国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

215.断罪(26)

「…………だそうですが、陛下?」

にやりと皮肉げな笑みを口元に浮かべたベルナルドは、フェルディナンドの肩を叩いた。
するとフェルディナンドは大袈裟な程に溜息をついた。

「そなたが本気でそう信じているのならば、ある意味幸せだろうな」
「そ………それは、どういう…………?」

ベッリーニ侯爵は、言われている意味が分からず、瞬きを繰り返している。
すると、フェルディナンドはすうっと目を細めた。

「マヌエル・ベッリーニ。………私はね、そなたが必死になって父に媚びへつらう態度に、ずっと不信感を抱いていた。………そして、それは父も同じだった。あの者を信用してはならないと、私に何度も忠告してくれた。………それが、ある日突然父が病に倒れた途端、その意思が真逆に変わるだなんて、………あまりにも奇妙だと思わないか?」

穏やかで優しい、フェルディナンドの声から温かみが消えた。
だがアルフォンシーナがそれ以上に驚いたのは、フェルディナンドによって語られ始めた過去の出来事だった。

(………確かに、ベッリーニ侯爵は先王陛下が病でお倒れになった直後に宰相に任命されたと聞いているけれど…………)

フェルディナンドが話し始めた途端、室内は重苦しい空気で満たされた。
それは、フェルディナンドの国王としての威厳というよりも、彼自身から醸し出される雰囲気の影響だろう。
彼の隣にいるベルナルドも、フェルディナンドと同じく、暗い空気を纏っていた。

「わ………私は…………」

今までにないほどに唇を戦慄かせるベッリーニ侯爵の言葉は、消え入りそうな程に、小さかった。

「………病を利用して、意識の戻らない父から『宰相』に任命されたという事実を捏造したと、確信したよ。ここにいる者達も知っているように、父はそう簡単に意見を曲げるような方ではなかったからね」

フェルディナンドの言葉に、何人かの貴族達が小さく頷くのが見える。
アルフォンシーナ自身は先王がどのような人物であったのかは知らないが、周囲の反応を見る限り、フェルディナンドの言っている事は間違いないだろう。

「そ…………れは…………」

言い訳すら浮かんでこないらしいベッリーニ侯爵は狼狽し、言い訳すらも出来ずにただ青褪めた顔を強張らせていた。
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