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2章
未開の迷宮
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アンナの宿には食堂がある。ここで下宿する冒険者達のため、食事を提供してくれる。なお、食費は家賃に含まれている。私は先ほど注文を済ませた。あとは待つだけだ。
「二つ目の迷宮を突破だって?!すごいじゃないか。まだこの街に来てからそんなに経ってないっていうのに。あんたなかなかやるんだねえ。」
元締めのアンナはそう言いながら私が注文したオムライスを運んできた。とろとろの玉子は黄色く乱反射する。ケチャップは申し分なしのたっぷり。とても美味しそうだ。アンナは私の前にオムライスを並べると、スプーンの位置を指差しながら教えてくれた。アンナはおぼんを持ちながらため息をつく。
「今となってはお前さんただ一人なんだね。暗夜の樹海に踏み入れたことのある冒険者はごまんといるんだけどね。引退したのを除いたら全員がそこでやられちまってるのさ。」
かなり頑張ってきたつもりだったが、どうやらここまで到達した人間は決して少ないわけではないみたいだ。そういえば冒険者ルメールは到達者の一人であった記憶がある。
「冒険者ルメール?ああ、そんなやつもいたね。けどもうあいつは冒険者とは言えないんじゃないか?今となってはお尋ね者さ。」
都市ヴァロンの市場にやってきた。散歩がてら情報収集といったところだ。迷宮の周辺に栄える都市だと言うからには一般の市民も迷宮の情報を持っていてもおかしくはない。聞いて回る価値はあるのではないだろうか。
「暗夜の樹海は未開の迷宮だから気を付けろよ。つまり地図が無いってことだ、今までの二つとは全然違うんだ。道がどこまで続いていて、今自分がどんなところに飛び込もうとしてるのか分からないんだ。舐めてかかるとほんとに死んじまうぜ。」
魚屋さんのおじさんはそんなことを語り出した。やはり、この街では冒険者ではない人々にも、迷宮については近しい話題であるみたいだ。
「迷宮に行ったこともないのに知った口聞いてすまなかったな。先輩が暗夜の樹海の探索をしてたんだ。先輩が優れた冒険者だったかどうかは分かんないけどさ、銃の名手だった。そこら辺の有象無象に負けるタマじゃねえ。なんだけどな、いつだったかなもう帰ってきてない。ほら魚をやるよ、これで無礼は手打ちにしてくれないか。」
そんな話をしていると、魚屋の隣にある、野菜売りのおじさんも顔を出してきた。
「おお、お前さんあの迷宮に行くのか?そうか……。いやなんでもねえんだ。ただ、こうやって俺達は何人もあの迷宮に送り出してはその帰りを見ることが叶わなかったもんでね。わかってるさ、お前たち冒険者は何を言っても止まりはしない。そんな軽い信念でやってたらここまで生き残ってはいないってね。」
野菜売りのおじさんと魚屋のおじさんは兄弟だそうだ。彼らの持つ情報はどれも所々辻褄が合わないところもあった。すると野菜売りのおじさんには、冒険者支援機関で情報を得るのが確実だと言われた。私は今ここまでの経緯をコロンにこと細やかに説明を済ませた。
「数々の冒険者と共に暮らしてきた都市ヴァロンの市民にとって、暗夜の樹海はまさに死の迷宮そのもの。そしてそれは私にとってもね。あの迷宮の有力な情報を、冒険者支援機関まで持ち帰ってきた冒険者は誰一人としていないの。冒険者には探索で得た情報の報告義務があるわ。それを引き換えに報酬を得るのだから義務を怠る者はまずいない。それにも関わらず誰もいないの。」
私の想像を遥かに越えていた。精鋭の冒険者達が何度も探索を繰り返し未だ踏破されていない迷宮なんだと思っていた。暗夜の樹海はそんな程度ではないんだ。
