国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

222.マダムの逆襲(2)

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「貴様、私が下手に出ていれば付け上がりおって………!」

 あれほど親密そうだったマダムに対しても暴言を浴びせ始めた事からも、ベッリーニ侯爵が相当余裕がなくなってきていることが見て取れた。

「下手?どこがですの?芋虫のような無様な姿を晒して、床に這いつくばった体勢ならある意味『下手』なのかもしれませんけれど………少なくとも態度の点からは、寧ろ上からしか物を言ってらっしゃらないと思いますわ」

 対するマダム・バルバラはくすくすと小さく笑い声を上げる。
 どちらが優位なのかは、一目瞭然だった。

「おのれ…………っ!」

 言葉や顔で凄んで見せても、マダム・バルバラの指摘通り、手も足も出ない状態のベッリーニ侯爵を恐れる者などいなかった。
 彼に向けられるのは、嘲笑と、軽蔑のみ。
 それでも何とか助かろうと、ベッリーニ侯爵は必死の形相を浮かべた。

「…………実に愚かで、見苦しいですわね」

 強い嘲りを含んだマダム・バルバラの声が朗々と響いた。
 そして、徐ろに着ていたドレスの裾をたくし上げ始めた。
 人前、しかも国王の前でそのような行動に出たマダム・バルバラから、皆ぎょっとして目を背ける。
 しかし彼女自身は気にする様子はなかった。
 そして、魅惑的な太腿を飾る黒いレースのガーターベルトに挟み込まれた書状のようなものを取り出した。

(淑女としてはあり得ない行動だけれど………潔いし格好良いわ……)

 アルフォンシーナは、マダムの姿を眺めながらそんな事を考えていた。
 アルフォンシーナにとってのマダム・バルバラは、自分とはある意味真逆の存在でありながらも、どこか心惹かれる存在であることに違いなかった。

「先程から聞いていれば言い訳と言い逃れ、それに罵倒と責任転嫁ばかり。………それでよく自分が『有能な宰相』だと思い込めたものですわねぇ………」

 マダム・バルバラは再び小馬鹿にしたような笑い声を上げた。

「貴様、私のお陰でどれだけいい思いをさせて貰ったと思っている!この、恩知らずが!!」

 完全に頭に血が昇ったらしいベッリーニ侯爵が大声でそう叫んだ。
 途端にマダム・バルバラは浮かべていた笑みを更に強くし、満足気な、そして勝ち誇ったような表情を浮かべたかと思うと、静かに頷いた。
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