに、それを目の当たりにしたアルフォンシーナも、フェルディナンドや周囲に控えた貴族達も、皆呆然としながらその様子を見つめていた。

「………まあ、みっともないこと」

どれくらい時間が過ぎただろう。
異様な沈黙を打ち破ったのは、いかにも気の強そうな、若い女性の声だった。

「これが『国一番の淑女』のやる事なの?下品で低俗だわ。流石は伯爵家ごときの出身よね?いよいよメッキが剥がれてきたのではなくて?」

先程までベルナルドに一喝されて怯えていた女性とは思えないような態度で、レベッカ・ベッリーニ侯爵令嬢が吐き捨てた。

「………ここには多くの貴族の方々が集まっていらっしゃいます。………何より、陛下の御前。発言には、気を付けた方がよろしいのではありませんか?」

実際に淑女としてあるまじき言動をしたのだから、別に自分が責められるのは構わなかったが、実家と同等以下の貴族たちまで貶められるのは我慢が出来ず、アルフォンシーナはレベッカに対してやんわりと反論した。
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