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3章
罠と記憶
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地図に記していることは読める。いつの出来事だったのか、何でこれを書き記したのか全く覚えていないが、書いてあることは読める。
「行動が監視されている」
「眷属が目の前に現れた」
「足音が消えた」
読める、確かに読める。しかし、覚えていないのだ。この迷宮では記憶が消えるのか?どこのタイミングで消えるのだろう。当然ながら覚えてはいない。ならば私はどこからの記憶なら覚えているのだろうか。迷宮に入ったことは覚えているだろうか、覚えている。迷宮から出たことは覚えているだろうか、否、覚えていない。しかし、迷宮の出口に立っていたことは覚えている。ということはこういうことだろうか、迷宮から脱出すると迷宮内部で経験したことを全て忘却する、と。本当に不思議な感覚だ。探索の記憶は全く無いが、身体の疲労は間違いなく探索のそれだ。
私は探索を続けることにした、あるルールを定めた上で。迷宮で経験したことはすぐに記録すること。なるべく細やかに記録すること。発生した場所を記録すること。これを確実にこなすことによって、二の轍を踏まないようになればと信じて。一度迷宮を脱出してしまえば内部構造や風景すらも忘れてしまう。可能な限り詳しい情報を書き込んでおきたい。
アンナの宿で落ち着いて飲むコーヒー程美味しいものはない。生きているのを実感できる味だ。探索の結果、記録されていることを総合して分かったことがある。「行動が監視されている」は正しいが、それによって妨害が展開されることは間違いであった。予め設置されている罠にかかっただけにすぎなかったのだ。亡霊や眷属の発生位置は何度探索を重ねても同じ場所で記録されていた。そしてすなわちそれは狙って避けることができるということだ。迷宮内部についての記憶は無いが、避ける場所が明確に分かる現状はかなり大きい。
「この道は自分の影に気を付けなければならない。隙を見せれば亡霊が襲いかかってくる。」
「この道では眷属の襲撃を避けることはできない。しかし、始めからそれが分かっていればベルトの弱点を斬ることは簡単だ!」
謎が解ければ早いもの。ついに辿り着いてしまった。永久の霊峰の頂へ。霧の魔神ロシュフォールが待つこの場所へ。魔神を倒せばどうなってしまうのだろうか。私はついに踏破者となるのか。そうすれば迷宮はどうなってしまうのだろうか。消えてなくなるのだろうか、それともこのままなのだろうか。そしてそもそも、私は魔神に打ち勝つことができるのだろうか。疑問は尽きない。しかし、すぐにそれは答えが出るであろう。この戦いの勝者がその答えを自分の好きに塗り潰すのだ。
「行動が監視されている」
「眷属が目の前に現れた」
「足音が消えた」
読める、確かに読める。しかし、覚えていないのだ。この迷宮では記憶が消えるのか?どこのタイミングで消えるのだろう。当然ながら覚えてはいない。ならば私はどこからの記憶なら覚えているのだろうか。迷宮に入ったことは覚えているだろうか、覚えている。迷宮から出たことは覚えているだろうか、否、覚えていない。しかし、迷宮の出口に立っていたことは覚えている。ということはこういうことだろうか、迷宮から脱出すると迷宮内部で経験したことを全て忘却する、と。本当に不思議な感覚だ。探索の記憶は全く無いが、身体の疲労は間違いなく探索のそれだ。
私は探索を続けることにした、あるルールを定めた上で。迷宮で経験したことはすぐに記録すること。なるべく細やかに記録すること。発生した場所を記録すること。これを確実にこなすことによって、二の轍を踏まないようになればと信じて。一度迷宮を脱出してしまえば内部構造や風景すらも忘れてしまう。可能な限り詳しい情報を書き込んでおきたい。
アンナの宿で落ち着いて飲むコーヒー程美味しいものはない。生きているのを実感できる味だ。探索の結果、記録されていることを総合して分かったことがある。「行動が監視されている」は正しいが、それによって妨害が展開されることは間違いであった。予め設置されている罠にかかっただけにすぎなかったのだ。亡霊や眷属の発生位置は何度探索を重ねても同じ場所で記録されていた。そしてすなわちそれは狙って避けることができるということだ。迷宮内部についての記憶は無いが、避ける場所が明確に分かる現状はかなり大きい。
「この道は自分の影に気を付けなければならない。隙を見せれば亡霊が襲いかかってくる。」
「この道では眷属の襲撃を避けることはできない。しかし、始めからそれが分かっていればベルトの弱点を斬ることは簡単だ!」
謎が解ければ早いもの。ついに辿り着いてしまった。永久の霊峰の頂へ。霧の魔神ロシュフォールが待つこの場所へ。魔神を倒せばどうなってしまうのだろうか。私はついに踏破者となるのか。そうすれば迷宮はどうなってしまうのだろうか。消えてなくなるのだろうか、それともこのままなのだろうか。そしてそもそも、私は魔神に打ち勝つことができるのだろうか。疑問は尽きない。しかし、すぐにそれは答えが出るであろう。この戦いの勝者がその答えを自分の好きに塗り潰すのだ。
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