国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

335.不信感

結局ベルナルドは、それ以上フェルディナンド達に近づくことはなく、離れたところから動く事もなかった。

再びアルフォンスが眠りについたタイミングで、お披露目も終了となったが、帰路につくまで、ベルナルドが何か話す事もなく、深く考え込んでいるかように、俯いているだけだった。

「………あの、ベルナルド様………?」

広間を退出し、廊下へと出た時にアルフォンシーナは勇気を出して声を掛けた。
ベルナルドはアルフォンシーナの声に、びくりと肩を揺らし、立ち止まった。

「………どうした?」

答える声は、いつもと同様に優しく穏やかなのに、彼が纏う空気はどうしてこんなにも殺伐としているのだろう。
一瞬怯みそうになりながらも、アルフォンシーナはベルナルドの袖口を掴みながら口を開く。

「今日は、お加減でも悪くていらっしゃるのですか?」

深いサファイア色の瞳を真っ直ぐにベルナルドに向けると、ベルナルドは一瞬怯んだように身を固くした。

「………いや、何の問題もないが?………何故、そんな事を聞いてくる?」

妙な間を置いて、ベルナルドは微笑む。
一見普通の笑顔だったが、アルフォンシーナの目には、どこかぎこちないように映った。
確かに、様子がおかしい以外は、顔色などには異常はなかった。

体調でもないとすると、彼から感じるこの違和感は一体何なのだろうか。
何故、彼は何も言ってくれないのだろうか。
考えれば考える程に、アルフォンシーナの中の不安は募っていく。

(もしかしたら、ベルナルド様はわたくしの事を信用していないのかしら………)

恋愛感情と信頼は、全くの別物だ。
お互いに好き合っていて、法律上は夫婦であっても、ベルナルドが自分に手を出さないのは、もしかしたらそれが原因なのかもしれない。
そう考え始めると、アルフォンシーナの心の中は一気に絶望で塗り潰されていく。

「………そう………ですか………。それなら良いのですが………。申し訳ございません。………わたくしの、勘違いだったようです」

感情を表に出さないようにするのは何よりも得意なはずなのに、言葉すらもうまくでてこなかった。
それをひた隠すように、アルフォンシーナは必死に微笑んだ。
そしてアルフォンシーナは、そっとベルナルドの袖口を掴んでいた手を離し、彼を解放したのだった。
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