51 / 52
番外編(ミオ一人称)
少し苦い
しおりを挟む
焦げ臭さが鼻をついて、私は慌てて石窯に駆け寄った。
「あぁ……ちょっと焦げちゃったなぁ……」
急いで取り出したものの、こんがりしすぎたパンを見て溜め息をつく。
このお屋敷には魔法も電気もないから、調理をするときは基本的に直火。タイマーなどない。
パン自体はリエーフさんが作ったもので、私は焼くだけなんだけど。焼き加減を間違えれば消し炭なので、その焼くだけが難しい。
「でも食べられないことはない、よね」
捨てちゃうのは勿体ないので、良しとする。
一応伯爵家のご当主様に出す食事がこんなのでいいのかなとは思うけど。まぁ、多分怒らないだろう。雇い主に対して随分な態度かとは思うけれども今更だ。そもそも、私は掃除婦である。
……といって、街へ買い出しに行くというリエーフさんにお昼の用意を申し出たのは自分自身なんだけど。
とにかく、用意はした。と開き直ったところで、丁度ミハイルさんが顔を覗かせる。
「あ、ごめんなさい。お昼、いつもの時間より遅くなっちゃいました」
リエーフさんは料理の腕も去ることながら、定時を1分足りとも過ぎたことがない。
「リエーフはどうした」
「買い出しに行くと言うので引き受けました」
「いつも作ってから出かけている。わざわざお前がしなくともいいだろう」
「すみません、出すぎたことをして。リエーフさんみたいに上手く作れないのに」
「そういう意味じゃない」
不機嫌そうに言って、ミハイルさんが椅子を引く。
「ダイニングまで運びますよ」
キッチンにもテーブルはあるけど、どちらかというと調理用のものであまり広くはない。が、「構わん」と一言で却下された。
「確かに、ダイニングに並べるような豪華なものじゃないですけど」
「だからそういう意味ではない」
「でもパン焦がしちゃいましたし……」
「これぐらいの方が俺は好きだが」
言いながら、ぞんざいにパンを掴んで口に運ぶ。
「……優しいんですね」
「単に好みを言っただけだ」
「でも嬉しいです。私掃除は好きだけど料理はそんなに得意じゃなくて……、パンもろくに焼けないのかとよく言われましたね」
オーブントースターを使っても、子供の頃はよく焦がした。タイマーの微妙な加減がうまくいかなくて……、タイマーあっても駄目だったんだから、石窯を使いこなせるわけもなかった。
「別に気を遣ったわけじゃないぞ」
「それでもです」
「……旨い」
料理に口をつけてミハイルさんが呟く。それが例え気遣いでもお世辞でも、嬉しいことに変わりはない。
「何を笑ってる。お前も早く座って食え」
「あ……、ごめんなさい。つい調子に乗ってしまって」
にやけてたかもしれない……恥ずかしい。慌てて顔を引き締め、椅子を引く。
手を合わせて、フォークを取る。いつも通りの静かな食事が始まる。……と思ったのだけど。
「……乗ればいいんじゃないか。掃除なり料理なり、俺にはそこまでできんからな」
珍しく、ミハイルさんが静寂を割く。
「それは、ミハイルさんと違って私は一般庶民ですから。家でも仕事でも、やらなきゃ生きていけないだけで……それに、こんなのその気になれば誰だってできます」
「そうでもないだろう。お前は他人のことには鋭いが自分のことには疎いんだな」
「そんなことないですよ。実際、今まで褒められたことなんてないですし」
「…………」
「あ……その。だから、お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」
また沈黙が訪れる。そんなつもりじゃなかったけど、ネガティブな話をされたら気分良くないよね……。でも、自分で自分の評価をするのは難しい。過大評価してしまって口ほどにもないと思われるくらいなら、思ったよりマシだった、くらいの方が楽だし。
……こんな風に気を遣うから、会話は苦手だ。
「……何故」
もう今日は黙っていようと密かに決めて食事に集中する。だから、シルバーと食器が触れる音で、それを聞き逃しそうになった。それほど小さな声だった。だけど多分気のせいじゃない。私が食事の手を止めたのを見てミハイルさんも手を止める。
「何故そこまでする?褒められもせず文句まで言われながら、他人のために」
じっと見つめられて、少し戸惑う。そんなの考えたこともなかった。でも。
「他人じゃなくて、家族のため、だからでしょうか」
「……家族とは、そういうものか」
短く答えて、ミハイルさんが視線を落とす。
