冒険者よ永遠に

星咲洋政

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2章

焼け野原

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 散策を続けているとあるものを見つけた。焼け焦げた草だ。このわずかな一帯だけ草が焼け焦げている。なぜここだけ見事に丸焦げになっているのだろうか。私はふと顔を見上げた。するとどうだろうか、自分が今居る場所から少し離れたところ、そこにも同じ焦げが見られる。どうやらこの迷宮にはところどころ、焼け焦げた箇所が存在するようだ。永遠が流れるこの迷宮で炎なんてどうやって生まれるのだろうか。これについてはもう少し追究の余地があるかもしれない。共通点などはないか見て回ってみよう。

 私はあることに気付いた。これらの箇所には全て大きな木材がその燃料として使われていたことだ。この字面だけ見れば焚火の跡であると結論付けたくなる。しかしこれらの木材は極めて大きいのだ。焚火には大きな木材は用いない。斧で小さく切ってからそれをくべていくのが本来だ。であるならば、これは焚火の跡では無いことになる。となるとすればこれは誰が燃やしたのだろうか。いまこの迷宮を探索しているのは私一人のはずだ。なぜなら私以外に夢幻の湖畔の踏破者が生存していないから。ならばあの魔物たちであろうか。あの魔物たちは集団を成して生活をしているようであった、おそらくは知性を持ち行動しているはずだ。コロニーを形成して、巣のようなものもあるのだろうか。

「あ……、この大きな木材…もしかしてこれは…彼らの家なのか……?」

だとしたらこれは彼らが燃やしたとは考えにくい。どういうことだろうか。いや、答えは一つしかない。第三勢力がこの迷宮にいるに違いない。この迷宮には魔物以外にも脅威がいるのだろうか。縄張り争いをするような存在が。はたまたそれか、私が知らないところで、冒険者支援機関の知らないところで何かが動いているのだろうか。

 冒険者とは必ずしも同志ではない。冒険者とは、迷宮の踏破の先にある真実を我先に掴みとろうとする者。故に同業者はライバルであり、敵対をする可能性は十分にある。そして迷宮内の殺人はその発覚が極めて困難である。まず死体を見つけることが難しい。迷宮で横たわった死体は、迷宮の脅威が養分にするべくボロボロにしていくから。また、死体が見つかっても、その死体は迷宮の脅威によって作られたのか人間によって作られたものなのかの判断が難しい。そして仮に殺人であると分かったとしても、現場の検証や現場の維持はほぼ不可能である。迷宮は歩くだけでも命をかける場所であるからである。これら故に迷宮での殺人は完全犯罪。そしてそれ故に、迷宮内で人間に遭遇することは脅威と遭遇することよりも場合によっては恐ろしいことなのである。

 私はしばらくこの焼け野原についての探索を続けた。そしてある一つの事実に気づいた。第三勢力とは迷宮の脅威ではないと断定できることに。私は焼け野原を辿って調査を行った。そしてその道中で魔物と遭遇することは一度もなかった。これはすなわち、第三勢力によって淘汰されているもしくは、追い払われているということだろう。このように狭い迷宮内で、一方的に打ちのめされる関係性が成立しているとは思えない。何故ならば、対立とは拮抗している者同士の特権だからだ。ということは答えは一つ。

「いるのだろうな、人間が。私以外に。」
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