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2章
暗夜の樹海
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ここが、暗夜の樹海だ。迷宮内では無尽蔵とも思える程木々が連なっており、密集し壁と成している。木には青々とした葉が生い茂る。その一枚一枚には影が彩られている。そんなことよりここはどこなのだろうか。この迷宮には空がある、太陽がある、月がある。天井は存在しない。木々の葉から見え隠れする太陽は紫に映える。この迷宮はどことなく暗い印象を強く受ける場所だ。構造はどうだろうか、迷宮内で歩みを続けていると多くの曲がり角に遭遇した。構造は難解なものになっていると思われる。
しかしこの迷宮は、さほど命の危険を感じない。探索を始めてからしばらく経つが迷宮の脅威と出会わない。古の石室や夢幻の湖畔のように仕掛けがあるわけでもないようだ。なぜ多くの冒険者がここで息絶えることになったのだろうか。もしかしたら、他の冒険者達はこの油断によって呑み込まれてしまったのかもしれない。こういう時こそ慎重に行くべきだろう。そんな角を曲がった矢先であった。暗夜の樹海の脅威と邂逅した。まさに魔物だ。痩せ細った身体に低い身長。頭部は鰐のような形状をしている。手に握るのは動物の骨だろうか?大腿骨のような大きさの骨を握っている。何故だろう、どこか覇気を感じない。強さを感じない。
「ギャャヤアアアアアオオオオオオオ」
魔物は突然大きな奇声を上げた。その声は迷宮中に轟き渡る。圧力のある声に森が揺れる、ざわめく。そしてざわめきは次第に足音へと変わっていった。私は全てを察した、この場所から直ちに逃げなくてはならない。踵を返した。
「どうやらこの迷宮の脅威は、侵入者に対して全員で襲いかかっていく性質を持つみたいだ。なんと恐ろしいんだ。」
私は一目散に迷宮の入り口に向かって走る。我々冒険者は銀の弾丸を二発しか持っていない。そしてそれは今回の状況と極めて相性が悪い。二発の弾丸では、どのように上手く使ったとしても二体以上の脅威を排除することは不可能だ。今までは一対一の状況しか起こり得なかったため考えもしなかった。冒険者には対複数へのなす術はない。私の剣もきっと役にはたたないであろう。四面から湧き出てきた足音はそれぞれ進路を変えて私のいる場所に向かってきている。追いかけられているのだ、追い立てて捕まえるつもりだ。
息は絶え絶えながらも迷宮の入り口に無事戻ってきた。追っ手はついてきていない。撒くことに成功したみたいだ。しかしそれが不思議でならない。あの声は確かに迷宮中に響いていたはずだ。迷宮中の魔物に追い立てられて、はてその追跡から逃れることなんかそう簡単にできるのだろうか。走って逃げている時にもう一つ気づいたことがある。足跡が少ないのだ。最初こそ、急に聞こえてきた複数の足音に驚き、その規模を把握するには至らなかった。だが、よく聞いてみると追っ手の数は多くて、五。迷宮中の魔物が一斉に寄ってきたとは考えにくい数である。これなら撒くことができたのも一つ納得ではある。であるならば、この迷宮の脅威は数か少なくさほど危険なものではない。と言いたい気持ちはあるが、何かがひっかかる。本当に実態はそうなのであろうか。考えを焦ってはいけない。それは、足を滑らせて死の海に落ちることと同義であるからだ。
しかしこの迷宮は、さほど命の危険を感じない。探索を始めてからしばらく経つが迷宮の脅威と出会わない。古の石室や夢幻の湖畔のように仕掛けがあるわけでもないようだ。なぜ多くの冒険者がここで息絶えることになったのだろうか。もしかしたら、他の冒険者達はこの油断によって呑み込まれてしまったのかもしれない。こういう時こそ慎重に行くべきだろう。そんな角を曲がった矢先であった。暗夜の樹海の脅威と邂逅した。まさに魔物だ。痩せ細った身体に低い身長。頭部は鰐のような形状をしている。手に握るのは動物の骨だろうか?大腿骨のような大きさの骨を握っている。何故だろう、どこか覇気を感じない。強さを感じない。
「ギャャヤアアアアアオオオオオオオ」
魔物は突然大きな奇声を上げた。その声は迷宮中に轟き渡る。圧力のある声に森が揺れる、ざわめく。そしてざわめきは次第に足音へと変わっていった。私は全てを察した、この場所から直ちに逃げなくてはならない。踵を返した。
「どうやらこの迷宮の脅威は、侵入者に対して全員で襲いかかっていく性質を持つみたいだ。なんと恐ろしいんだ。」
私は一目散に迷宮の入り口に向かって走る。我々冒険者は銀の弾丸を二発しか持っていない。そしてそれは今回の状況と極めて相性が悪い。二発の弾丸では、どのように上手く使ったとしても二体以上の脅威を排除することは不可能だ。今までは一対一の状況しか起こり得なかったため考えもしなかった。冒険者には対複数へのなす術はない。私の剣もきっと役にはたたないであろう。四面から湧き出てきた足音はそれぞれ進路を変えて私のいる場所に向かってきている。追いかけられているのだ、追い立てて捕まえるつもりだ。
息は絶え絶えながらも迷宮の入り口に無事戻ってきた。追っ手はついてきていない。撒くことに成功したみたいだ。しかしそれが不思議でならない。あの声は確かに迷宮中に響いていたはずだ。迷宮中の魔物に追い立てられて、はてその追跡から逃れることなんかそう簡単にできるのだろうか。走って逃げている時にもう一つ気づいたことがある。足跡が少ないのだ。最初こそ、急に聞こえてきた複数の足音に驚き、その規模を把握するには至らなかった。だが、よく聞いてみると追っ手の数は多くて、五。迷宮中の魔物が一斉に寄ってきたとは考えにくい数である。これなら撒くことができたのも一つ納得ではある。であるならば、この迷宮の脅威は数か少なくさほど危険なものではない。と言いたい気持ちはあるが、何かがひっかかる。本当に実態はそうなのであろうか。考えを焦ってはいけない。それは、足を滑らせて死の海に落ちることと同義であるからだ。
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