「あの迷宮は想像を絶する恐ろしさなんでしょうね。一度入れば最後、二度と大地を踏むことは叶わない。それだけの脅威が潜んでいるということなんでしょうね。」
「二つ目の迷宮を突破だって?!すごいじゃないか。まだこの街に来てからそんなに経ってないっていうのに。あんたなかなかやるんだねえ。」
元締めのアンナはそう言いながら私が注文したオムライスを運んできた。とろとろの玉子は黄色く乱反射する。ケチャップは申し分なしのたっぷり。とても美味しそうだ。アンナは私の前にオムライスを並べると、スプーンの位置を指差しながら教えてくれた。アンナはおぼんを持ちながらため息をつく。
「今となってはお前さんただ一人なんだね。暗夜の樹海に踏み入れたことのある冒険者はごまんといるんだけどね。引退したのを除いたら全員がそこでやられちまってるのさ。」
かなり頑張ってきたつもりだったが、どうやらここまで到達した人間は決して少ないわけではないみたいだ。そういえば冒険者ルメールは到達者の一人であった記憶がある。
「冒険者ルメール?ああ、そんなやつもいたね。けどもうあいつは冒険者とは言えないんじゃないか?今となってはお尋ね者さ。」
都市ヴァロンの市場にやってきた。散歩がてら情報収集といったところだ。迷宮の周辺に栄える都市だと言うからには一般の市民も迷宮の情報を持っていてもおかしくはない。聞いて回る価値はあるのではないだろうか。
「暗夜の樹海は未開の迷宮だから気を付けろよ。つまり地図が無いってことだ、今までの二つとは全然違うんだ。道がどこまで続いていて、今自分がどんなところに飛び込もうとしてるのか分からないんだ。舐めてかかるとほんとに死んじまうぜ。」
魚屋さんのおじさんはそんなことを語り出した。やはり、この街では冒険者ではない人々にも、迷宮については近しい話題であるみたいだ。
「迷宮に行ったこともないのに知った口聞いてすまなかったな。先輩が暗夜の樹海の探索をしてたんだ。先輩が優れた冒険者だったかどうかは分かんないけどさ、銃の名手だった。そこら辺の有象無象に負けるタマじゃねえ。なんだけどな、いつだったかなもう帰ってきてない。ほら魚をやるよ、これで無礼は手打ちにしてくれないか。」
そんな話をしていると、魚屋の隣にある、野菜売りのおじさんも顔を出してきた。
「おお、お前さんあの迷宮に行くのか?そうか……。いやなんでもねえんだ。ただ、こうやって俺達は何人もあの迷宮に送り出してはその帰りを見ることが叶わなかったもんでね。わかってるさ、お前たち冒険者は何を言っても止まりはしない。そんな軽い信念でやってたらここまで生き残ってはいないってね。」
野菜売りのおじさんと魚屋のおじさんは兄弟だそうだ。彼らの持つ情報はどれも所々辻褄が合わないところもあった。すると野菜売りのおじさんには、冒険者支援機関で情報を得るのが確実だと言われた。私は今ここまでの経緯をコロンにこと細やかに説明を済ませた。
「数々の冒険者と共に暮らしてきた都市ヴァロンの市民にとって、暗夜の樹海はまさに死の迷宮そのもの。そしてそれは私にとってもね。あの迷宮の有力な情報を、冒険者支援機関まで持ち帰ってきた冒険者は誰一人としていないの。冒険者には探索で得た情報の報告義務があるわ。それを引き換えに報酬を得るのだから義務を怠る者はまずいない。それにも関わらず誰もいないの。」
私の想像を遥かに越えていた。精鋭の冒険者達が何度も探索を繰り返し未だ踏破されていない迷宮なんだと思っていた。暗夜の樹海はそんな程度ではないんだ。
「あの迷宮は想像を絶する恐ろしさなんでしょうね。一度入れば最後、二度と大地を踏むことは叶わない。それだけの脅威が潜んでいるということなんでしょうね。」
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