無神経なこと言っちゃったかもしれない。ミハイルさんの両親は亡くなっているのに。
「……ごめんなさい」
「謝らなくていい。生きていたところで、きっと俺には理解できん」
私が謝った理由を、ミハイルさんは的確に察してくれたようだった。だけどつまらなそうに答えて、食事を再開する。
……今までの話を聞くに、ミハイルさんが両親に良い印象を持っていないのは、なんとなくわかるんだけど。
「ミハイルさんは……ご両親のこと、嫌いだったんですか?」
「いや、特にそんな感情もない。父親にとって俺は次期当主でしかなかったし、母親にとっては化物でしかなかった。話しかけようものなら『無駄話をするな、笑うな、常にプリヴィデーニ家嫡男として考え振る舞え』だったな」
それは……不愛想に育ったのも仕方ないという気もするな。
「今何か失礼なことを考えただろう」
「い、いえ。その……笑うなは私も言われました。笑顔が可愛くないからと」
相変わらず勘が鋭い。話を逸らすために、ふと思い出したことを口にする。同意されるかと思ったが、ミハイルさんは少し眉を顰めた。
「……そんなことは」
「気を遣わないで下さい。実際そうなんですよ。仕事にならないからすごく練習したんです」
「あぁ……だからたまに張り付けたような変な笑い方をするんだな」
「変……ですか?」
どうしてだろう。
貶されたのに、何故か私、嬉しい。
かなり努力して身につけた営業スマイルなのに。お客さんにも職場の人にも変だなんて言われたことないのに。
「ああ、変だ。さっきのにやけ顔の方がずっといい」
「……酷いです……」
「ふっ」
「なんで笑うんですか……」
言いながら自覚してる。顔、赤くなってるんだろうなぁ……
確かに私、変だ。頑張った笑顔よりも、変なにやけ顔を持ち出されて嬉しいなんて。
「……ミハイルさんも、今みたいな顔の方がいいですよ」
それが何か悔しくて言い返してみると、彼は笑顔を消してしまった。
「世辞は結構だ。どうせ見せる相手もない」
ミハイルさんが立ち上がる。いつの間にか彼のお皿は空になっていて、片付けようとするのを止める。
「あ、私片付けますからそのままで」
「…………」
「あの、ミハイルさん」
迷うようにこちらを見る目が。いつも表情のない黒い目が、どこか寂しそうに見えてしまった。でも呼びかけたのを後悔した。何を言おうとしたんだろう、私は。
私が居ますとでも言うつもりだったんだろうか。おこがましいにも程がある。それに……私はいつかここを出ていくと公言してるのに。
だけど呼びかけたのをなかったことにもできなくて。
「も、もし……もしもですよ。私がお屋敷を出て、それでも帰る方法が見つからなかったら……また、ここで雇ってくれませんか?」
本当に、何を言っているんだろう。そんな保証のない、もしもの話を。だけど帰れるという保証もないのだ。だから、そう、最悪の場合を想定しておくことも必要だから。
「もしかしたらその頃には、使用人もいっぱいいるかもしれませんけど! できれば掃除婦の枠を一つ、開けておいてもらえないかなと……」
「……断る」
う、うそ。断られた。
「じゃあ、こんな食事でよければ調理要員でも構わないので。とにかく使用人を一人分……」
「断る」
「……酷い。どうしてですか」
からかわれているのだろうか。寂しそうに見えたのは私の気のせいだったのかな。食い下がるのを諦めて不満を表情に乗せると、彼も似たような顔をした。
「それ以外ならいつでも」
「それ以外?」
「いや。……帰れるさ、きっと」
疑問の声を上げる私に近づくと、彼はそう言って私の頭に手を置いた。
「待っている家族がいるんだろう。帰れないかもなどと考えるな」
「……そう、ですね。ありがとうございます……」
大きな手。今日は……手袋をしていなかった。
笑おうとしたのにできなかった。それでも何とか練習した笑顔を張り付けると、ミハイルさんは私から手を離し、そのままキッチンを出ていった。
まだ少し残っている、自分のお皿に視線を移す。
少し焦げたパンは、少し苦かった。
「あぁ……ちょっと焦げちゃったなぁ……」
急いで取り出したものの、こんがりしすぎたパンを見て溜め息をつく。
このお屋敷には魔法も電気もないから、調理をするときは基本的に直火。タイマーなどない。
パン自体はリエーフさんが作ったもので、私は焼くだけなんだけど。焼き加減を間違えれば消し炭なので、その焼くだけが難しい。
「でも食べられないことはない、よね」
