冒険者よ永遠に

星咲洋政

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2章

迷宮とは

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「俺に冒険者の才能はなかった。これを足掛かりにしてまた別のどこかで上手いことやってやるぜ!」

 彼の左手には宝石が、右手には銃が握られている。

 魔道杖は青く光る。魔道杖には飛行魔道のメモリーが差し込まれている。魔道士はふわりと浮き上がり何かを目掛けて飛び駆けた。逃走を試みる冒険者らしき者の姿がかすかに遠くに見える。魔道士は飛行魔道で飛びながらも、逃走者めがけて攻撃を試みている。炎の壁が立ちはだかり逃走のルートがたちまち制限されていく。そして逃げ惑っていた冒険者は袋小路に追い詰められていった。周りには高層の住居が聳え立つ。とても登って逃げられる状況ではない。

 冒険者支援機関が出来てからどれだけの時が流れたであろうか。支援機関が設立されたことにより、冒険者が職業として成立するようになった。迷宮の情報と引き換えに報酬を渡すシステムが誕生したからだ。それにより冒険者の数は増え、質も高まり、そして都市ヴァロンは更なる発展を見せた。それと同時に不逞な輩も増えた。

 我々冒険者支援機関の主な仕事は二つ。まずは、冒険者への報酬を渡すこと。そして二つ目は、平穏を乱す冒険者を始末すること。冒険者の数は確かに増え質も高まった。しかし、今目の前にいるコイツのようにくだらない冒険者もいる。

「冒険者支援機関副責任者、アジン・フレッチャーだ。強盗の罪により今この場で処刑する。」

「は……?冒険者支援機関だと?!俺たち冒険者を支える立場の奴が何言ってんだよ。嘘だろ……処刑って…俺を殺すってことか…?」

このような奴らの中に傑物はいない。銀の弾丸を使うまでもない。冒険者支援機関の役人の多くは魔道局元局長コロン・ヘンダーソン直属の軍人であった者で構成されている。罪人を始末することなぞ些細なことだ。

 最近現れた新人の冒険者、彼はひどく強い。我々が畏怖するほどに。勇気が備わる戦士は窮地に思わぬ力を見せる。まさに迷宮を暴かんとするために生まれてきた存在だ。彼はもう、第三迷宮に辿り着いた。おそらくは彼は、迷宮の最奥にある大広間、暗夜の樹海の秘密に触れることになるであろう。もしくはもう今ごろはたどり着いている頃であろうか。第一迷宮の古の石室、第二迷宮の夢幻の湖畔、第三迷宮の暗夜の樹海、第四迷宮の永久の霊峰、第五迷宮の英霊遺跡。ヴァロン迷宮群の全てを踏破する者は未だ現れず。この私は全てを知りながらも彼女を止めることができなかった。暗夜の樹海が踏破される時、私も責任を取り殉じようではないか。

 ここは暗夜の樹海の最奥部。そこは木々に囲まれた大広間である。アジン・フレッチャーの予想通り、彼はそこに辿り着くことに成功した。暗夜の樹海で度々発見された焼き払われた住居。彼はそれを辿っていったのだ。その末にこの場所を見つけてしまった、彼女が中央で立ちはだかるこの部屋を。
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