婚約者の断罪

玉響

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6.苦悩

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私は重い足取りでビバーナム伯爵家に戻りました。
そもそも、婚約者のがいるのに、別のご令嬢と二人きりで会うこと自体が後ろ指をさされる行為です。しかも、婚約者のいないマティルダ嬢をゼフィランサス侯爵家の内輪のパーティーに誘うということは、バイロン様とマティルダ嬢が親しい間柄だと周囲に知らしめるようなものです。
決定的な言葉こそ出ませんでしたが、マティルダ嬢がバイロン様に甘えるような声で話し掛け、それをバイロン様が優しく受け止めるやり取りを聞いていたら、私は何だか自分が惨めになりました。
バイロン様の事を、信じたかった気持ちが裏切られたと感じたのかもしれません。

「ミリー、ごめんなさい。私が余計なことを………」
「リアのせいじゃありません。私が自分で選んだことなのです………」

力無く笑うと、セシリアは私を抱きしめてくれました。
我慢していた涙が、自然と溢れ出します。

「ごめんなさい………泣くつもりはなかったのですが………」
「ミリー………」

きっと、私がマティルダ嬢に嫌がらせをしていたというマティルダ嬢の言葉を、バイロン様は信じたに違いありません。
私の、控え目で穏やかな性格を褒めてくださったバイロン様は、私に落胆したでしょう。
バイロン様に嫌われてしまう………。そう思うと、私は堪らなく苦しい気持ちになりました。
でも、マティルダ嬢の言葉が嘘だとバイロン様に弁明しても信じてもらえるか分かりません。
マティルダ嬢が私に嫌がらせをしている所を見たと証言してくれる人でもいれば話は別ですけれど………。
やっぱり嫌われるくらいなら、私から婚約破棄を申し出たほうが私の心はこれ以上傷つかずに済むでしょうか。

「でも、バイロン様もバイロン様よ!どうして婚約者であるミリーを庇わないであんな女の言い分を信じるの?!私のミリーの婚約者の癖に、あんな女に絆されて、頭がおかしいんじゃないかしら?!」

セシリアの怒りが、バイロン様に向けられています。
こんな気持ちなのに、セシリアにバイロン様を悪く言われると、悲しい気持ちになる私はおかしいのでしょうか。
バイロン様のことを考えれば考えるほど、気持ちが迷子になっていきます。
いっその事、バイロン様の事が嫌いになれればいいのに………。
バイロン様を思い浮かべるだけで高鳴る胸を今支配しているのは、苦悩でした。
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