捨てちゃうのは勿体ないので、良しとする。
一応伯爵家のご当主様に出す食事がこんなのでいいのかなとは思うけど。まぁ、多分怒らないだろう。雇い主に対して随分な態度かとは思うけれども今更だ。そもそも、私は掃除婦である。
……といって、街へ買い出しに行くというリエーフさんにお昼の用意を申し出たのは自分自身なんだけど。
とにかく、用意はした。と開き直ったところで、丁度ミハイルさんが顔を覗かせる。
「あ、ごめんなさい。お昼、いつもの時間より遅くなっちゃいました」
リエーフさんは料理の腕も去ることながら、定時を1分足りとも過ぎたことがない。
「リエーフはどうした」
「買い出しに行くと言うので引き受けました」
「いつも作ってから出かけている。わざわざお前がしなくともいいだろう」
「すみません、出すぎたことをして。リエーフさんみたいに上手く作れないのに」
「そういう意味じゃない」
不機嫌そうに言って、ミハイルさんが椅子を引く。
「ダイニングまで運びますよ」
キッチンにもテーブルはあるけど、どちらかというと調理用のものであまり広くはない。が、「構わん」と一言で却下された。
「確かに、ダイニングに並べるような豪華なものじゃないですけど」
「だからそういう意味ではない」
「でもパン焦がしちゃいましたし……」
「これぐらいの方が俺は好きだが」
言いながら、ぞんざいにパンを掴んで口に運ぶ。
「……優しいんですね」
「単に好みを言っただけだ」
「でも嬉しいです。私掃除は好きだけど料理はそんなに得意じゃなくて……、パンもろくに焼けないのかとよく言われましたね」
オーブントースターを使っても、子供の頃はよく焦がした。タイマーの微妙な加減がうまくいかなくて……、タイマーあっても駄目だったんだから、石窯を使いこなせるわけもなかった。
「別に気を遣ったわけじゃないぞ」
「それでもです」
「……旨い」
料理に口をつけてミハイルさんが呟く。それが例え気遣いでもお世辞でも、嬉しいことに変わりはない。
「何を笑ってる。お前も早く座って食え」
「あ……、ごめんなさい。つい調子に乗ってしまって」
にやけてたかもしれない……恥ずかしい。慌てて顔を引き締め、椅子を引く。
手を合わせて、フォークを取る。いつも通りの静かな食事が始まる。……と思ったのだけど。
「……乗ればいいんじゃないか。掃除なり料理なり、俺にはそこまでできんからな」
珍しく、ミハイルさんが静寂を割く。
「それは、ミハイルさんと違って私は一般庶民ですから。家でも仕事でも、やらなきゃ生きていけないだけで……それに、こんなのその気になれば誰だってできます」
「そうでもないだろう。お前は他人のことには鋭いが自分のことには疎いんだな」
「そんなことないですよ。実際、今まで褒められたことなんてないですし」
「…………」
「あ……その。だから、お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」
また沈黙が訪れる。そんなつもりじゃなかったけど、ネガティブな話をされたら気分良くないよね……。でも、自分で自分の評価をするのは難しい。過大評価してしまって口ほどにもないと思われるくらいなら、思ったよりマシだった、くらいの方が楽だし。
……こんな風に気を遣うから、会話は苦手だ。
「……何故」
もう今日は黙っていようと密かに決めて食事に集中する。だから、シルバーと食器が触れる音で、それを聞き逃しそうになった。それほど小さな声だった。だけど多分気のせいじゃない。私が食事の手を止めたのを見てミハイルさんも手を止める。
「何故そこまでする?褒められもせず文句まで言われながら、他人のために」
じっと見つめられて、少し戸惑う。そんなの考えたこともなかった。でも。
「他人じゃなくて、家族のため、だからでしょうか」
「……家族とは、そういうものか」
短く答えて、ミハイルさんが視線を落とす。
無神経なこと言っちゃったかもしれない。ミハイルさんの両親は亡くなっているのに。
「……ごめんなさい」
「謝らなくていい。生きていたところで、きっと俺には理解できん」
私が謝った理由を、ミハイルさんは的確に察してくれたようだった。だけどつまらなそうに答えて、食事を再開する。
……今までの話を聞くに、ミハイルさんが両親に良い印象を持っていないのは、なんとなくわかるんだけど。
「ミハイルさんは……ご両親のこと、嫌いだったんですか?」
