国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

259.最後の訪問

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支度が整うと、アルフォンシーナは用意された馬車に乗り、シルヴェストリ侯爵邸へとやってきた。

馬車から降り、よく手入れされた庭を抜け、屋敷の前までやってくると、アルフォンシーナは建物を見上げた。
離れていたのはそんなに長い期間ではないのに、酷く懐かしく感じられる。

「奥様、お待ちしておりました」

アルフォンシーナが感傷に浸っていると、エントランスの前で待っていたオリヴァーが声を掛けてくれた。

「オリヴァー………」

何も言わず、オリヴァーは深く頷いた。
そして恭しくお辞儀をすると、扉を開け放った。

しかしアルフォンシーナはいつもの違うオリヴァーの様子に違和感を覚えた。
普段であれば、愛想よく微笑み返してくれるオリヴァーだったが、今日は表情も硬く、どこかぎこちなかったのだ。
ーーーシルヴェストリ侯爵夫人ーーーつまりこの屋敷の女主人として接するのももうあと僅かだからこそ、彼女に対して余所余所しい態度をとったのかもしれない。

ベルナルドのことだけでも頭の整理が付かないというのに、その上自分に寄り添ってくれた使用人たちまで、となると、アルフォンシーナの心は更に沈んだ。

そうとは知らないオリヴァーの先導で、よく見知った廊下を進んでいくと、彼は応接室の前で立ち止まった。

「………こちらで、旦那様が奥様をお待ちでいらっしゃいます」

オリヴァーが再び微笑むわけでもなく、恭しく頭を下げる。
アルフォンシーナも軽く頷いた。

ゆっくりと扉が開かれる。
アルフォンシーナの視線は、憂い気な表情を浮かべるベルナルドの姿に、自然と惹きつけられた。

彼は部屋の中心にいるだけで、この空間を支配しているような、圧倒的な存在感を放っていた。
そんな彼を見ただけで、アルフォンシーナの心は、甘く、切なく疼き出す。
しかも、これが彼と二人きりで顔を合わせる最後の機会だと思うと、強い絶望感が同時に押し寄せた。

「………お待たせして、申し訳ありません」

自分自身を押さえつけ、必死に微笑みを浮かべると、何とか喉の奥から声を絞り出した。
するとベルナルドはアルフォンシーナをじっと見つめ、ゆっくりとアルフォンシーナの方へ近づいてきた。

「………待っていたよ、アルフォンシーナ………」

ベルナルドは甘く、優しい声でアルフォンシーナに向かってそう囁いた。
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