国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

文字の大きさ
238 / 390
本編(アルフォンシーナ視点)

237.ソフィアの心配

しおりを挟む
そのまま一頻り泣いたが、アルフォンシーナの心が晴れることはなかった。
何故ならば、晩餐の後に話があるとベルナルドに告げられていたからだ。

「……………」

アルフォンシーナは静かに溜息を零し、窓の外を見た。
あんな出来事があったというのに、広がっている景色が変わることはない。
空を覆う雲も、風にざわめく木々も、いつも通りだった。
それはまるで、ベルナルドとアルフォンシーナの関係のように思えて、アルフォンシーナは口元に皮肉げな笑みを浮かべた。

ちょうどその時、部屋の扉を叩く音が聞こえた。

「奥様、晩餐のお時間でございます」

ソフィアでも、ビアンカでもない侍女の声が、アルフォンシーナが今一番聞きたくない言葉を、告げた。

「……………っ」

返事をしようと口を開きかけて、アルフォンシーナは動きを止めた。
ーーーいっそのこと、具合が悪いと断ってしまおうか。
そんな考えが、不意に浮かんできた。
だが、晩餐を断ったところで、ベルナルドからの話がなくなるわけではないし、体調が悪いことを理由にしても、ただこの憂鬱で重たい時間が先送りになるだけのことだ。
そうなれば、より長い間苦しまなければいけなくなる。

「………今、行きますね」

力の入らない指先に無理矢理力を込めると、アルフォンシーナはゆっくりと立ち上がった。
アルフォンシーナのすぐ近くに控えていたソフィアが、また心配そうに眉根を寄せる。
アルフォンシーナの心が不安定なままであることを察しているのだろう。

「………大丈夫よ。疲れているだけだから」
「お体の調子が優れないのであれば、お食事をお部屋に運んで参りますが…………?」

ソフィアの申し出に、アルフォンシーナはやや目を伏せ、首を横に振った。

「気遣いはとても嬉しいのだけれど………。今宵は旦那様もいらっしゃるわ。だから、行かなければならないの」

まるで自分自身に言い聞かせるかのように、アルフォンシーナは語気を強めた。
幾ら気乗りがしないとは言っても、義務だと思えば大した事ではないと思えたからだ。

ソフィアは反論こそしなかったが、じっとアルフォンシーナを見つめてきた。
そんな彼女を安心させようと、アルフォンシーナはいつも通り優雅に微笑んで見せると、ゆったりとした足取りで扉の方へと向かったのだった。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

処理中です...