「いや、特にそんな感情もない。父親にとって俺は次期当主でしかなかったし、母親にとっては化物でしかなかった。話しかけようものなら『無駄話をするな、笑うな、常にプリヴィデーニ家嫡男として考え振る舞え』だったな」
それは……不愛想に育ったのも仕方ないという気もするな。
「今何か失礼なことを考えただろう」
「い、いえ。その……笑うなは私も言われました。笑顔が可愛くないからと」
相変わらず勘が鋭い。話を逸らすために、ふと思い出したことを口にする。同意されるかと思ったが、ミハイルさんは少し眉を顰めた。
「……そんなことは」
「気を遣わないで下さい。実際そうなんですよ。仕事にならないからすごく練習したんです」
「あぁ……だからたまに張り付けたような変な笑い方をするんだな」
「変……ですか?」
どうしてだろう。
貶されたのに、何故か私、嬉しい。
かなり努力して身につけた営業スマイルなのに。お客さんにも職場の人にも変だなんて言われたことないのに。
「ああ、変だ。さっきのにやけ顔の方がずっといい」
「……酷いです……」
「ふっ」
「なんで笑うんですか……」
言いながら自覚してる。顔、赤くなってるんだろうなぁ……
確かに私、変だ。頑張った笑顔よりも、変なにやけ顔を持ち出されて嬉しいなんて。
「……ミハイルさんも、今みたいな顔の方がいいですよ」
それが何か悔しくて言い返してみると、彼は笑顔を消してしまった。
「世辞は結構だ。どうせ見せる相手もない」
ミハイルさんが立ち上がる。いつの間にか彼のお皿は空になっていて、片付けようとするのを止める。
「あ、私片付けますからそのままで」
「…………」
「あの、ミハイルさん」
迷うようにこちらを見る目が。いつも表情のない黒い目が、どこか寂しそうに見えてしまった。でも呼びかけたのを後悔した。何を言おうとしたんだろう、私は。
私が居ますとでも言うつもりだったんだろうか。おこがましいにも程がある。それに……私はいつかここを出ていくと公言してるのに。
だけど呼びかけたのをなかったことにもできなくて。
「も、もし……もしもですよ。私がお屋敷を出て、それでも帰る方法が見つからなかったら……また、ここで雇ってくれませんか?」
本当に、何を言っているんだろう。そんな保証のない、もしもの話を。だけど帰れるという保証もないのだ。だから、そう、最悪の場合を想定しておくことも必要だから。
「もしかしたらその頃には、使用人もいっぱいいるかもしれませんけど! できれば掃除婦の枠を一つ、開けておいてもらえないかなと……」
「……断る」
う、うそ。断られた。
「じゃあ、こんな食事でよければ調理要員でも構わないので。とにかく使用人を一人分……」
「断る」
「……酷い。どうしてですか」
からかわれているのだろうか。寂しそうに見えたのは私の気のせいだったのかな。食い下がるのを諦めて不満を表情に乗せると、彼も似たような顔をした。
「それ以外ならいつでも」
「それ以外?」
「いや。……帰れるさ、きっと」
疑問の声を上げる私に近づくと、彼はそう言って私の頭に手を置いた。
「待っている家族がいるんだろう。帰れないかもなどと考えるな」
「……そう、ですね。ありがとうございます……」
大きな手。今日は……手袋をしていなかった。
笑おうとしたのにできなかった。それでも何とか練習した笑顔を張り付けると、ミハイルさんは私から手を離し、そのままキッチンを出ていった。
まだ少し残っている、自分のお皿に視線を移す。
少し焦げたパンは、少し苦かった。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵夫人フルールは、夫である伯爵と愛人の秘書に長年頭を悩ませていた。
何度夫に苦言を呈しても「彼女は仕事において必要不可欠なパートナーだから」と一切聞く耳を持たない。
困り果てていたそのとき、彼女は突然前世の記憶を取り戻した。
このままだと夫と愛人の真実の愛の犠牲になってしまう。
それだけは御免だ。
結婚五年目にして、彼女はようやく夫を見限り、新たな事業を立ち上げた。
そして事業を成功させたフルールの隣には、いつも同じ男が立っていた。
その男は誰なのかと問い詰める夫に、フルールはニッコリ笑って言った。
「彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです」と。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる