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本編(アルフォンシーナ視点)
304.街中デート
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実を言うと、アルフォンシーナはこうして街を歩くのは、初めての経験だった。
深窓の令嬢、と言えば聞こえは良いかもしれないが、実際のところは厳しい淑女教育で外出する暇などなかったのだ。
勿論、馬車に乗って街中を通ったことはあるし、幼い頃にパルヴィス伯爵家の領地にある小さな街であれば、両親や乳母と共に出掛けた記憶はある。
だが、王都の街へと出たことは殆んど無い。
それ故に、目に映る光景一つ一つが新鮮だった。
パン屋から漂ってくる香ばしい匂い。
家具屋から聞こえる、木材を切る音。
靴屋の窓辺に飾られた、美しい刺繍の靴。
歩く度に新しいものがアルフォンシーナの五感を擽った。
「馬車から見る景色とは、全く違うのですね」
物珍しそうに辺りを見回しながら、アルフォンシーナはやや興奮気味に声を上げた。
「そうだな。やはり扉を一枚隔ててしまうと見え方も感じ方も違うだろう。それに、実際に歩いてみないと味わえないことも沢山あるんだ」
ベルナルドはにやりと笑うと、とある店の前で足を止めた。
「ご主人。いつものを二つ頼む。メインはそうだな………これを挟んでくれ」
店主に声を掛けたベルナルドは、店の前に並べられたプロシュットやサルシッチャの中の一つを指差してから、徐ろにジャケットの胸元を探ると、硬貨を取り出した。
買い物の仕方一つすらも分からないアルフォンシーナにとっては、そのやり取りすらも興味深く、彼女はベルナルドに釘付け状態だった。
「はいよ!兄ちゃん、今日は上等な服を着て、彼女とデートかい?」
どうやらベルナルドと顔見知りらしい店主は冷やかすように口笛を吹きながら楽しそうに笑った。
「彼女じゃなくて、妻なんだ」
ベルナルドはさりげなく訂正をすると、店主が何やら包み紙を二つ、差し出してきた。
「アルフォンシーナ」
じっと見つめていると、包みを手にしたベルナルドが、嬉しそうな表情を浮かべて何やら招きをする。
「ここの店のプロシュットは最高でね。パンに挟んで、パニーニにしたものがまた格別なんだ」
渡されたパニーニの包はほんのりと温かかった。
「毒見は、私がするからあなたは安心して食べてくれ。………朝から殆んど食事をしていないだろう?」
流石の洞察力、と言うべきなのだろうか。
ベルナルドの言葉に、アルフォンシーナは驚いた。
そして同時に、ベルナルドの優しさを改めて知り、アルフォンシーナは胸の奥が温かくなるのを感じたのだった。
深窓の令嬢、と言えば聞こえは良いかもしれないが、実際のところは厳しい淑女教育で外出する暇などなかったのだ。
勿論、馬車に乗って街中を通ったことはあるし、幼い頃にパルヴィス伯爵家の領地にある小さな街であれば、両親や乳母と共に出掛けた記憶はある。
だが、王都の街へと出たことは殆んど無い。
それ故に、目に映る光景一つ一つが新鮮だった。
パン屋から漂ってくる香ばしい匂い。
家具屋から聞こえる、木材を切る音。
靴屋の窓辺に飾られた、美しい刺繍の靴。
歩く度に新しいものがアルフォンシーナの五感を擽った。
「馬車から見る景色とは、全く違うのですね」
物珍しそうに辺りを見回しながら、アルフォンシーナはやや興奮気味に声を上げた。
「そうだな。やはり扉を一枚隔ててしまうと見え方も感じ方も違うだろう。それに、実際に歩いてみないと味わえないことも沢山あるんだ」
ベルナルドはにやりと笑うと、とある店の前で足を止めた。
「ご主人。いつものを二つ頼む。メインはそうだな………これを挟んでくれ」
店主に声を掛けたベルナルドは、店の前に並べられたプロシュットやサルシッチャの中の一つを指差してから、徐ろにジャケットの胸元を探ると、硬貨を取り出した。
買い物の仕方一つすらも分からないアルフォンシーナにとっては、そのやり取りすらも興味深く、彼女はベルナルドに釘付け状態だった。
「はいよ!兄ちゃん、今日は上等な服を着て、彼女とデートかい?」
どうやらベルナルドと顔見知りらしい店主は冷やかすように口笛を吹きながら楽しそうに笑った。
「彼女じゃなくて、妻なんだ」
ベルナルドはさりげなく訂正をすると、店主が何やら包み紙を二つ、差し出してきた。
「アルフォンシーナ」
じっと見つめていると、包みを手にしたベルナルドが、嬉しそうな表情を浮かべて何やら招きをする。
「ここの店のプロシュットは最高でね。パンに挟んで、パニーニにしたものがまた格別なんだ」
渡されたパニーニの包はほんのりと温かかった。
「毒見は、私がするからあなたは安心して食べてくれ。………朝から殆んど食事をしていないだろう?」
流石の洞察力、と言うべきなのだろうか。
ベルナルドの言葉に、アルフォンシーナは驚いた。
そして同時に、ベルナルドの優しさを改めて知り、アルフォンシーナは胸の奥が温かくなるのを感じたのだった。
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